田中眞由美『待ち伏せる明日』
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しずかに ひそかに
しずかに ひそかに
神様のはなしなんか信じて
みんな暮せなくなった
それなのに
上の方に置けばそれだけでいいのだと
神様は言いだした
しっかり見張れば大丈夫だと
村人も言い始めた
(「下と上のはなし」)
本体2500円+税
A5判変型上製・104頁
ISBN978-4-7837-3639-4
2018年10月刊
神様のはなしなんか信じて
みんな暮せなくなった
それなのに
上の方に置けばそれだけでいいのだと
神様は言いだした
しっかり見張れば大丈夫だと
村人も言い始めた
(「下と上のはなし」)
本体2500円+税
A5判変型上製・104頁
ISBN978-4-7837-3639-4
2018年10月刊
わずかにわかりあえた瞬間にだけ
指先に触れた ごつい荒縄
潮をかぶった
綱手
かなしも
(「ジュリオ・ホセ・サネトモ」)
本体2200円+税
A5判変型上製・136頁
ISBN978-4-7837-3641-7
2018年10月刊
今を生き 独りの朝に 柿食へば 人は
熟女に 生まれない
(「晩熟」)
本体2200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3638-7
2018年10月刊
いつだったか
きれいな鉱石に頼らなかった
私に戻れたら
何も飾らず
あの人に会いに行けたら
(「メランコリック」)
本体2400円+税
A5判上製・122頁
ISBN978-4-7837-3643-1
2018年10月刊
開け放たれた戸の先で
夕映えに染まった浮き雲と
正午を迎える青空とを
半々に見ている
(「怪の鳴る」)
本体2200円+税
A5判変型並製・106頁
ISBN978-4-7837-3640-0
2018年10月刊 2019年4月第2刷
ひとり転がった地面の
花という花から毛が生える
土という土から春が溢れている
わたしの許しなく
(「狂々」)
本体2200円+税
四六判並製・78頁
ISBN978-4-7837-3634-9
2018年9月刊
窓辺からそそぐ、春の陽射しに、ただ影となっている君を前にし、さて君は男の子なのか、女の子なのかと、ふと考えてみる。私は君の、とうさんなのだろうか、かあさんなのだろうか。
(「空中散歩」)
本体2200円+税
四六判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3630-1
2018年9月刊
かわるがわるの記憶が
あおざめ
時割れてゆく
(「不在都市」)
本体2200円+税
A5判変型並製・130頁
ISBN978-4-7837-3631-8
2018年10月第1刷 2025年2月第2刷
さあ、蓋をあけて
暗渠の裏側に入り込もう
ことばの裏側に宙づりになって
とろとろ流れる水を下っていこう
(「リバー、詩、ブル」)
本体2400円+税
A5判上製・122頁
ISBN978-4-7837-3636-3
2018年10月刊
私は、泥まみれの犬を歌う、貧しい犬、宿なしの犬、うろつく犬、道化の犬、つまり、貧民やジプシーや大道芸人の本能のように、かくも善良な母であり知能の真の守り神でもある、必要、というものによって、みごとに研ぎすまされた本能をもつ、そんな犬を歌うのだ!
(「50 善良な犬たち」)
本体2200円+税
四六判並製・240頁
ISBN978-4-7837-2799-8
2018年9月刊
こんなにも背後の夕焼けは美しいのに
ここにも、そこにも
たおやかな夕日が地に照り映えているのに。
呪われた火で
今も、ふるさとは燃えている。
(「火について」)
本体2600円+税
A5判上製・120頁
ISBN978-4-7837-3633-2
2018年10月刊 2019年4月第2刷
真冬の房総の海に飛び込んだのだという
タカハシは本当に命を絶ったのだろうか
街中をひとり歩いていると
笑うタカハシたちであふれていた
(「笑うタカハシ」)
本体2600円+税
A5判変型上製・128頁
ISBN978-4-7837-3622-6
2018年10月刊
岡井さんからの最初の投げかけにnotationをしていたとき、わたしはスペインの旅行を経て、ニューカレドニアのヌメアで最初のnotationを終えたところだった。そこで出会うことになった、日系二世の女性たちから聞いた話が心から離れず、それを書きつけることなしには、わたしの耳に入ってきた彼女たちの声は外に出ることがなく、声の流れとして完結しないような気がしていた。
(本文より)
本体3200円+税
B5判並製・160頁
ISBN978-4-7837-3621-9
2018年9月刊
ぽこぽこは遠くへ飛んでいった わたしのぽこぽこ
ぽこぽこが集まっている空がどこかにあって どこにもない色をしている
(「大きな木とどこにもない空」)
本体2200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3626-4
2018年9月刊
生者のための数に一を加え
死者のための数に一を捧げ
わたしの天秤は静かに狂う
思い出は数えられないから
十本の指のまま
生きていく
(「挽歌」)
本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3623-3
2018年9月刊