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宮部修『父、高祖保の声を探して』

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昭和前期の抒情詩 いま ここに


蛾は
あのやうに狂ほしく
とびこんでゆくではないか
みづからを灼く 火むらのただなかに
わたしは
みづからを灼く たたかひの
火むらのただなかへ とびこんでゆく
あゝ 一匹の蛾だ
(「征旅」)

「わたしは「征旅」の中に父の唯一の声を聞き出すことが出来た。これが本書の執筆動機なのだ。わたしはあえて「征旅」を父の辞世の詩と判定した。」(「おわりに」)


堀口大學に『雪』の詩人と評され、ビルマに戦没した高祖保。その抒情詩の世界を元新聞記者の85歳の息子が精緻に辿る。出征直前の詩「征旅」に響く声とは――肉親ならではの渾身の評伝。


目次

はじめに
第一章 詩人、高祖保の肖像
幼年時代の苦悩/ゆるぎない人間関係/編集者魂/詩の限界はどこまで広がるか
第二章 父の声
第一詩集『希臘十字』 モダニズムにとりつかれて/第二詩集『禽のゐる五分間写生』 詩に俳味をとりこむ/第三詩集『雪』 「礼儀正しさ」/第四詩集『夜のひきあけ』 戦火のもと誕生した生命/追悼全詩集『高祖保詩集』収録の未刊詩集『独楽』 父の詩の新展開/辞世の詩 達観の八行、強烈なリズム
おわりに
年譜

1980円(税込)
四六判並製・200頁
ISBN978-4-7837-3830-5
2023年8月刊

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