詩の本の思潮社

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阿部嘉昭『束』


「詩」の結界


きえるような雪ふりさえ
みあげる眼にはほそながく
かたちのたりなさが糸
になってしまうひととして
ひたすら白い息をはいた
つるをくみしきながら
(「幅」)

漢字1文字のタイトル、20行の定型、鮎川信夫賞受賞『換喩詩学』で自らの詩論を展開した詩人が、磨き上げた詩法で「詩」の結界をつくりあげる。昨年の3冊同時刊行詩集に続く新境地の新詩集。装幀=中島浩

*この詩集はオンデマンド出版で、アマゾンのサイト(Amazon.co.jp)のみでの販売になります。書店および思潮社営業部での取り扱いはありません。ご注文ごとに印刷製本し、24時間以内に発送、2~3日でお手元にお届けします。送料、印刷手数料等はかかりません。お問合せ=03-3267-8141(思潮社編集部)

本体2000円+税
オンデマンド版(ペーパーバック)・158頁
ISBN978-4-7837-3509-0
2015年10月刊

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現代詩文庫『國峰照子詩集』


コトバの祭典


たった百年が
なんぞ死を急ぐことあらむ
なんぞ生を足搔くことあらむ
(「オオサンショウウオ」)


「國峰さんのイマジネーションのゴージャスなこと、その飛躍とコトバ遊びの妙なる曲芸。うまさ、などと生ぬるい表現ではたりません。何夜でありましょうか、あまりに美しいイメージの劇場の登場人物のセリフ、かたちに心うたれ、かなしくなるほど感動しました」(白石かずこ)。第1詩集『玉ねぎのBlack Box』から『流れつきしものの』『開演前』『ドン・キホーテ異聞』ほか全6冊からエッセンスを凝縮。誰にも真似できない、実験精神と遊び心とペーソスと。解説=藤富保男、奥成達、新井豊美、高橋睦郎、中川千春

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0999-2
2015年10月刊

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現代詩文庫『田中郁子詩集』


不可視の詩の領域へ


ススキが銀色になびく季節
わたしはちちやははから生まれたのでした
けれども ちちやはははわたしから生まれたのでした
やはりススキが銀色にひかる季節でした
高い山のすそ野でした
(「ナナカマドの歌」)


「田中郁子の詩は語り難い。たたずまいは地味なのに、底のほうに渋く華やかな弾力がある。岡山の自然がこの人の言葉を礎となって支えているが、そこから流れ湧いてくるのは霧のような哀しみである」(小池昌代)。父祖から継いだ山間の地から、生と死が白く輝く場所へ架橋する。代表詩集『紫紺のまつり』『ナナカマドの歌』『雪物語』全篇収録。戦後の苦難から辿りついた人間と自然の涯にある聖性。解説=粕谷栄市、新井豊美、岡島弘子、水島英己、新延拳

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0997-8
2015年10月刊

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石田瑞穂『耳の笹舟』


第54回藤村記念歴程賞受賞!


残響から残響へ 肉眼は旅した
なんだろう あの声の火山

無数の指輪がぱっくりあいた
傷口みたく光を捕らえ
波のした一面で堅く口をひらいて
(「見えない波」)


「東京都心での仕事と生活につかれたのか、心因性の難聴を患ってしまった。以来、弱まった耳は、聴くこと、聴こえてくる世界の切実さを教えてくれている」(あとがき)。生の鼓動を聞きとどける、最新17篇。『まどろみの島』(H氏賞)に次ぐ、待望の第3詩集。装幀=奥定泰之

本体2,400円+税
A5判変型上製・130頁
ISBN978-4-7837-3505-2
2015年10月刊

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宮岡絵美『境界の向こう』


聞こえますか ここは地球


システムワードは故障中
留まりゆく不安は
私たちに
先へ進めと命令する
(「パスワードとして、未来」)


「「太陽系のなかのひとりの子ども」が透明なことばを生みだした。脳のどこかが共鳴する。数学や物理学の用語が、実はとても詩的であることを知っている人たちは確実にいる。できるかぎりシンプルな数式で世界を説明したいという欲望と、ざわめきをざわめきのまま映しだしたいという欲望。硬質なのにやわらかい、鉱石の断片を思わせる肌触り。感度が高すぎるということは、生きやすさにはつながらない。抱きしめてあげたいような、ほうっておいてあげたいような、そんな気持ちになる」(宮地尚子)。文理を架橋する、清新な第2詩集。

本体2,200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3476-5
2015年10月刊

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田原『夢の蛇』


二つの岸辺から


太陽は時の苔で滑って転んで沈んでゆく
大地をきれいに染めた黄昏は闇の幕を下ろす
巣に帰る鳥たちが翼を休めて
明日もっと空の重さを知るように
(「四行連詩」)


「田原は世界に呼びかける詩人。世界に働きかけ、世界を読み替える、その比喩の力は強烈だ。/田原は自分の口にしたことに自ら驚き、心を痛め、しかし、そこから滋養を得て、ついには歓喜に至る。彼にとって、言葉は他者。ひとりでに生まれ出てくるもの。彼は言葉を支配せず、所有しない。こだわらない。大事なのは、言葉が流れ出すことを可能にする、彼の生命の仕組み。詩とは田原にとって祭儀の聖地なのだ」(阿部公彦)。『石の記憶』(H氏賞)から6年、待望の第3詩集。装幀=芦澤泰偉

本体2,200円+税
A5判変型上製・130頁
ISBN978-4-7837-3499-4
2015年10月刊

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平田俊子『戯れ言の自由』


人のこころを慰めるのは
花ばかりではない
油断すると指を傷つける
小さく危険なものにさえ
人はこころを遊ばせる
(「美しいホッチキスの針」)


お湯はいつでも沸かしておこうよ、誰も帰ってこない日も――。不確かな日々が求める、こころを少し明るくするもの。日本語という小さな舟がひとの思いを運んでいく。鋭くもしなやかに、全身でともすことばの灯り、詩28篇。装幀=毛利一枝。好評重版。

本体2,300円+税
A5判変型上製・144頁
ISBN978-4-7837-3500-7
2015年10月第1刷 2016年8月第2刷

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蜂飼耳『顔をあらう水』


第7回鮎川信夫賞受賞!


構図のみじろぎ、
着ているものを脱ぎながら
失われた眠りの
入り口へある日、踏み出す
(「骨格散歩」)


意味と音韻の呼び交わす複眼のことばが、時間/空間をおおきく振れていく。新世代の旗手がついに放つ、8年ぶりの新詩集。未知の場を照らしだす、渾身の試行28篇。好評重版!装幀=奥定泰之

本体2,200円+税
四六判上製・130頁
ISBN978-4-7837-3498-7
2015年10月第1刷 2017年2月第2刷



 

日和聡子『砂文』


第24回萩原朔太郎賞受賞!


いつしかなくしたものが わたしのいなくなったあとにも
誰かに 見つめられている  今も。
(「旅唄」)


出会ってしまったら、もう戻れない。移り変わる時のなかで、切り拓き、刻み、均し、掘り、崩し、築き、壊しては作り、進んでいく。意志と呪力の痕跡を記す、新詩集。好評重版!装幀=菊地信義

本体2,200円+税
A5判変型上製・114頁
ISBN978-4-7837-3501-4
2015年10月第1刷 2017年2月第2刷

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布川鴇『沈む永遠 始まりにむかって』


根源を探りながら


羽毛の先端からやわらかな光がこぼれ
満月の夜に眠り続ける鳥
豆粒ほどの言葉はこの無心に包含され
幾層にも重なった記憶のひだを
ふりほどいていく
(「時の縁から」)


たましいになった あなた
もう戻れない 道を行く

生まれない文字 つむぎながら
残酷さと 日常の縁で
――高貝弘也(『沈む永遠 始まりにむかって』のために)
幾時代にもつづく世界のカタストロフィー。その戦慄のただなかで、見えない恐怖に向かって祈るように書く。14年ぶりの新詩集。装幀=中島浩

本体2,600円+税
菊判変型上製・96頁
ISBN978-4-7837-3506-9
2015年10月刊

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清岳こう『九十九風』


時代へと立ちのぼる


でも 3パーセントのすき間 懐古主義の甘い夢が狙っているのに気がつく
あわよくば 骨の髄にまでくらいつこうと
(「3パーセント」)


天狗風、地獄の業の風に暴風(あからしまかぜ)。人を翻弄し世を駆けめぐる旋風は、いつでも私事から歴史のうねりへと吹きあげる。生を見つめ、時代を比喩的に立ち上げる51篇。

本体2,400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3507-6
2015年10月刊

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岩佐なを『パンと、』


第54回藤村記念歴程賞受賞!


今日も買ってしまった
いとしいコロネ
紙袋にひそませて
晩秋のうら悲しい公園を訪ねる
(「コロネ」)


所詮代用食と言われたむかし。もう米だけにかたよりますまい。パンを齧って、詩を想う。詩を齧って、パンを想う――。9つのパンをめぐる幻影、その他。装画=著者

本体2,400円+税
B6判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3494-9
2015年10月刊

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佐峰存『対岸へと』


越境の都市景


湾が広がっている せまってくる
遠ざかり 黒々と鮮やかに
透明に 増え続ける
生態の柔らかな連鎖は生臭く
鋼鉄の空白に 食い込んでいく
(「連鎖」)


「ミクロとマクロ、有機と無機が同一の空間のなかで組み込みを果たし、じつに、じつに見慣れない詩の景色が展開している」(野村喜和夫)、「それはディストピア、ではない。必然としての未来であり、彼の「指」はかなしみもなく、乾いた詩的真実だけをぼくらの待つ「対岸へと」つづるだろう」(石田瑞穂)。生成と分解を続ける、半透明にさらされた都市の器官。境界のトポスから発語する鮮烈な第1詩集。装画=引地渉

本体2,400円+税
A5判上製・110頁
ISBN978-4-7837-3493-2
2015年10月刊

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森本孝徳『零余子回報』


第66回H氏賞受賞!


たまさかには、茫乎屋が綾とりとして魅まれ、紀伝体で田をぬく千鳥足になる。だからぼくは手真似で食をつくる。本で読むように疲れは餅の擬にも滲む。消入りそうな風采で骨だけを遺す一寸試だ。
(「かるたぜ」)


「「発音」と「語意」に関わる読むことの運動に軋みを与え、そのことによって「抒情」は像としての輪郭を奪われる」(稲川方人)、「詩人が、ひとりでも踊る覚悟で、己の極みとして歩行を進めることは、単純化された言葉が支える社会へのアンチテーゼの他ないだろう」(藤原安紀子)。現代詩手帖賞受賞から2年、未見の領野をひらく第1詩集。装画=若村大樹

本体2,000円+税
A5判並製・88頁
ISBN978-4-7837-3504-5
2015年10月刊

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田中清光『言葉から根源へ』


自然の光と闇に


茫々として知れぬ人の世の奥の院に
花を花として見
その行く手に在るものまでを見てしまう
眼よ
(「眼」)


裂けてゆく現実、漂いつづけるわれら人間――。見つめ問いかける、はてしない営為のさきに現れるもの。生命の境界をたどりその深みに降りてゆく、未踏の詩26篇。装幀=髙林昭太

本体2,800円+税
菊判上製・124頁
ISBN978-4-7837-3496-3
2015年10月刊

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尾花仙朔『晩鐘』


第34回現代詩人賞受賞!


――詩人とは
言霊の在り処をひたすら探し求めてゆく
孤独な漕役囚なのかもしれない
(「命終の日に」)


「人類の歴史の過去と現代を俯瞰し、未来を予見する力を培うひとりの物書きが生きた時代の証を遺したい、と思い本詩集を編みました」(あとがき)。〈個〉と〈世界〉との関わりを主題に端正な詩を紡ぎ続ける詩人が、米寿を迎える現在の地点から、奥深い知識と多彩な詩的表現を駆使し、心ならずもこの世を去った多くの死者たちに捧げる救済と鎮魂の祈り。

本体2,800円+税
A5判上製・134頁
ISBN978-4-7837-3502-1
2015年10月刊

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大石ともみ『めぐり水のとよのあかり』


宙にひびく一編の生を


めぐり水のとよのあかり
日々の岸辺にふりくる
遠近の悲喜は
天からの遣り水
この日々こそ
曲水の宴
(「めぐり水」)


もう会えないひと、まだ名付けられていないものへ――。時の流れにたゆたう、遠く近くの生の明滅。世界のしじまに耳を澄まし、ひとひらの言の葉のあかりを灯す。15年ぶり、待望の第4詩集。装幀=三澤太樹

本体2,400円+税
A5判上製・110頁
ISBN978-4-7837-3503-8
2015年10月刊

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