詩の本の思潮社

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田中眞由美『待ち伏せる明日』


しずかに ひそかに


神様のはなしなんか信じて
みんな暮せなくなった

それなのに
上の方に置けばそれだけでいいのだと
神様は言いだした
しっかり見張れば大丈夫だと
村人も言い始めた
(「下と上のはなし」)

「居心地の悪い日常の《ゆりかご》のなかで、私たちは昨日も今日もまどろんでいるのかもしれない。そのひとりでもある著者は、一体何ものに「待ち伏せ」されているのだろうか? いや、同時にそこへどのように踏み出して行こうか、と果敢にいま身がまえているのだ」(八木忠栄)。「みんな」の幸福のために葬ったもの――迫力の22篇。カバー作品=著者

本体2500円+税
A5判変型上製・104頁
ISBN978-4-7837-3639-4
2018年10月刊

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小池昌代『赤牛と質量』


詩を脱ぎ捨てんと


わずかにわかりあえた瞬間にだけ
指先に触れた ごつい荒縄
潮をかぶった
綱手
かなしも
(「ジュリオ・ホセ・サネトモ」)

「初夏の海を/船がゆく/漂わず/浮かぶこともせず/詩を脱ぎ捨てんと/急ぐ船」(「黄金週間」)。一人になって、裸になって家を出る。詩の焦土を踏みしめて書き継いだ、十数年にわたる試行から精選20篇を収める、待望の新詩集。装幀=中島浩

本体2200円+税
A5判変型上製・136頁
ISBN978-4-7837-3641-7
2018年10月刊

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片岡直子『晩熟』


女の子の居る暮らし


今を生き 独りの朝に 柿食へば 人は
熟女に 生まれない
 (「晩熟」)

――あなたの抽斗は何歳の? 詩と出会った少女時代、幼い息子を抱いた29歳、成人式を迎えた娘。少女と大人が詩の官能に浸されて、桜の頬にふはっとささやく、身体の奥から溢れるじゅもん。『曖昧母音』から13年、20余年の時を刻み、みずみずしい息吹をまとった新詩集。装画=鹿庭えな

本体2200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3638-7
2018年10月刊

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桑田窓『メランコリック』


気鋭の新機軸


いつだったか
きれいな鉱石に頼らなかった
私に戻れたら
何も飾らず
あの人に会いに行けたら 
(「メランコリック」)

日常のなにげない風景のなかで、あるいは大自然のただなかで、そして記憶の断片やはるかな幻想の世界に身を置きながら、詩人の抒情性を帯びた繊細な陥穽は数多の方角に向けて広がり、そして思わぬ地点で収束する。気鋭の詩人が新たなる展開に向けて2年ぶりに放つ、35の感受性の放物線。

本体2400円+税
A5判上製・122頁
ISBN978-4-7837-3643-1
2018年10月刊

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水下暢也『忘失について』


第69回H氏賞受賞!


開け放たれた戸の先で
夕映えに染まった浮き雲と
正午を迎える青空とを
半々に見ている
(「怪の鳴る」)

「硬質な詩語たちの佇まいはあまりにも儚い。瞬きの美しさ。しかし奥深く響いては余韻を残し去る音楽のようだ」(広瀬大志)、「ささやかな日常を印画紙としているのではない。(…)夢が夢を見ているかのようなヴィジョンがここにはあるのだ」(岸田将幸)。記憶の底を照らし出す、29篇の明滅。第56回現代詩手帖賞受賞詩人の第1詩集。カバー写真=著者。重版出来!

本体2200円+税
A5判変型並製・106頁
ISBN978-4-7837-3640-0
2018年10月刊 2019年4月第2刷

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浅見恵子『星座の骨』


すべて私の肉


ひとり転がった地面の
花という花から毛が生える
土という土から春が溢れている

わたしの許しなく
(「狂々」)

「朔太郎はその猥雑さ、猥褻さにまみれてみせたわけだが、この作者にはできない。なぜなら「わたしの許しなく」という感情のほうが圧倒的に強いからである。(…)作者は猥雑かつ猥褻な世界に身をゆだねるのではない。逆に蹴りつけて地団駄を踏みたいのだ」(三浦雅士)。生起する存在の肉を言葉で刻み、削ぎ、あらわになった詩の骨から世界は始まる。そこに胚胎する透明な祈り――注目の新鋭の第2詩集。装画=著者

本体2200円+税
四六判並製・78頁
ISBN978-4-7837-3634-9
2018年9月刊

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石川厚志『山の向こうに家はある』


第15回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門優秀賞受賞!


窓辺からそそぐ、春の陽射しに、ただ影となっている君を前にし、さて君は男の子なのか、女の子なのかと、ふと考えてみる。私は君の、とうさんなのだろうか、かあさんなのだろうか。
(「空中散歩」)

「見下ろすと 屋上の遊具の救急車に ちっちゃな僕が 乗っている。 エレベーターのかあさんが もう遠い」(「百貨店」)。時の幻燈は不条理なカーナバル、あるいはあの日のモノクローム。銀色の光に溶け込んで、懐かしい影が交差する、ファミリー・シネマ29篇。気鋭による第3詩集。カバー写真=著者

本体2200円+税
四六判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3630-1
2018年9月刊

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永方佑樹『不在都市』


第30回歴程新鋭賞受賞!


かわるがわるの記憶が
あおざめ
時割れてゆく
(「不在都市」)

「永方佑樹はこの『不在都市』で、交響した、交響している、交響させる」(古川日出男)、「「不在都市」とは、そんな快活な場としての東京の(再)発明だ」(管啓次郎)。土地の記憶を呼び起こす重層化する視線。マルチリンガル詩を含む、現在への果敢な試み。装画・挿画=青野春秋、装幀・組版=中島浩

本体2200円+税
A5判変型並製・130頁
ISBN978-4-7837-3631-8
2018年10月刊

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田中庸介『モン・サン・ミシェルに行きたいな』


それを見に行く


さあ、蓋をあけて
暗渠の裏側に入り込もう
ことばの裏側に宙づりになって
とろとろ流れる水を下っていこう
(「リバー、詩、ブル」)

「おれはひとつの、/世界にただひとつのように、/叫ぶ、芋畑だ。」(「叫ぶ芋畑」)。軽く軽く時は流れていく、グランドデザインは変わっていく。このカーブを曲がりながら、詩人は精いっぱいの声を発するのだ。渾身の、10年ぶり第3詩集! 装画=出久根育

本体2400円+税
A5判上製・122頁
ISBN978-4-7837-3636-3
2018年10月刊

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シャルル・ボードレール/山田兼士訳・解説『小散文詩 パリの憂愁』


現代詩を切り拓いた名著、待望の新訳


私は、泥まみれの犬を歌う、貧しい犬、宿なしの犬、うろつく犬、道化の犬、つまり、貧民やジプシーや大道芸人の本能のように、かくも善良な母であり知能の真の守り神でもある、必要、というものによって、みごとに研ぎすまされた本能をもつ、そんな犬を歌うのだ!
(「50 善良な犬たち」)


都市の喧騒と群衆をモチーフに、現代的で柔軟なミニマル・アートとして、散文詩という領域を拓いたボードレール。詩のみならず数多の文学作品に多大な影響を与えたこの「現代文学の決定的発端」が、最新の研究成果を踏まえた平明な訳と解説により、詩的現在のその先に蘇る。装幀=山田聖士

本体2200円+税
四六判並製・240頁
ISBN978-4-7837-2799-8
2018年9月刊

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齋藤貢『夕焼け売り』


第37回現代詩人賞受賞!


こんなにも背後の夕焼けは美しいのに
ここにも、そこにも
たおやかな夕日が地に照り映えているのに。
呪われた火で
今も、ふるさとは燃えている。
(「火について」)


「齋藤貢さんのことばには、読む者の感情をことさらにかき立てるようなところはまったくない。彼は不思議な虚心をもって人や物や出来事をあるがままに迎え入れる。その凝視の底からある沈黙のしみとおったことばが身を起すのである」(粟津則雄)。震災後の福島の悲惨を、詩人はしずかに見つめてきた。人としての自然を奪われた理不尽な現実に抗う、魂の声24篇。装画=宮崎進。重版出来!

本体2600円+税
A5判上製・120頁
ISBN978-4-7837-3633-2
2018年10月刊 2019年4月第2刷

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松村信人『似たような話』


風変わりな人たちと


真冬の房総の海に飛び込んだのだという
タカハシは本当に命を絶ったのだろうか
街中をひとり歩いていると
笑うタカハシたちであふれていた
(「笑うタカハシ」)

「作中人物である他者と語り手の私のあいだには、いつも交換可能な魔の手があって、そこに独特な内的緊張関係が妊まれているということであろう」(倉橋健一)、「虚構の手法を徹底させて、失われたものに対する哀惜のようなものも浮き彫りにする。笑いも誘いながらサスペンス風で妙なペーソスもあり、今の現代詩には珍しいユニークな詩集と思う」(たかとう匡子)。不敵な散文精神をあらわす36篇。装幀=髙林昭太、写真=Alex Linch

本体2600円+税
A5判変型上製・128頁
ISBN978-4-7837-3622-6
2018年10月刊

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岡井隆、関口涼子『注解するもの、翻訳するもの』


名づけえぬ詩のかたち


岡井さんからの最初の投げかけにnotationをしていたとき、わたしはスペインの旅行を経て、ニューカレドニアのヌメアで最初のnotationを終えたところだった。そこで出会うことになった、日系二世の女性たちから聞いた話が心から離れず、それを書きつけることなしには、わたしの耳に入ってきた彼女たちの声は外に出ることがなく、声の流れとして完結しないような気がしていた。
(本文より)

「詩とは何か?――わたしといふ歌人は、この問いかけから無限に遠いところで作品を書き続けて来た。(…)持続する書きもの。途切れることなく続くといふこと」(岡井隆)、「わたしにとって、詩とは、そこで毎回新しく言語を、一つの生命体として、または、一つの領土として作り上げていく場所でした」(関口涼子)。「現代詩手帖」に連載された「注解者」と「翻訳者」の対話。詩の在り処を問う、新たな共同制作の試み。装幀=中島浩

本体3200円+税
B5判並製・160頁
ISBN978-4-7837-3621-9
2018年9月刊

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野木京子『クワカ ケルル』


ぎりぎりの音


ぽこぽこは遠くへ飛んでいった わたしのぽこぽこ
ぽこぽこが集まっている空がどこかにあって どこにもない色をしている
(「大きな木とどこにもない空」)

私が死んだあとに、体内で生き続ける微生物たちの笑い声。目に見えぬ、言葉を持たぬ者たちの、かそけき声に耳を傾ける。『明るい日』以後、この時代を生きる人の心象に透明な声を刻み続ける詩人の新境地。装幀=稲川方人

本体2200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3626-4
2018年9月刊

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松川穂波『水平線はここにある』


待望の第3詩集


生者のための数に一を加え
死者のための数に一を捧げ
わたしの天秤は静かに狂う

思い出は数えられないから
十本の指のまま
生きていく
(「挽歌」)

「海 それは まだ海になる前の あの自在な青い水のことだ」(「出航」)。待つこと、拒むこと。生の根底をひるまずに見つめ、幾たびも出ていく。置き去りにされたものを光らせる、出航の痕跡、20篇。装幀=倉本修

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3623-3
2018年9月刊

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