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現代詩文庫『尾形亀之助詩集』新装重版出来!

2024年10月17日

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自分自身に即して

立ちあがることのものぐさか何時までも床の上に坐つてゐた。便所の蠅(大きな戦争がぼつ発してゐることは便所の蠅のやうなものでも知つてゐる)にとがめられるわけもないが、一日寝てゐたことの面はゆく、私は庭へ出て用を達した。
(「大キナ戦」)


「この世の中で、自分をまるごと自分自身だけに即して生かして行くためには、無為を貫徹する以外にはなく、自分自身に即して生きるということが人間の真実なのだということを、亀之助は考え実行したのであろう。亀之助の詩を読んで打たれるのはその真実に向って譲るところなく生きて行くものの心が伝わってくるからなのだ。詩集『雨になる朝』あたりから、その考えはだんだんとはっきりしたものとなり、……その後死ぬまでの詩によって更にその思想が亀之助の身体に実現すると見ることが出来るように思う。」――鈴木志郎康

「詩を書く人以外の何者でもなかった」尾形亀之助。『色ガラスの街』『雨になる朝』『障子のある家』の詩集3冊全篇、および未刊詩篇を収録。
解説=別役実 鈴木志郎康

〇関連書籍
福田拓也『尾形亀之助の詩――大正的「解体」から昭和的「無」へ』

1870円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0790-5
1975年6月第1刷 2024年9月第7刷

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