詩の本の思潮社

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新刊情報

【近刊・予約受付中】大島静流『蔦の城 lux poetica④』

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不穏な声に


無限に増殖して根を張る相容れない生命の陰で
諦念に引き攣ってもう明くことのない眼の端を
いつか指先で書き捨てた
不注意な呼び名の残りが漂う
(「蔦の城」)


大島静流の詩の重心がひときわさがっている。安定ということではない。重心はくだって、薄暗く、不安定で、不確かな地点から視線が始まってゆく。薄暗いビオトープのミクロコスモスから少しずつゆるやかに紡ぎだされる言葉たち、この薄曇りの世界に紡ぎだされる言葉たちは、竦みながら、しかしやがてたぐい稀でたしかな手応えをもって、孤独のうちに燦然とした世界を創りあげる――朝吹亮二

思念と現実の亀裂を幻視し、堅固に構築される詩語の城。いっそうの深みへと降りてゆく第2詩集。 装画=来田広大、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4564-8
近刊・予約受付中

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【近刊・予約受付中】張文經『そらまでのすべての名前 lux poetica③』

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わたしのはじまりへ


あめが降らない冬の日は
いつでもかわりに
見えない 名前がふりそそぐ
(「ふらない日にも」)


生きていることに理由のわからない喪失感を抱き、溶けていなくなることを甘やかに望みながら、青空に失意とも安堵ともつかないすうっとしたものを感じた経験が、もしあなたにもあるなら。その時のあなたのために、この詩集に出会ってください。「空」は、その漢字の意味をいくつも重ねた、張さんの独特の詩語です。ことば以前のことば、わたし以前のわたし。そのまどろみへの憧れと、背いて書くしかない孤独が、頷きかけてくるような詩集です――暁方ミセイ

うまれたことの痛みとともに、言葉をしって、せかいに呼びかける。ふりそそぐ名前のなか、あふれる24の抒情。装画=髙木大地、装幀=戸塚泰雄。

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4563-1
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【近刊・予約受付中】小川芙由『色えらび lux poetica②』

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リズムの精彩


身体を無視して眼の奥に心を探し当ててしまうから光。そこにねこを、子音のような傷を、隠してやる。しきりに在るばかりの孤独が現象が、ぐうぜんを、見つけたときの反応、3、2、1、
(「ひみつの丘があったこと」)


この凜々しさはなんだろう。よく観察された風景と実直な行為とが織りなす、光まみれの詩群。乱反射することばのファンタジアの中に、ひとりの開け放たれたひと、すっくと佇むひとがいて、こちらをまっすぐ見つめている――大崎清夏

わたしの、だれかの生きる、色とりどりの遠景。2023年度〈ユリイカの新人〉による、あざやかな出発。装画=木村彩子 装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4562-4
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【近刊・予約受付中】芦川和樹『犬、犬状のヨーグルトか机 lux poetica①』

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自在な仕草、かたち


集合、離散する、金魚と金魚鉢。雨粒だったら窓ガラスの上をいつまでも泳ぎ回るわ。馬鹿ね、あれは走っているのよ。蒟蒻(こんにゃく)はいまも蒟蒻畑で生まれている。
(「三つ葉のオセロ、日傘を持たない」)


干菓子が(言葉が?)散り散り、寄せ集められたり、寄せ集められなかったり。笑う笑わない笑う丸ゴシック体。自在に飛び回るハトたち(ハトたち?)。とげとげしい破壊にならない配慮。かたまった言葉や乱雑な言葉が多い現実にくたびれたら、新しい楽しさがたくさん舞う芦川詩集を読みましょう――小笠原鳥類

(非)生物として生きる文字たちがちらばり、つらなって、かたまりになる。今年の現代詩手帖賞詩人の、かわいいユートピア19篇。装画=横山麻衣、装幀=戸塚泰雄。

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4561-7
近刊・予約受付中

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【近刊・予約受付中】『岡崎純全詩集』

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北陸の生を蝸牛の如く見つめ築き上げた豊穣な詩風土


ぬりのはげかけた
黒い重箱の
その底から
こんのちの
文字にならない
いびきが漏れる
(「重箱」)


もっとも根源的な福井(北陸)人を語った詩人として、長く記憶されるべき詩人であろうと私には思えてならない。――倉橋健一

岡崎純が生地の民衆の記憶や伝承、世間話、俚諺を背景に、歌い語りの詩法を手堅く手中におさめた時、土地の口承は寓話性を帯びてくる。――金田久璋

岡崎純の詩の世界は娑婆苦に耐えて懸命に生きる人間の魂を慰藉し、深い安堵感をもたらしてくれる。得難い詩である。――広部英一

北陸の農村でくりかえされる寡黙な生と死に寄り添い、その習俗や自然を根に、滋味に溢れた独自の詩風土を築き上げた岡崎純。『重箱』から『寂光』にいたる単行詩集6冊と生前構想の未刊行詩集、単行詩集未収録詩篇361篇を収録。詳細な年譜と解題を付し、その全詩業を一望する。装画=安井美紀子
解説=倉橋健一、定道明、広部英一、笹本淙太郎、金田久璋/年譜・解題=安井杏子編

11000円(税込)
A5判上製函入・672頁
ISBN978-4-7837-2387-5
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佐藤文香『渡す手』

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第1詩集


我々は
書き下し文のように
ひらかれた気分をしていた
(「森と酢漿」)


まなざしに裏打ちされた小さな言葉ひとつひとつが、現在の暮らしをいつしか大きく抱きとめる。平熱というしずかな熱だけがさわることのできる言葉や感情の細やかさがある。――岡本啓

人と世界との境界にあるものは、間違いなく身体である。佐藤文香『渡す手』は、世界と接する身体、そして身体を通じて我々に感受されるもの、すなわち五感を極めて丁寧に扱った詩集だ。――石松佳

あなたの言葉は親密ではない。耳もとで囁きかけられるのが苦手なわたしには、紙からにらみつけられることが、隠し包丁が入れられているかのようにすぱすぱと切れていく言葉が心地いい。――平岡直子

ジャンル、形式、社会通念にとらわれない自由な歩行。俳句に軸足を置きながら、境界を自在にわたっていく。「現代詩手帖」連載の6篇を含む、詩的濃縮を実現する新詩集。装幀=佐野裕哉 カバー英訳=Corey Wakeling、小磯洋光 協力=京都文学レジデンシー

2200円(税込)
四六判並製・88頁
ISBN978-4-7837-4552-5
2023年11月刊

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和合亮一『such and such』

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明言できないもの


一頭でも良い
極限の角を生やし
明日へ
生まれるため
(「シカジカ然然」)


見よ、記憶の中で肋骨になったままの未来が、光の口唇から奔出する!オートマティズムの限界を超え、幾層もの次元をしなやかに飛翔する、言語の新世界。装画=ミロコマチコ、装幀=中島浩

2420円(税込)
菊判上製・104頁
ISBN978-4-7837-4549-5
2023年10月刊

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白井知子『ヴォルガ残照』

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黙契の旅


ヴォルガを下る船
停泊する夜半
カーテンからのぞくと
たちこめる霧
(「濃霧」)


「前略。悲しくて美しいヴォルガの舟歌になりましたね。今は亡き人を訪ねる旅、再び面影の自然と、声のことばで語らい、夫々慎ましい抒情詩がいつしか叙事詩になったような。アフマートワやパステルナークの、あの愛しい呼びかけが聞こえてくるようです」(工藤正廣)。いつかヴォルガへ。17年の時をへて、アフマートワの詩に導かれ、タシケントでの約束を果たす黙契の旅。装幀=山元伸子

2750円(税込)
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-4544-0
2023年10月刊

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森文子『もってのほか』


土とともに


先導は きらびやかな袈裟すがた
祖父の野辺の旗ゆく ほそい 行列
おんぼを務めるひとが 待つ
むらの火葬場へ
(「柿ひと枝」)


「土くれ 手くれ 陽が暮れて 心にくれる いい野菜 たなごころなんて もってのほか 野菜 ひとくち」(川上明日夫)。たんねんな畑仕事のかたわら、自然への注視のなかから、うつくしい言葉がたちあがる。『野あざみの栞』から3年ぶりの新詩集。装画=森雅代

2640円(税込)
A5判上製・88頁
ISBN978-4-7837-4543-3
2023年10月刊

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粕谷栄市『楽園』

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散文詩38篇


 世間の人々は、笑うかもしれない。かぎりなく幼稚な愚かな夢だ、と。しかし、たとえば、瀕死の病床にあって、薄明の時間を過ごす者にとっては、そうではない。それは、直接の、そして、切実な現実である。 (「楽園」)


私は、幻の一匹の犬であったか――。現実と異郷のはざまから、遥かな啓示の光が射しこむ。10年ぶりの新詩集。装幀=奥定泰之

好評既刊
現代詩文庫『粕谷栄市詩集』
現代詩文庫『続・粕谷栄市詩集』

3850円(税込)
菊判上製・168頁
ISBN978-4-7837-4529-7
2023年10月刊

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佐峰存『雲の名前』

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名を与え続けること、


無軌道に啄む煤けた翼や
信号機の結界を 隕石の大きさで
横切る水素バスの 鱗粉を
束ねながら 空には時折 雲の国があらわれる
(「雲の名前」)


これまでになく、またとない形状で移ろう世界と私たち、固有の生を見つめるために。――ひそめた文字を持ち寄れば、きっと、新しい名前になる。第2詩集。装画=甲村有未菜

2750円(税込)
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-4546-4
2023年10月刊

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竹内英典『伝記』

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いつか ここに


ことばは深く流れ
水底に積まれた石の目が
掬おうとするひとを凝視する
(「窓 ひとつもの」)


「「挫滅につながれた伝記」という藤井貞和さんのことばに出会ったのはもう五十年も以前のことである。その時の衝撃は忘れることなく胸の内にありつづけた。さらに、その三十余年後、倉橋健一さんの「ひとりの若者は遠ざかり」から「敏捷果敢な一頭の草食有蹄獣を/来る日も来る日も/思い続けたのだった」という行に会った時の、思わず座りなおした時間を忘れることは出来ない」(あとがき)。
砕かれたことば、剝ぎとられた物語。もういちど生まれたいと瞬くものへ。長い歳月のなかで問い続けてきた二つの詩句を契機として、人間の「歴史」のありように畏れをもって向きあう、詩24篇。

2640円(税込)
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-4524-2
2023年10月刊

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渡辺玄英『しろいうさぎを狩る者たち』

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空は一点で潰れる


蒸発することを禁じられたわたしわたしたちの
絶え間なく半減する(ふるえる
分岐した朝から 消えていく青い星を見送る
(「昨日まで地球の夢を見ていた(水の粒子」)


夜になると鳥は何処で死ぬのか――。滅びの粒子が降りつもり、わたしたちの時間は巻き戻されてゆく。地球の夢を見る、最新18篇!装幀=中島浩

2640円(税込)
A5判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4548-8
2023年10月刊

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服部誕『祭りの夜に六地蔵』

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とおく呼び交わす声々


めずらしく混んでいた
昼下がりの箕面線
あいていた隅の優先席に腰を下ろすと
向かいにひっそりと
双体の道祖神が座っていた
(「昼下がりの幸福について」)


いつもの電車が、街角が、不意に見慣れぬ場所に変わるとき――。非日常の空隙を、ポエジーの瞬間をとらえた21篇。装幀=中島浩

2750円(税込)
A5判上製・118頁
ISBN978-4-7837-4547-1
2023年10月刊

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こたきこなみ『ひとがた彷徨』

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新生、そして未生


胎冥のなか奪われ与え奪い与えられ
我知らず横滑りに包まれる愛
あやうく横流しにくる死
(「胎冥/新生」)


人は時の容器。茫漠として地表を覆う人の、現存も非在もつかの間の宿りか――。命の根源とその涯を、宇宙的スケールで捉えた新詩集。

2640円(税込)
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-4545-7
2023年9月刊

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