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谷合吉重『難波田』

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書き下ろし長篇!


目覚めよと わたしは
母の体を 揺する


著者の言葉
悲しいことが在るのではなく、悲しいと思う心が在るだけ
だと後れ馳せながら気づいた時に、生まれ育った地はわた
しの前に大きく立ちはだかってきた。故郷である現在の埼
玉県富士見市南畑地区は、荒川と新河岸川に挟まれ、かつ
ては「難波田」と表記されていたように水害の多い地域であ
った。江戸時代、思い余った村の人々は、地名の文字が悪
いからだと幕府に願い出て「南畑」に改めたという。少年の
頃にそのことを知って以来、わたしの無意識の中に、「南
畑」に抑圧されている「難波田」を発見しなければならない
という思いが巣食っていた。
戦国の世に、武蔵七党のうちの村山党に属し、この地で「兵
(つわもの)どもが夢」を追い、散った難波田九郎三郎や善銀
もまた、何を感じて生きていたのだろうか。彼等もまたこの
地を支配しながら、土地に対する愛着と共にいわれない憎
しみの感情を持っていたのではないだろうかと。わたしは
或る日、それにオブセッションの網の目を掛けて、形式化
したらどうなるだろうかと考えた。それにはどうしても「母」
の助けが必要であった。


著者略歴
1947年1月8日、埼玉県富士見市に生まれる。2008年4月より
朝日カルチャーセンター横浜にて稲川方人氏と吉田文憲氏より
指導を受け始め現在に至る。本書が第一詩集。現在詩誌「スー
ハ!」(発行人・野木京子)に所属。

本体2,200円+税
四六判変上製・88頁
ISBN978-4-7837-3185-6
2010年7月刊

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