詩の本の思潮社

ホーム新刊情報 > 北爪満喜『飛手の空、透ける街』
新刊情報

北爪満喜『飛手の空、透ける街』

null


飛びたつ記憶、泳ぎだす言葉


いま落ちている雫のことを話すのは
なんて測りしれないのだろう――。


著者の言葉
目を開ける。夢は私に覚め、震えながらはじまる言葉は、いま
ここになる。うまれる記憶のいまここ。言葉は入ってゆく。ま
なざしとともに。繰り返す呼吸のような言葉は、私を離れ、飛
んでゆく。ほんとうは何に触れたか。何かを生きたか。煩雑な
日常で消されてゆく最も大切な些細なものたち。簡単には
見えないそれらは、けれど、詩と向き合えば、どこを生きたの
か、何を生きたのか、どんなふうに生きたのか、が壁を壊して
出てくる。場面が流れ着く。いない人のところへ行ける。何気
ない風景や出来事のなかで脈打っている輝きに出会う。
 数年前、私は命の崖淵に立った。何を生きたいのか。どう生
きたいのか。大切なのは何なのか。問い続けることを止<めら
れなかった。足がすくみそうになり、誰もいない、助けてくれ
る人はと、崩れかけていた、そのとき、どこからか声がした。
(わたしがいるじゃないか)と。それは私の中で響いた声だが、
私とイコールではないもの。生身の私が、言葉で詩という形に
して作ってきた所からの声だった。


本体2,600円+税
A5判変上製・104頁
ISBN978-4-7837-3184-9
2010年7月刊

本のご購入はこちらから