詩の本の思潮社

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新刊情報

沓掛良彦『恍惚惨人詩話 カスタリアの泉に汲んで――古典詩の記憶から』

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古典詩回顧


どういうものか自分の生まれた時代との折り合いが悪く、生まれてきたことを呪い、『荘子』に言う「幽憂之病」に悩み、常に自分は世に容れられぬ人間だとの疎外感を抱き続けてきたわたしのような人間にとって、古代・中世の世界こそが唯一やすらぎを得られる場であった。
(「古典詩回顧に寄せるぷろろごす」)


「沓掛氏は自ら己自身を「現代に生きる古代人」と公言してゐるが、やはり世の主流を横様に切り裂いて走る鋭い光の刃である。沓掛氏はギリシア・ローマの古代世界のみならず、中世文学からルネサンスに続くヨーロッパ文学、王朝文学における女流歌人の和泉式部や式子内親王、西行、一休、良寛、漢詩など東西の古典を幅広く論じてゐる。その批評精神の目の付け所がどこにあるか知ることは、日本文学の現況を匡し、日本の文化伝統を発展させる機縁となりうる」(伊藤勳)。
「Ⅰ 心惹かれた女性詩人たち」「Ⅱ ヨーロッパ古典詩の記憶から」「Ⅲ 東洋の古典詩逍遥回顧・落穂拾い」の3章からなる、古典詩世界への類をみない誘いの書。デザイン=原耕一・せい。発行=大和プレス

4400円(税込)
A5判変型上製函入・320頁
ISBN978-4-7837-3835-0
2025年4月刊

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遠野魔ほろ『がらんどうの夢』

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透明な手で


部屋の奥に形をなくしたいくつもの影
薄く濃くかさなりあったり はなれたり
輪郭を忘れたことの安堵 がらんどうの静けさ
(「家のスケッチ」)


「心ひとり/さりげなさ の 手のひら で/ふいに 目覚めては つくろっている/夢の きざはし/冷めない 美味しさを 聴いている」(川上明日夫)。まどろむ家、遠い日、揺らぐ影……。視線の先に自己を問う、枠外の詩景22篇。第2詩集。

〇同じ著者によって
『夜更けの椅子』

2200円(税込)
A5判変型並製・80頁
ISBN978-4-7837-4607-2
2025年4月刊

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時里二郎『伎須美野』

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息の器に


おとも
かたちも
なも
わすれられた
宙の

(「伎須美野 Ⅳ」)


「母はここでふたりのおまえを産んだ。ふたりだと、祖父ははっきり言った。《累代の祖父》の作る人形はそのように作られている」(「月森」)。私という波打ち際にたどり着いた漂流物。言葉を運ぶ容器としての詩へ。『名井島』からの新展開を明かす、7年ぶり待望の新詩集。装幀=水戸部功

〇同じ著者によって
現代詩文庫『時里二郎詩集』
『名井島』
〇関連書籍
「現代詩手帖」2019年7月号「特集Ⅰ・時里二郎――『名井島』を訪ねて」

2640円(税込)
A5判変型上製・112頁
ISBN978-4-7837-4595-2
2025年3月刊

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紫圭子『未来のタチアオイへ』

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遥か、飛翔する翼


今朝
窓をあけると
世界の渦のなかでタチアオイの花がゆれている
(「未来のタチアオイへ」)


渥美半島から奄美大島、百済の古都、そしてネアンデルタール人の遺伝子の旅へ。天地を流れ巡るいのちの渦と響きあい、迸る聲の詩(ウタ)17篇。装幀=中島浩

2640円(税込)
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-4606-5
2025年3月刊

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陳育虹/佐藤普美子訳『薄明光線その他』

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チカダ賞受賞詩人、待望の完訳


ごらん
庭をまるごと
野生に放つ
(「幾何学」)


「これらに共通するのは失われしもの、消え逝くもの、不可視のもの、すなわち不在のものを言葉によって喚び起こそうとする詩人の姿勢である」(訳者解説)
いま、名もなきものとなり、ひらかれた野生の庭へ――。歴史や災禍を捉えた機会詩、母の戦争の記憶が交差する長篇詩など、3つの章が織りなす深淵な世界。台湾を代表する、チカダ賞受賞詩人の到達点。

〇陳育虹氏、来日イベント開催決定!〈終了しました〉
3月22日(土)日台現代詩ミニセミナー「"Crossing"――言語、他者、未知へ」
3月23日(日)トーク&リーディング「わたしたちの詩の庭」

2750円(税込)
四六判並製・272頁
ISBN978-4-7837-2798-9
2025年3月刊

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中地中『四国遍路 あわのみち』

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魂の道程を批准する


大いなる魂から発する言語は
すべてのものが意思を通じ合う言語であり
人間の感性を遙かにこえた次元で流通する
珠玉の言葉は大いなる作業を克服したものへの恵与と
聖なる智慧はいう
(「大いなる魂」)


永劫の時間のなかで、偶然生を受けそして死を迎える人間。しかしその偶然には、実はなんらかの必然という真理が存在するのではないか――。生と死をモチーフに詩を紡いできた詩人が、四国遍路をめぐり、人間の生息、宗教をはじめとしたさまざまな歴史、事象、そして人々の思いなどを複合させ、詩に昇華させる。著者渾身の最新詩集。

2750円(税込)
A5判上製・198頁
ISBN978-4-7837-4605-8
2024年11月刊

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野木ともみ『その日も曇天で』

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会心の第3詩集


あやふやな終わりのとなりにすわっていよう
立ち上がったらもう何も感じないのだから
(「あやふやな終わり」)


「既成概念を相対化する透徹した視線は、自由を生み出す。言語と世界に深い洞察力を持つ詩人の確かな歩みが伝わってくる会心の詩集である」――佐川亜紀
「あやふや」のとなりで感じ続けること。光の渦の中ではなく、曇りの日にこそ見える自分と世界へ。詩25篇。

2530円(税込)
A5判変型並製・112頁
ISBN978-4-7837-4597-6
2025年1月刊

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山中六『一滴』

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二行詩の光り


一滴、落ちて波紋をよび
一行、天から舞い降りる
(「一滴」)


「山中六の詩は、そのユニークな感性と豊富なイメージ力に良質の特徴があると言えよう。それらの作品の中には、ユーモアもあり、時にはアフォリズムを連想させたりする」――高良勉
奄美群島体験からの始原の感性が波打つ。山之口貘賞受賞詩人による、待望の第8詩集。題字=著者

2200円(税込)
四六判変型上製・64頁
ISBN978-4-7837-4599-0
2024年10月刊

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花氷『オ・ラパン・アジルの夜』

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第1詩集

昨日という日から続いてやってきた、手紙のようなもの、なにもかも、全てが風により繋がっていることを想えば、なにも、想うほどではない、校庭の隅、言葉が土に染み込んでいくように、花が花の色を取り戻す。(「今日の風」)

詩の中に、大石貴也の、あいつの心の中に、ずっとずっと、いつかこうして爆発してやるんだ、という思いを込めた一行を見つけて、これは「本当のことば」だと思ったーー野田秀樹

本書は第一詩集にふさわしく、個々の詩はそれぞれに固有の形式的企みを携えている。だがそれらの総体から浮かび上がるのは、たくさんの喜びと痛みの記憶に満ちたひとりの人間の丸ごとの姿だ。ーー山田亮太

第62回現代詩手帖賞受賞詩人によるデビュー作。写真=花代、装幀=戸塚泰雄

2420円(税込)
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-4604-1
2024年11月刊

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雪柳あうこ『骨を撒く海にて、草々』

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魂の不在通知


波打ち際に落ちていたボールペンを
拾って、絡みつく海藻を払い
書き出す
遠くの海の傍らに住む
あなたへの ことば
(「海際へ」)

読めばどの詩からも、目を凝らすまでもなく、鮮やかな言葉の背後に、それぞれの深みへ届く物語を感じることができる。――松下育男

雪柳さんの詩には、様々な音や声が響く。ときには死者と生者の垣根を越えて強く語りかける。きつく抱擁を交わすように。そのダイナミックな表現で、読者を未知の場所へと導く。ーー文月悠光

第1詩集『追伸、この先の地平より』以後、3年ぶりの新詩集。写真=紫衣

2640円(税込)
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-4503-4
2024年11月刊

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鈴江栄治『意識ー死』

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詩と美術のはざま


漆黒の 影の 背後に 巡る 予感に 焼かれたのか ―不死の
(「―不死の」)

詩の言葉以外の言葉を必要としない、抑制された言葉のすがた。『陽の額』以後、5年ぶりの新詩集。著者自装

2750円(税込)
菊判並製・96頁
ISBN978-4-7837-4589-1
2024年11月刊

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吉田義昭『海と重力』

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時代の波間で


長崎県 西彼杵郡 野母崎町高浜
幾つもの時代の夏空の下を通り過ぎ
東シナ海に寄り添う私が慈しみ愛した村
(「引き潮の時」)


私は自分の故郷を持てなかった気がする。私が生まれた廃家も幼い頃の記憶が微かに残っているだけだ。しかし、何度も故郷を訪ねているうちに、原風景が生まれてしまったらしい。(あとがき)

戦後80年、祖父母、父母の世代の引揚げの記憶を継承する。装画=柿本忠男、装幀=伊勢功治

2750円(税込)
A5判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4577-8
2024年11月刊

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谷口ちかえ『地図をはずれて』

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私のありか


地図をひろげて
次に行くべきところを探している
今日にわずかに爪を立て
「心」は 翼のないまま飛ぼうとする
(「地図をはずれて」)


国策に翻弄された一族の中で、〈わたしは誰?〉と所在なく暮らした年月が、日常を超えた山巓へ、水平線の向こうへと自らを駆り立てた気がする。無窮の天地と交叉する、点ほど小さな生を自覚しつつ、永劫の中の一瞬である「今」を超越するために。(あとがき)

戦後80年、歴史に翻弄されたディアスポラ2世の旅路のその先。装幀=伊勢功治

谷口ちかえ
旧満州奉天生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。学生時代に「早稲田詩人会」で詩作を始める。詩集に『地図のかなたへ』『木の遍歴』(ともに土曜美術社販売)など、訳書にD.ウォルコット『オデッセイ』(国書刊行会)がある。

2860円(税込)
A5判並製・128頁
ISBN978-4-7837-4576-1
2024年11月刊

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朱濤/竹内新訳『半輪の太陽』

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ますます出鱈目 いよいよ駆け回る


私は飛んで火に入る夏の虫のように再び溶鉱炉に入り
中国から携えてきた涙を用いて
北半球の緑青をきれいに洗い落とす
(「闇夜にきらめくバラ」)


詩は風に飛ぶ柳の綿、一片の雪、一面の白い葦。世界を驚かすものではない。―――現代中国のただなかで、自分自身のために詩を書き継ぐ。魂を飛翔させる思惟の流れ。2010年代の作品を収める、進行形の翻訳詩集。

2640円(税込)
四六判並製・224頁
ISBN978-4-7837-2797-2
2024年10月刊

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植木信子『日々の流れに』

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過去から未来へ


君はまた永遠のような時間の内にいて花を投げているね
(「花を投げる」)


「死にもやすらかな生を願った/空からの緑を吹く 髪を吹いていく風に/少しだけ思い出してほしいのです。」(「いつも」)。生と死の繰り返しのなか、ささやかな日々は続いていく。命の川をそうしてわたしは行くはず――。過去から未来へ、かなたに希望を手わたす36篇。

2750円(税込)
A5判並製・128頁
ISBN978-4-7837-4601-0
2024年10月刊

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