詩の本の思潮社

ホーム新刊情報月別リスト > アーカイブ
新刊情報

現代詩文庫『原田勇男詩集』


現代への救済の希求


見つけることができるだろうか
飛ばない鳥をひそかに飛ばし
灰の中から炎の樹を生み出す仕方を
(「炎の樹」)


「抒情のしなやかで美しい表現に籠めた病める現代への救済の希求。その人間性の根源に立つ《炎の樹》が巨きな篝火のごとく全作品を照らしている」(尾花仙朔)。人はどのようにいのちを燃やして生きるのか。正面からの問いに応える、魂の歌を求めて。『北の旅』にはじまる、詩の希求の長い道程を辿る。
解説=八木忠栄、中上哲夫、野沢啓、秋亜綺羅

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1012-7
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

現代詩文庫『米屋猛詩集』


生と死を架橋する祈り


父の血
兄の血
たしかにぼくは
継いでいる
猟はからっきしだめだったが
いつしか探すめつきになっていた
狙う姿勢をとっていた
(「家系」)


「速度だ。米屋猛は速度だと思う。夥しい固有名詞とともに、北の大地の日常を縦横に速度が遂行されているのだ。(…)エロスとタナトスとを架橋する祈りの実践のために」(野村喜和夫)。土俗、血縁、因襲という重いモチーフを軽やかなリズムで抉りだす、愛と痛みの言葉たち。戦後の隠れた名詩集『家系』ほか収録。
解説=吉田文憲、宗左近、斎藤勇一

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1011-0
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

現代詩文庫『渡辺玄英詩集』


セカイの浮遊感


火曜日になったら
戦争に行く
野ウサギがはねる荒野の中を
画面の野ウサギにカーソルをあわせたら
引き金を、ひいてくらさい
(「火曜日になったら戦争に行く」)


「仮想高校生としてコンビニを発見した渡辺は、その仮想のまま無の探求をつづけるべく運命づけられている」(高橋睦郎)。アニメ、ゲーム、コンビニ、ケータイ……。現代的なガジェットを作動させ、並行世界から幾つもの〈ワタナベ〉がやってくる。時代の孤独感、漂流感を、乾いた文体で映しとる。
解説=北川透、城戸朱理、和合亮一、河野聡子

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1010-3
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

板垣憲司『落日の駅、水際で呼ぶ人』


第53回現代詩手帖賞


完熟して越えるうねりの中で露光する
光を開けないで水のページに呼び起こす
蒼穹の脈を劃って、
 あらわれてくるから波が動き始めた
(「落日の駅、水際で呼ぶ人」)

「生と死の重なりあう場所がもっている、永遠性に繋がることの悲しみ、寂しさが、遥かな距離をつくってざわめき続けている」(中本道代)。「この一冊にあるのは、「教える(独白する)=聞く」といった静かな一シーンを、海岸線のように永く引き伸ばしている「時間の部屋」なのだ」(中尾太一)。
2015年度現代詩手帖賞詩人による、第1詩集。

本体2200円+税
A5判変型上製・98頁
ISBN978-4-7837-3548-9
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

谷元益男『滑車』


第13回詩歌句随筆評論大賞 詩部門優秀賞受賞!


ひとは亡くなると
湿ったワラの中で
年をとっていく
ほそくつながれた
人の世は
ムシロの裏にある
(「藁」)

身近な動植物や自然の盛衰と人間の営みとを重ね合わせながら、冷静で柔らかな視線を投げかける。第13回小野十三郎賞受賞詩人による、3年ぶりの新詩集。

本体2300円+税
A5判上製・108頁
ISBN978-4-7837-3545-8
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

伊藤浩子『未知への逸脱のために』


第8回鮎川信夫賞受賞!


やがておとずれる一切を予感し
くろかみは償いはじめる
(「日々の痕跡」)

「すべてを読み終わってもう一度、ここに帰ってきたとき、この詩人が再帰ということをイエスの復活にも似た事柄として受け止めていることに気づくだろう」(神山睦美)。
「女という無限の意味を発生させる装置――まさに「MOTHER MACHINE」――について、なお伊藤浩子という稀な才能を追尾してみなければならぬ」(野村喜和夫)。
声なき声、形なき言葉が、孤独や沈黙の闇をくぐりぬけ、いまあらたな存在として再帰する。詩と散文のあわいで無限に枝分かれしつづける20篇。装幀=中島浩

本体2800円+税
A5判上製・166頁
ISBN978-4-7837-3546-5
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

水田宗子『影と花と』


化石の明かさぬ永遠に


何時でも最初で一度きり
一億年も瓦礫の中で
生き残った記憶
(「花の化石――空へ」)

花は命の終わりに向かって咲き誇るが、その営みは化石のように密やかに大地に残り続ける。追いかけても、影のように摑みきれないその遥かな時間の循環こそに、詩人は命の激しい光耀を見出していく。

本体2400円+税
A5判上製・104頁
ISBN978-4-7837-3547-2
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

柏木勇一『ことづて』


生と死のことづて


切断は喪失ではない
薔薇のことづてをしるしたこの手首を見よ
緑と淡紅色の萌芽のために お前を切ったこの青白い手を
(「薔薇の殺意」)

「沈黙を言語で表せないか考えている。会話の中の沈黙を受け入れることで人を救うことができた」(あとがき)。五感をとぎすませた詩人は、目の前の自然の風景や記憶のなかから、人生の機微を描写する。生とはなにか、死とはなにか。7年ぶりの新詩集。

本体2300円+税
A5判上製・102頁
ISBN978-4-7837-3543-4
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

齋藤恵美子『空閑風景』


第47回高見順賞受賞!


部屋と世界が、触れあえぬまま重なるときの、余剰部分
そこで、外皮から朽ちるとして
最後に、わたくしに、何がひかるか
(「孤影」)

言葉のまなざしに現れる、もっとも遠い一点まで。空洞を鳴らす黙音のふるえ、詩23篇。写真=ひさの

本体2400円+税
菊判変型上製・106頁
ISBN978-4-7837-3534-2
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

大橋政人『まどさんへの質問』


第12回三好達治賞受賞!


(花とは
(何が咲いているのか

その夏から私は
大きな問いに
飲み込まれたままだ
(「とんがり帽子」)

「まど・みちおと現代詩の接点に立つ大橋さんは、常民の言葉で詩を書く難しさを知っている」(谷川俊太郎)。見つめるほどに、全ては〈超現実〉へと変容していく。その変容のありのままを、ありのままに記録した24の詩篇。

本体2400円+税
A5判変型上製・114頁
ISBN978-4-7837-3541-0
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

現代詩文庫『有馬敲詩集』


フォークソングの歌詞から生活語詩の提唱へ


いまは隠喩の世紀末だ
もの悲しい病菌を防ぐための薄いゴム袋さえ
けっして言葉をにごして伝達するな
(「世紀末の隠喩」)


「言葉あそびで体をかわすかと思えば、『生活語詩集』などと斬り込んで来る」(高石ともや)。「値上げ」の曲で知られる「変化」等、代表作をはじめ、ときにユーモラスに、ときに辛辣に時代を見つめ、発信し続ける著者の近年の作品までを収録。
解説=片桐ユズル、倉橋健一、水内喜久雄

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1003-5
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

現代詩文庫『続・高良留美子詩集』


批評と詩の両輪で


その崖下の道を通るとき
彼女はいつも
十歳の少女に戻っていなければならない
(「崖下の道」)


「内面に向かうモダニズムの感性とアジア・アフリカと広がる連帯感、女性なるものの根源へ遡る想像力」(水田宗子)。『風の夜』(丸山豊記念現代詩賞)、『仮面の声』(現代詩人賞)、『神々の詩』、『崖下の道』他から、フェミニズム批評と現代詩の一線で活動してきた著者の80年代以降の作品を中心に集成。
解説=大岡信、麻生直子、中村純

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1002-8
2016年10月刊

本のご購入はこちらから



 

井川博年『夢去りぬ』


第24回丸山薫賞受賞!


ススキの尾っぽを振りながら
うたいながらとび跳ねている
わたしは明るい帰郷者だ。
(「明るい帰郷者」)

「すべては過ぎ去って行く。犬は吠える。隊商(キャラバン)は続く。わが愛する人たちよ」(あとがき)。綱渡りの「人生サーカス」=詩人道は、時にもの哀しく、時に懐かしい笑いに包まれる。そして、その「すべては夢であったよう――」。装画=辻憲

本体2200円+税
四六判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3542-7
2016年10月刊

本のご購入はこちらから