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現代詩文庫『高祖保詩集』新装重版出来!

2024年10月22日

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静謐なる、『雪』の詩人の深淵

かの夜半の
ねざめに あをき 窓玻璃に
散りこし粉雪
いづち ゆきなむ
(「去年の雪いづこ」)


「短歌で一つのこころざしをひらいたかにみえた高祖保が、詩のとりことなり、ついに、そこから帰ることがなかったのは、すべての詩的革新が抒情詩という水のなかで十分に果たされるものであるという天与のおしえをかぎとっていたからだろう。彼はみずからの抒情詩を、言語の、思想の器物として浪費することなく、そのひろさに心をあわせる人であった。その詩の形式は変転をみせなかった。抒情詩のひめられた可能性の、メディアそのものであろうとした。」――荒川洋治

昭和初期に玲瓏な抒情詩を咲かせ、戦地で夭折した詩人の代表作『希臘十字』『雪』、遺稿となった未刊詩集『独楽』を全篇収録。透徹した詩情の湖にたたずむ肖像。
解説=堀口大學 岩佐東一郎 木俣修 村野四郎 荒川洋治

〇関連書籍
宮部修『父、高祖保の声を探して』

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0851-3
1988年12月第1刷 2024年9月第2刷

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現代詩文庫『永瀬清子詩集』新装重版出来!

2024年10月21日

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詩とアフォリズムの代表作を網羅

老いるとはロマンチックなことなのか
もうあと僅かなので
心は急ぐ朝も夕も
崖っぷちの細道をゆくように
(「老いるとはロマンチックなことなのか」)


永瀬さんの作品に現れてくる性はきわめて現実的であり、それ故に多義的だ。その詩は二十世紀の日本を生きるひとりの女の証言として読むこともできるが、そのとき私たちは時代とともに永遠を垣間見ざるを得ぬだろうし、希望とともに永瀬さんの諦観をも読みとらざるを得ないのだ。ーー谷川俊太郎

モダニズムを経由しながら、生命力溢れる作品を数多く残した永瀬清子。『グレンデルの母親』『あけがたにくる人よ』をはじめ、短章集より厳選収録。


【収録作品】

〈グレンデルの母親〉
グレンデルの母親は/彗星的な愛人/星座の娘

〈諸国の天女〉
諸国の天女/イトハルカナル海ノゴトク/フルヒ落シテキタモノガ/祝ぎ歌あるいは望み歌/雨フレバタマシヒノ/打チフレヨ/無色ノ人/ある夏の日に/何物もたづさえず/脱皮

〈大いなる樹木〉
大いなる樹木/わかみどり/外はいつしか/起てよお前は朽葉でない/三月/神々/天空歌/太陽歌/いつの日も/わが運命/早春/述懐/花/夏至の夜/そよ風のふく日に

〈美しい国〉
美しい国/踊りの輪/手品/冬/辿る/夜に燈ともし/降りつむ/地図

〈焰について〉
だましてください言葉やさしく/禱り/村にて/女のうたえる/木蔭の人/梳り/八月短章/私は/夏のわかれ/この夏の最後の詩/秋の日に/微塵/抒情詩/野薔薇のとげなど/なぜこんなに/十一月/焰について

〈薔薇詩集〉
熊山橋を渡る/私の馬は/告知/見えるものの歌/渦/魔術の歌/マイダスの王/夕ぐれ/願わくば金の真昼に/束の間/月の出/苗/蛇/焼き傷/金星/象/月について/我のなべて/めぐってくる五月には/暁が来た時に/夕陽の中に/朝になると/夜あけ/川水の渦巻の中には

〈山上の死者〉
わが麦/今日 精神病院へ/鎌について/私の足に/この海の/私はその人を征服したのだろうか/蒼いものさびしいあけ方/滅亡軌道/廃墟はまだ冷えていない

〈海は陸へと〉
私は地球/アポロたちも/履歴/人はみな/海は陸へと/息子の結婚/石炭と思って

〈続永瀬清子詩集〉
捕え得ず/出ていった三章 a出ていった b焦げついた cものもらい/シバの女王/背骨について

〈あけがたにくる人よ〉
あけがたにくる人よ/老いたるわが鬼女/お茶の水/昔話/老いるとはロマンチックな事なのか/弥生のもみじーーある人に/唇の釘/女の戦い

〈エッセイ〉
「午後二時の手帖」から/短章集『蝶のめいてい』から/短章集『流れる髪』から/「竹の葉」と「沓」/微少なものへの味方/日々のつぶやき/幻の二頭馬車ーーその鎖状態の進み

年譜

解説=飯島耕一、谷川俊太郎、大岡信、干刈あがた、治村富士雄

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-0857-5
1990年2月第1刷 2024年9月第3刷

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現代詩文庫『八木重吉詩集』新装重版出来!

2024年10月21日

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琴はしづかに鳴りいだすだらう

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐へかね
琴はしづかに鳴りいだすだらう
(「素朴な琴」)


「聖書に直かに学びながら、無邪気なまでに自然秩序のなかに息づく人格的な神を呼びつづける所作などは、考えてみれば日本の精神風土に根ざした求道者の系列に結ばれる要素を含んでいたと思われるのである。日本人らしい感性も、純粋苛烈な祈りも、そこにとかしこまれ、生や死についての言葉や、宇宙観がつねににじみ出ている詩。その詩の平明で素直な表現でありながら、しかも人間存在の根源的なものを表出しえているところが、とりわけ人々の心をとらえてきたのではあるまいか。」――田中清光

簡潔清新な言葉で対象をとらえ、人間存在の根源を指し示した八木重吉。生前編まれた2冊の詩集『秋の瞳』『貧しき信徒』全篇に加え、拾遺詩稿を多数収録。
解説=吉野弘 郷原宏 田中清光

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0848-3
1988年7月第1刷 2024年9月第5刷

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現代詩文庫『尾形亀之助詩集』新装重版出来!

2024年10月17日

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自分自身に即して

立ちあがることのものぐさか何時までも床の上に坐つてゐた。便所の蠅(大きな戦争がぼつ発してゐることは便所の蠅のやうなものでも知つてゐる)にとがめられるわけもないが、一日寝てゐたことの面はゆく、私は庭へ出て用を達した。
(「大キナ戦」)


「この世の中で、自分をまるごと自分自身だけに即して生かして行くためには、無為を貫徹する以外にはなく、自分自身に即して生きるということが人間の真実なのだということを、亀之助は考え実行したのであろう。亀之助の詩を読んで打たれるのはその真実に向って譲るところなく生きて行くものの心が伝わってくるからなのだ。詩集『雨になる朝』あたりから、その考えはだんだんとはっきりしたものとなり、……その後死ぬまでの詩によって更にその思想が亀之助の身体に実現すると見ることが出来るように思う。」――鈴木志郎康

「詩を書く人以外の何者でもなかった」尾形亀之助。『色ガラスの街』『雨になる朝』『障子のある家』の詩集3冊全篇、および未刊詩篇を収録。
解説=別役実 鈴木志郎康

〇関連書籍
福田拓也『尾形亀之助の詩――大正的「解体」から昭和的「無」へ』

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0790-5
1975年6月第1刷 2024年9月第7刷

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現代詩文庫『北園克衛詩集』新装重版出来!

2024年10月16日

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Kit Katの軌跡

望遠鏡空間が怠けて楕円形になり、2角形になり、抛物線になり、溶けてしまつた。無色透明の美しい少年が水晶のパイプを喞へてカメラのなかに現はれてくる。こんにちは、私の美しい白い写真師! 写真師はプラットフオオムの椅子にゐる。
(「硝子の夜の少年の散歩」)


「新しいキャンバスの上にブラッシで絵を描くように、北園克衛は原稿用紙の上に単純で鮮明なイメージをもった文字を選び、「たとえばパウル・クレエの絵のような簡潔さをもった詩」を書いた。つまり「意味によって詩(ポエジイ)を作らない」で、「詩(ポエジイ)によって意味を形成」したのである。この実験はあまりに厳しく従来の詩の概念を破壊してしまったので、我が国では不当に過少評価されてきたが、逆に外国では多くのすぐれた理解者に出会った。北園克衛の世界。それは説明ぬきの感覚に、いきなり飛躍する表象や象徴にみちみちている。」――清水俊彦

『白のアルバム』から『黒い火』『真昼のレモン』へ、そして――。国際的な前衛芸術運動と並走し、つねに新鮮な詩的実験を展開しつづけた詩人のエッセンス。
解説=篠田一士 藤富保男

〇同じ著者によって
『記号説1924-1941』新装版
『単調な空間1949-1978』新装版
〇関連書籍
ジョン・ソルト/田口哲也監訳『北園克衛の詩と詩学――意味のタペストリーを細断する』
金澤一志『北園克衛の詩』

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0808-7
1981年6月第1刷 2024年9月第5刷

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現代詩文庫『続・白石かずこ詩集』新装重版出来!

2024年10月02日

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地球に漕ぎだす詩のユリシーズ

犬の方が ハピーである
なまじ 思想の帽子はなく
ユートピアなどという本は知らない
時たちの中で
いまも 男たちの精液に濡れ
ペニスのほむらにやかれながら
ラリッて 濡れつづけ
眠りから さめることのできない
弱い よい魂がある
(「聖なる淫者の季節」第七章)


「僕は白石さんの詩はとても好きですね。万葉の額田王の次だと思っている。その次が与謝野晶子だと思っているの。というぐらい白石さんの詩は好きだけれどもね、ほんとうは白石さんという人は、小説を書く人だと思う。」――深沢七郎

疾走すること、音楽すること、流動すること。即興演奏のような振幅を含んだ長篇詩の深い呼吸とリズム。H氏賞受賞『聖なる淫者の季節』全篇ほか、展開期の果敢な作品群を収める。
解説=飯島耕一 吉岡実 飯吉光夫

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0892-6
1994年9月第1刷 2024年9月第3刷

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現代詩文庫『白石かずこ詩集』新装重版出来!

2024年10月02日

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時にとって今はたえまない結婚である

神は なくてもある
また 彼はユーモラスである ので
ある種の人間に似ている

このたびは
巨大な 男根を連れて わたしの夢の地平線
の上を
ピクニックにやってきたのだ
ときに
スミコの誕生日に何もやらなかったことは
悔やまれる
(「男根(penis)」)


「白石かずこの詩には、詩におけるMONOLOGの概念さえも変革せずにはおかない表現をもっている。形象文字の記号から構造されたものだけではなく、音声言語としての表現にまで緻密さのみられる、国際的に誇れる詩人である。」――村井志摩子

モダニズムの出発、『卵のふる街』から、ビートとジャズの巨きなうねり、『今晩は荒模様』へ。新たな生のありようを切り拓いた詩人のダイナミックにして豊穣なコトバたち。
解説=高橋睦郎 森茉莉

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0727-1
1969年11月第1刷 2024年9月第18刷

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