遠く水門がひらく気配がして水をたたえた朝を引いて人々が集まってくる(「バザール」)「ひとことでも/言葉を発したら//あふれ出す川がある」(「雨」)。今日もどこかかなたで、こぼれおちた青い時が届けられるのを待っている。イスタンブールのバザール、奄美、あの夏の広島――空がほどけて、懐かしい景色が揺れうつる。いま、あかるい不穏をつれて漂流しはじめる25篇。
本体2500円+税A5判上製・112頁ISBN978-4-7837-3720-92020年9月刊