詩の本の思潮社

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新刊情報

浜江順子『あやうい果実』

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死を彷徨う者たちへ


早く魚座の領域へと
死との境界
駆け抜けたいと
ひたすら公転する
(「火星裏心、ひゅ〜ら」)

平温で語られるべき「死」が、恐ろしいまでに揺らめいているのはなぜか。 地球が悲しい水の惑星になっているいま、眼差しは熱い氷のように。新詩集。

本体2600円+税
A5判変型上製・128頁
ISBN978-4-7837-3716-2
2020年9月刊

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松尾真由美『多重露光』

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いつからか、いつまでも


そして
漕ぎだす舟の
いとわしい逡巡を
解きはなってみたくなる
(「暗く明るい船出としての」)

運動を秩序づけるために選び取られた三つのフォルム。
造形もまた途上の動線であり発語の自由と絡み合い、
危うく膨らむ交差の痕跡、それだけが残される。
写真=森三千代

本体2500円+税
四六判並製・112頁
ISBN978-4-7837-3715-5
2020年9月刊

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北爪満喜『Bridge』

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第32回富田砕花賞受賞!


夢の中に手を差し込んで
置き去りにした私を
だらりとした腕の
消えられない少女を
抱き上げて
抱えて来たい
何度も思う
(「消えられないあれを」)

私は沈んでいた何かを引き上げることができただろうか。誰かが、胸に抱えたものを、少しでも軽くしてくれたらいい。幼い私と、他の誰かを引き上げる言葉。
装幀=コイズミアヤ

本体2200円+税
四六判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3717-9
2020年10月刊

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坪井秀人『二十世紀日本語詩を思い出す』

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第72回読売文学賞(評論・伝記賞)受賞!


〈終焉〉言説が拡散し続けていく中で、いまいちど二十世紀の歴史の中で詩の言葉、その思想と批評の言葉、あらわれとしてのテクストのすがたについて再考することを通して、どのような対抗的ヴィジョンが構想されうるのか。
(「序章 二十世紀日本語詩を思い出す」)


未完の過去を解き放つ――。日本語の構築と一体に進行した近代詩史を、蒲原有明、北原白秋らへの稠密な検証により再定位し、植民地主義の傷痕を伝える日本語文学の問題系から、朝鮮日本語詩、合州国移民詩の新しい風景をひらく。「現代詩手帖」好評連載を集成。百年に及ぶ〈詩の時間〉を凝視することによって、抵抗の論理を指し示す、渾身の力作評論。装幀=菊地信義  

本体4000円+税
四六判上製・464頁
ISBN978-4-7837-3822-0
2020年9月刊 品切



 

中尾太一『詩篇 パパパ・ロビンソン』

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ぼうけんの足跡


この「森」で僕は今、それが必ずしも血路ではない「寄り道」に、架空のヒトヒトふたり(「師弟」)をあらためて投影しようとしている。
(「残滓から」)


閉ざされた冬の、コトバの森。方位なき地形をめぐり、生きものたちは「詩」と邂逅する――。今世紀の詩の杣道を、群をぬく光速言語で切り拓いてきた詩才が、未知の詩行のピークへ、真正の自由を賭けて実践してゆく。新境地をあらわす、著者はじめての神話=ファンタジー詩篇!装幀=菊地信義 

本体3200円+税
四六判上製・210頁
ISBN978-4-7837-3714-8
2020年9月刊

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柏木麻里『蝶』

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ひらいてゆく


蝶であること

そとに
そっとひらく


Butterfly
silently
opens
outside
of
being a butterfly
(「いない」)


蝶はいつ私の前にあらわれてくれたのだろうか。翅の両翼のように日本語に、連東孝子の英語が寄り添う。装幀=山元伸子 詳細はこちら→

本体4800円+税
A5判函入2分冊(分売不可)・288頁
ISBN978-4-7837-3722-3
2020年9月刊

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高貝弘也『紙背の子』

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8年ぶりの新詩集


言葉の魂(み)か
 息ふきかけると ふくらんで


卵子のような
その雀斑(そばかす)をおさえながら

――あなたはかわらず 生(き)のままで

喜びも、悲しみさえも
――死んでも 熟(う)れてゆきますように
(「紙背の子」)


詩の外側、世界の縁…際…から、まぼろしの子が、こちらを見ている、覗いている、わたしを呼んでいる… 。組版・装幀=川本要 詳細はこちら→

本体3000円+税
A5判たとう入・112頁
ISBN978-4-7837-3724-7
2020年9月刊

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金井雄二『むかしぼくはきみに長い手紙を書いた』

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ほんとうに書きたかったものは


一本の樹に繁った
一枚の葉っぱ
ただそれだけでよかった
(「深呼吸ひとつ」)

「自分としては、この詩篇を書き続けていたときは、恋愛詩集を作るつもりだった。そうなったかどうかはわからない。そして、詩集のなかの「きみ」は何なのか、どんな想像をされてもかまわない」(あとがき)。書いても書いても、書き終えることのない、透明な気持ち。きみにとどける、30通の詩。装画=辻憲

本体2200円+税
四六判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3709-4
2020年9月刊

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北川朱実『遠く、水門がひらいて』

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果てのない青い旅


遠く
水門がひらく気配がして
水をたたえた朝を引いて
人々が集まってくる
(「バザール」)

「ひとことでも/言葉を発したら//あふれ出す川がある」(「雨」)。今日もどこかかなたで、こぼれおちた青い時が届けられるのを待っている。イスタンブールのバザール、奄美、あの夏の広島――空がほどけて、懐かしい景色が揺れうつる。いま、あかるい不穏をつれて漂流しはじめる25篇。

本体2500円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3720-9
2020年9月刊

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山中従子『やわらかい帽子』

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眠りの中から


生きのびて過剰に繁殖した白い花
其処から反射するひかりが
未来から飛んでくる夏のひかりのように冷たく
わたしの顔に突きささる
(「白い花」)

「山中従子さんの詩のもつ魅力のひとつにはさり気ない日常の自然との交感のうちにあって、さまざまな物象との戯れ方にひじょうにたくみな点があげられます。夢魔や強迫神経まがいの領域をもしぶとく内的世界へと巻き込んで変容譚へと演出する。豊かな幻想詩集へと結実しえたのもすべてはこの天賦のしわざといってよいでしょう」(倉橋健一)。眠りから溢れる44篇。

本体2400円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3719-3
2020年9月刊

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大野南淀『アラバマ太平記』

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悲歌を軽快な口笛で


男がグラスを片手に眺めている
人生の不毛を
移動に変えて、彼らは進むべきだが
農園で汗を流すのも悪くない。
彼らは大きな概念と出会っている。
血液のような色の
(「Ⅱ、辿り着いたミズーリの農園で」)

「リヴァイアサンのごとき、怪物的な書物が現れた。(…)これまでに例のない日本人の日本語によるアメリカ詩を書き上げた」(城戸朱理)、「この旅は自らを追う者を追う旅であり、追いながら逃げつつ焚書を煽る敵を、おれのほうが追跡するのだと宣言している」(村松仁淀)。白いフリーダムトレインがさらなる南を目指すなら――。型破りの傑作長篇詩集!装幀=中島浩、写真=笹久保伸

本体2400円+税
A5判並製・146頁
ISBN978-4-7837-3723-0
2020年9月刊

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尾久守侑『悪意Q47』

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第9回エルスール財団新人賞受賞!


罪業感があれやこれやの顔をしてバッくれる。時限付きの間諜がしんだ。無味のそのひと抗体を求め、わたしはQそのものになった。海がみたい。車種に関わらず響くradio dramaに正解がない。
(「悪意Q47」)

「この詩人の感覚のレンズは不可思議な屈折率をもつ。そこを通過する言葉の光線は蠱惑的な分岐を余儀なくされるのだ」(建畠晢)。捉えどころのない存在に晒される私たち。その悪意の輪郭は摑めない――。2年ぶり第3詩集。装画=浦上和久、装幀=奥定泰之

本体2400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3713-1
2020年9月刊

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高良勉『群島から』

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ゑけ 明けもどろの華よ


「マブイ(霊魂)は永遠に不滅」
と信じられている
あなたのマブイも
何度も何度も帰って来て
生まれ変わる
(「さようならは」)

琉球弧から日本列島まで伸びていく豊饒なイメージと、ヒージャー汁の臭いがするシマクトゥバの響き。複雑に折りたたまれた歴史に向きあい、同時代を生きた大切な人たちを思う。切迫した現在から、未来に託す、渾身の28篇。題字=吉増剛造、装幀=毛利一枝

本体2800円+税
A5判上製・144頁
ISBN978-4-7837-3711-7
2020年9月刊

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ジョン・ソルト/青木映子訳『生まれぬ者への詩』

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「gui」1988-2018


死ぬ時はひとり
でもなんとかこの世に来なくちゃいけない
イエスですら自分ひとりの力で
産まれることはできなかった
(「死ぬ時はひとり」)

「直近30年間をこれほど美しく、しなやかに、エロとユーモアを交えながら鋭く切り込んだ詩歌表現を他に知らない。生まれて生きている我々が、浸るのにちょうど良い深さの、広い海です」(ロバート キャンベル)。北園克衛研究で知られる著者が、「gui」に30年にわたって書き継いだ作品を集成。700頁を超える大冊。装幀=羽毛田徹夫

本体7800円+税
四六判上製・702頁
ISBN978-4-7837-3667-7
2020年8月刊

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高橋達矢『からだを洗っていると』

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まじわる生


この掛け湯は父のため
この掛け湯は母のため
しろくにごった湯に
首までつかる
(「湯の峰」)

「老いたからだからふとい根っこが突きでたり/若いからだから貝殻のような骨がこぼれたり/白い石室でからだを洗っていると/かたちをうしなってまじわっているものがある」――ここにいない家族の記憶と物語が、からだの中に息づいていることに気づくとき、日常とは少しだけちがう景色が見えてくる。喜びと悲しみをあつめ、まっすぐな言葉で綴る第1詩集。

本体2200円+税
A5判変型上製・96頁
ISBN978-4-7837-3718-6
2020年9月刊

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