詩の本の思潮社

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ななおさかき『ココペリの足あと』

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地球Bからの贈り物


半径 1mの円があれば/人は座り 祈り 歌うよ
半径 10mの小屋があれば/雨のどか 夢まどか
半径 100mの平地があれば/人は 稲を植え 山羊を飼うよ
半径 1kmの谷があれば/薪と 水と 山菜と紅天狗茸
半径 10kmの森があれば/狸 鷹 蝮 ルリタテハが来て遊ぶ
半径 100km/みすず刈る 信濃の国に 人住むとかや
(「ラブレター」)


「ここに収められた詩は、どんな国でも理解される自由詩であり、「ポストモダン」と呼ばれるに足る作品である。――つまり右翼と左翼の対立が生み出した、怒れる夢とその破綻を生き抜いてきた詩だ。ななおの詩が根ざしている、昔からの民衆文化やうたの深い根っこには、「未来に発信する古代」の洗練された未来像がある。そんな詩。ななおさかきの贈り物」(ゲーリー・スナイダー)。カウンターカルチャーの神話「ナナオ」の決定版選詩集!

本体2,200円+税
A5判並製・224頁
ISBN978-4-7837-3187-0
2010年8月刊 品切


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現代詩手帖2010年10月号特集「ななおさかきの地球B」。編者の原成吉氏のインタビューのほか、ななおさかきとゲーリー・スナイダーの対話、インタビューなどを収録。



 

金澤一志『北園克衛の詩』

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前近代の固い芯をもった昭和のリンゴ


一九三五年の創刊から一九七八年の最終一六〇号まで機関誌「VOU」の表紙に日本語が印刷されたことはついに一度もなかった、といえばただの外国かぶれのように聞こえてしまうが、形式やスタイルが内容を牽引していたのだと考えれば「VOU」はまさに北園克衛の美意識そのものだ。(「二十世紀をまとめてそのまま」)


「そのときためされるべきこと、行われるべきこと、まぎれもない近代の必然を実践し」つづけた未解決の詩人・北園克衛。その詩を読んで、読んで、考えたこと。北園に深く魅せられてきた著者が、些事までこだわり尽くし味わい尽くした誘惑のエッセイ集。著者自装。

本体2,200円+税
四六判上製・160頁
ISBN978-4-7837-1660-0
2010年8月刊

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渡辺めぐみ『内在地』

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生と死のあわいで


人の尊厳の豪奢なサクリファイスのために泣いたりなどしない
棒立ちの時よ
ためらいがちな単数として
わたしも 恐らく あなたも
死を見張った
ただ ただ 地平の彼方に拘泥する
死を見張った


「分りやすい言葉と、その流れのなかに重い実存が潜んでいる。そこでは、哀しみの旋律、いつまでも血を流し続ける、自分と分ち難い他者への共感が低い静かな声で語られている。この詩集は時代を逆光で照し出す光源である。これを読むと、詩はここから出発しなければならなかったのだという原点に気付かされる」(辻井喬)。生の痛みに真向かう第3詩集。

本体2,600円+税
菊判上製・144頁
ISBN978-4-7837-3193-1
2010年7月刊

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髙木敏次『傍らの男』

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第61回H氏賞受賞!


もしも
遠くから
私がやってきたら
すこしは
真似ることができるだろうか


「不思議な光線をもつ詩群は、これからの多くの読者、批評家を待っている」(井坂洋子)。どこに行けば私に会えるのか――。精確に定められた書くという位置。顕れる感性を告げる異能の第一詩集。

本体2,200円+税
四六判上製・88頁
ISBN978-4-7837-3188-7
2010年7月刊

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平林敏彦『遠き海からの光』

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A beam from the distant sea

この冬を生きるとはかたぶく世界を
なべて受け入れることか――


いま「水辺」から「遠き海」へ遡行することによって、みずからの
一期に何を発見し得るか――。虚と実、生と死のはざまで立ち
尽くす、ひとりの男のすがたを、曇りなき眼差しで謳い、描き出す。


本体2,400円+税
菊判変上製・88頁
ISBN978-4-7837-3202-0
2010年7月刊

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北爪満喜『飛手の空、透ける街』

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飛びたつ記憶、泳ぎだす言葉


いま落ちている雫のことを話すのは
なんて測りしれないのだろう――。


著者の言葉
目を開ける。夢は私に覚め、震えながらはじまる言葉は、いま
ここになる。うまれる記憶のいまここ。言葉は入ってゆく。ま
なざしとともに。繰り返す呼吸のような言葉は、私を離れ、飛
んでゆく。ほんとうは何に触れたか。何かを生きたか。煩雑な
日常で消されてゆく最も大切な些細なものたち。簡単には
見えないそれらは、けれど、詩と向き合えば、どこを生きたの
か、何を生きたのか、どんなふうに生きたのか、が壁を壊して
出てくる。場面が流れ着く。いない人のところへ行ける。何気
ない風景や出来事のなかで脈打っている輝きに出会う。
 数年前、私は命の崖淵に立った。何を生きたいのか。どう生
きたいのか。大切なのは何なのか。問い続けることを止<めら
れなかった。足がすくみそうになり、誰もいない、助けてくれ
る人はと、崩れかけていた、そのとき、どこからか声がした。
(わたしがいるじゃないか)と。それは私の中で響いた声だが、
私とイコールではないもの。生身の私が、言葉で詩という形に
して作ってきた所からの声だった。


本体2,600円+税
A5判変上製・104頁
ISBN978-4-7837-3184-9
2010年7月刊

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谷合吉重『難波田』

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書き下ろし長篇!


目覚めよと わたしは
母の体を 揺する


著者の言葉
悲しいことが在るのではなく、悲しいと思う心が在るだけ
だと後れ馳せながら気づいた時に、生まれ育った地はわた
しの前に大きく立ちはだかってきた。故郷である現在の埼
玉県富士見市南畑地区は、荒川と新河岸川に挟まれ、かつ
ては「難波田」と表記されていたように水害の多い地域であ
った。江戸時代、思い余った村の人々は、地名の文字が悪
いからだと幕府に願い出て「南畑」に改めたという。少年の
頃にそのことを知って以来、わたしの無意識の中に、「南
畑」に抑圧されている「難波田」を発見しなければならない
という思いが巣食っていた。
戦国の世に、武蔵七党のうちの村山党に属し、この地で「兵
(つわもの)どもが夢」を追い、散った難波田九郎三郎や善銀
もまた、何を感じて生きていたのだろうか。彼等もまたこの
地を支配しながら、土地に対する愛着と共にいわれない憎
しみの感情を持っていたのではないだろうかと。わたしは
或る日、それにオブセッションの網の目を掛けて、形式化
したらどうなるだろうかと考えた。それにはどうしても「母」
の助けが必要であった。


著者略歴
1947年1月8日、埼玉県富士見市に生まれる。2008年4月より
朝日カルチャーセンター横浜にて稲川方人氏と吉田文憲氏より
指導を受け始め現在に至る。本書が第一詩集。現在詩誌「スー
ハ!」(発行人・野木京子)に所属。

本体2,200円+税
四六判変上製・88頁
ISBN978-4-7837-3185-6
2010年7月刊

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貞久秀紀『明示と暗示』

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時間のかたち


ある文によって暗示されることがらがすでにその文に明示
されている――そのような文があるだろうか。ゆれている枝
によってよびおこされるものが、ほかでもないそのゆれている
枝であるように。


著者の言葉
枝のゆれうごきをあきずにながめていて、それをあとになって
「枝のゆれうごきをあきずにながめていた」と書いてみても、
それはそこで起きていたことの説明にはなっていても、その
とき体験されていたことの感じからはかけ離れているように思
える。ある文のあり方がそのときそこで感じられていたことの
あり方でもあるような記述とはどのようなものだろうか。それ
をなるたけ観念のほうへはゆかず、だれもが五官で知覚しう
ることがらの範囲にとどまりながら書くことができるだろうか。


著者略歴
1957年生まれ。奈良県在住。詩集に『ここからここへ』『リアル日和』
『空気集め』(H氏賞受賞)『昼のふくらみ』『石はどこから人であるか』
がある。

本体2,400円+税
A5判変上製・104頁
ISBN978-4-7837-3197-9
2010年7月刊

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中江俊夫『伝言』

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眼を閉じよ


わたしは誰から産まれたのだろう
わたしはどの国で生まれたのだろう
どんな家族があったのだろう
わたしはそれらをまるで知らない
(「しあわせの記憶」)


さりげない一行の突きつける匕首は変らず鋭い。ざわめきはじめる不穏な律動。両刃の剣で自他ともに裂く、詩人の骨法が冴える。36篇の行分け詩と長篇詩劇「青のためのレクイエム」から成る、中江俊夫の現在。

本体2,600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3194-8
2010年7月刊

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井川博年『平凡』

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つつがなきや――


講演などするなかれ
郊外の小綺麗な家に住んで
詩のわかる妻女と暮らすなかれ
大学で詩など教えるなかれ
わけてもテレビなどに出るなかれ
(「われわれはみなマイナー・ポエットである」)
 
詩を語り合った友だちは、みんな元気だろうか、生きているやつも、死んだやつも。『幸福』から4年、井川博年のもうひとつの詩のありか。ささやかな幸せという、ありがたき平凡――。

本体2,000円+税
四六判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3200-6
2010年7月刊

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金井雄二『ゆっくりとわたし』

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やさしい光のもとで


ねえ、お母さん、それで、いったい、
ぼくはどこへいこうとしているのだ?
 
箱型のきおくはいつも悪戯する
あることも、ないことも、みんなあったことで
だから、ぼくはどこへでも飛んでいけるのだ
少年の匂いを封じこめるための、新しい詩のかたち。

本体2,500円+税
A5判変並製・144頁
ISBN978-4-7837-3201-3
2010年7月刊

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高岡修『幻語空間』

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ひときわ白い醒めぎわ


既視感から
既死が
はぐれる
 
言葉への、言葉からの転生
詩の再生へ賭ける、死の詩学
いちど死んでみるがいい
そこに一行が立ち上がるなら――

本体2,400円+税
菊判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3199-3
2010年7月刊

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米屋猛『人に生まれて』

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魂の煌めき


幻みたいだ
高鳥は今日も飛んでいるか
舞いおり 舞いあがり
幻の羽音を聞かせているか
 
燦燦とふりそそぐ恩寵の光のもと、とめどなくあふれ出す生への情念

故郷・秋田の地から、万物に向けた祈りをこめて、今ゆっくりと舫をとき放つ。

定価2,310円(税込)
菊判変上製・88頁
ISBN978-4-7837-3198-6
2010年7月刊

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髙谷和幸『ヴェジタブル・パーティ』

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無数に交錯する身体なきエコー


未知の共同性(パーティー)が今コトバと空虚のあわいで
ふたたび始まろうとする。意味とイメージからわずかに浮
いた葉体の上で、生と死さえもたちまじり足をふみならす。
髙谷和幸の詩は、人間以下・以上(ヴェジタブル)の透明
な影たちの不思議な舞踏会へと、私たちを招き入れていく。
――河津聖恵

 

本体2,200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3186-3
2010年7月刊

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