詩の本の思潮社

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新刊情報

齋藤貢『遠い春』

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じっとこらえている


汚れたあしうらを
どれほど洗い落としても
土地の痛みは消えないだろう
(「遠い春」)


地震と津波と放射能と。突然襲ってきたあの日から十数年。この苦い水を、いつまでひとは飲み続けるのか――。現代詩人賞受賞作『夕焼け売り』から6年、待望の新詩集。装画=宮崎進

2860円(税込)
A5判上製・136頁
ISBN978-4-7837-4571-6
2024年6月刊

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北園克衛『単調な空間1949-1978』新装版

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幾何学の叙景・実験詩集



その黒い憂愁
の骨
の薔薇
(「死と蝙蝠傘の詩」)

世界を駆け巡った「単調な空間」から、大胆な方法論がたどりつく文字を使用しない詩=プラスティック・ポエムという極北まで。ことばや文字を形象として扱いながら停滞することなく進められた戦後の言語実験、意味を追わずにイメージで構成された驚くべき成果を厳選して収録した実験詩集・戦後篇。構成=金澤一志。待望の新装版。

〇同じ著者によって
『記号説1924-1941』新装版
現代詩文庫『北園克衛詩集』
〇関連書籍
ジョン・ソルト/田口哲也監訳『北園克衛の詩と詩学――意味のタペストリーを細断する』
金澤一志『北園克衛の詩』

2640円(税込)
A5判変型並製・130頁
ISBN978-4-7837-4551-8
2024年6月刊

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北園克衛『記号説1924-1941』新装版

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抒情のアヴァンギャルド・前衛詩集


友よ またアポロが沖の方から走つてくる
雨のハアプを光らせて
貝殻のなかに夕焼けが溜まる
(「驟雨」)

きらびやかに展開するモダニズム文化のなかで北園克衛が萌芽する。関東大震災後に紡がれた最初期の作品を含め、発表時の組版を忠実に再構成した「図形説」全11篇ほかを収録。『白のアルバム』『円錐詩集』『夏の手紙』など戦前期の代表詩集からそのエッセンスを一冊に収める前衛詩集・戦前篇。構成=金澤一志。待望の新装版。

〇同じ著者によって
『単調な空間1949-1978』新装版
現代詩文庫『北園克衛詩集』
〇関連書籍
ジョン・ソルト/田口哲也監訳『北園克衛の詩と詩学――意味のタペストリーを細断する』
金澤一志『北園克衛の詩』

2640円(税込)
A5判変型並製・130頁
ISBN978-4-7837-4550-1
2024年6月刊

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橘しのぶ『水栽培の猫』

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いつもそばに


三日も経つと
水を吸った猫は
ふっくらとうめいになった
(「水栽培の猫」)


「『水栽培の猫』は、読者を迷宮に誘い込む。ページをめくるたび、曲がり角の向うから、この世のどこにもいないはずの異形のものが晴れやかに姿を現わす」(野木京子)。2年ぶりの新詩集。

2420円(税込)
四六判並製・104頁
ISBN978-4-7837-4566-2
2024年5月刊

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西原真奈美『迎え火』

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第1詩集


いつか あそこに自分もいるのだ
砕かれるために
いつか砕かれるものとして
(「いつか砕けるものとして」)


「受け入れること。つまり受け身であることは、西原さんの詩においては、無力なことではない。(…)本書の言葉にもまた、愛する対象を真に受け入れることを支えつづける情熱がその奥に秘められている」(峯澤典子)。見送ること、生きること。第1詩集。装画=鴨居玲

2530円(税込)
四六判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4567-9
2024年5月刊

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現代詩文庫『時里二郎詩集』

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〈半島〉の言の葉、詩の息づき


植物図鑑の雨の中を 男は朝狩から帰還する
猟の身繕いのまま弓と胡簶を床に投げ出して
仕留めた獲物を閲覧室の机に置く

それは耳の形状をした集積回路の基板の破片
だった 彼の矢が過たずにつらぬいた空が一
点の闇を点している 矢の径よりも小さな基
板を射抜いて 錐眼のごとき仮想の穴を穿つ
技はこの世紀のものではない

傭兵だった男は彼の世紀を逃れてこの図書館
に漂着した ここを住処に自らの集積回路か
ら剝ぎ取られた幼年の記憶の基板を探すため
に 紙片と眼差しに封じられた累々たる文字
の列を追い立てながら 朝狩に発つのだった

男はピンセットで今朝の獲物を丁寧に摘みあ
げ 小さな闇に眼差しの糸を通して眼を閉じ
る 穀雨の湿りをにじませて 息づくような
森の緑に濡れた基板が微かに震えている
(「朝狩」)


時里二郎を導く標は都市になく鉄路にもない。影をひそめて古刹に座す仏像であり、物語を封じて納戸に眠る絵巻であり、波を分けて内海に横たわる半島である。
収録された7冊の詩集は翅を持つ昆虫が変態する一齢から七齢までの過程をなぞらえる。読者は本書でその幼生から羽脱への各ステージを詩人とともに微睡みながら、失われた「時の里」を経めぐるだろう。――柄澤齊

語り=騙りのスタイルで原郷を彫り進める稠密な散文詩。過去/未来へと縦横に伸びる言語探究の地誌『名井島』に至るまで、その詩的彷徨を辿る。好評重版!
解説=高橋睦郎 池内紀 高柳誠 山尾悠子

〇同じ著者によって
『伎須美野』
『名井島』
〇関連書籍
「現代詩手帖」2019年7月号「特集Ⅰ・時里二郎――『名井島』を訪ねて」

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1030-1
2024年5月第1刷 2025年2月第2刷

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岩木誠一郎『声の影』

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夜明けの方へ


あとどれくらいでしょうか
たずねているのは
夜明けまでの道のりだろうか
それは
たえまなく降りつもるものに
ほとんど埋めつくされているのだが
(「夜明けまで」)


「どこまでもゆけるのではなく/どこまでもゆく/うしろすがたがちいさくなって/星がひとつ燃え墜ちる」(「銀河まで」)。歴程賞を受賞した『余白の夜』から6年、詩のたしかな歩みを示す新詩集。装画=矢野静明

2420円(税込)
四六判上製・96頁
ISBN978-4-7837-4569-3
2024年5月刊

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依田義丸『連禱』

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非現実という現実へ


この瞬間、少年の素面はおびただしい砂粒となって、彼の部屋に果てしない砂丘を広げる。そこには、詩に取りつかれた老人がうずくまっていた。
(「心象」)


「現実の否応なしの拘束のもとで非現実という現実を創り出すことに魅了されながら、それを可能にする言葉表現を紡ぎ出そうとして祈るように辿った遍歴の道のりが自分自身の詩作だったと今感じています」(あとがき)。
ものを書く手と書かれたものとが、ゆるやかに解けていく幻惑の光景。劇的なるものから詩が生まれる。祈るように紡がれた、散文詩19篇。

2420円(税込)
A5判変型上製・90頁
ISBN978-4-7837-4568-6
2024年5月刊

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梁平/竹内新訳『時間ノート』

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中国現代詩の成果


私は自分自身に覆われている
草ぶきの家の雑草が額をくまなく這い
石碑の立ち並ぶあたり 空の裏側が見えるだけだ
(「自分自身に覆われている」)


唯一つやりたいことは、詩を骨の内に書き込むことだ――四川省成都に住み、その地を愛し、詩人として編集者として、詩と格闘し詩に支えられてきた。日々の内省と観察を昇華する、中国現代詩のあらたな成果。

2420円(税込)
四六判並製・188頁
ISBN978-4-7837-2795-8
2024年4月刊

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竹内新訳『盛祥蘭詩選』

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中国精鋭詩人の選集


秋がまるごと凝縮されて
麦穂になり
太陽の方角に向けて
ずっしりと重い体を曲げ
頭を大地に下げている
 (「感謝」)


「盛祥蘭の詩は、いわば原風景に支えられている。(…)光や風や雲や石が、どこかに内包されているのではないかと想像する」(「訳者後書き」)。詩のみならず、小説や散文などの著作をものし、多数の受賞歴もある中国の精鋭女性詩人の代表的な詩作品を集成。

2420円(税込)
四六判並製・168頁
ISBN978-4-7837-2794-1
2024年2月刊

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