詩の本の思潮社

ホーム新刊情報月別リスト > アーカイブ
新刊情報

植木信子『雲をつかむひと』

null


いのり うた わたる


雲が白く流れていく
草に座り足を組めば
ティ ティ ティ ティ ティ ティ
鳥が鳴いている
光が眩しいほどに差してくる
(「光が眩しいほどに」)

思念の悲しみのふちから、幸福や希望をもとめるとき、どのようなほほえみを浮かべていたか。神話やいのり、地層深くに刻まれたうたに耳をすまし、言葉の光を投げかける。

本体2,200円+税
A5判並製・104頁
ISBN978-4-7837-3325-6
2012年9月刊

本のご購入はこちらから

 

四元康祐『日本語の虜囚』

null


第4回鮎川信夫賞受賞!


ママ、見て、ねちゃねちゃしてきたよ、糸引いてるよ、変な匂いもするよ
そうよ坊や、日本語はね、膠着語といって粘着性が高いのよ
かき混ぜなさい、納豆のようにそしてまたアンドロメダ星雲のように
(「日本語の虜囚」)

「言語を手綱に絶対無分節というあの混沌たる全体性に到ろうとするならば、少なくとも現在の私にとって、その言語は絶対に日本語でなくてはならない」(「あとがきに代えて」)。海外に暮らして25年。何十カ国もの言語で詩をやりとりしてきた著者が突き当たった事態とは? どろどろの日本語素の向こうへ、新たなる挑戦。実践五十音パズル付。書=伊藤比呂美、装幀=奥定泰之

本体2,400円+税
四六判上製・152頁
ISBN978-4-7837-3304-1
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

華原倫子『樹霊』

null


静かに、不穏に


蝉が来て
あああ、と言いながら被っていた笠を脱ぐ
ここはもっとも空の青いところ
公園の百葉箱の前である
(「空蝉」)

風景を詩語が切り裂く。亀裂の向こう側が剝き出される。言葉の森の奥深くへ、吸い込まれていく――。詩23篇と、短歌あるいは一行詩と題された14の連作から成る、異色の第2詩集。

本体2,200円+税
四六判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3303-4
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

荻悦子『影と水音』

null


光さえも


遠退いていた音色が
ふと戻ってくる
木の葉の姿をして
雨に濡れながら
足元に舞い降りてくる
(「雨が木の葉を」)

闇に翳りの繋がりさえ見極めるような凝視と、言葉に言葉を積み重ねていく緊張感。そして、極点で解れ、溢れ出す情感を描く。装画=著者

本体2,300円+税
A5判並製・106頁
ISBN978-4-7837-3313-3
2012年9月刊

本のご購入はこちらから

 

浜江順子『闇の割れ目で』

null


第9回日本詩歌句大賞受賞!


二十一世紀の死臭は城の死体と腸の管のように長い因果関係でもやもや繋がっている。奇妙な逆転のように。二重螺旋の多義性も少し煩わしいだけだが。要塞の断層にさえ絡みつきながら。
(「城には死体があるから」)

「ここに集められているのは、全て、尖鋭な幻視力と逞しい造形力とに支えられた作品群だ。異界(それは同時にこの世界でもあるのだが)の驚異と恐怖と魅惑とを、共にかかえ込んだ、想像力による重厚な私的探究譚・体験記録として、読者の心に、直截に迫って来る。
世に氾濫する「ゆるく」て「ぬるい」詩に、心底からうんざりしている者にとって、この詩集は、まさに一陣の清風と言うべきであろう」(入沢康夫)。カバー作品=井上雅之

本体2,400円+税
A5判上製・122頁
ISBN978-4-7837-3311-9
2012年9月刊

本のご購入はこちらから

 

横木徳久『リスボン日記――寛容をめぐる詩的断想』

null


ポルトガル、魂の故郷


おそらくポルトガル人にとって「寛容」は歴史のなかで育まれてきた大事な精神である。それは願いであるとともに、ポルトガル人が守り続けていかなければならない宿命である。「寛容」こそリスボンという街に最もふさわしい言葉だろう。(あとがき)

この国には戦後の日本が失った何かがある――。東京を発ち、リスボンに移住して6年。下町で一から生活をはじめた著者は、両国の狭間に佇みながら、日々の気づきを批評に深めてゆく。「贋物礼賛」「愛猫日記」などの情趣漂うエッセイ群に、ポルトガル詩を紹介した「現代詩手帖」好評連載を収録。寛容の街リスボンへ、遥かなる誘い。カバー、本文写真=著者

本体2,200円+税
四六判上製・208頁
ISBN978-4-7837-1681-5
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

桑原茂夫『御田八幡絵巻』

null


少年が見た!


焼かれなかった子どもたちと
焼かれてしまった子どもたちが
同じ学校に通っていた
学校はいつもにぎやかだったのである
(「(第二場)序の唄」)

「泣くな桑原! よみがえる一九五〇年代の記憶。桑原茂夫は思春期の感性で時代をかるがると撃ち抜いている。いまを突っ走っている。吠える詩人の魂を見よ!」(嵐山光三郎)。爆音とともに夜空から際限なくばらまかれた焼夷弾に焼き亡ぼされ、ずたずたにされた町を、それでもよみがえらせようとする人びとの思いが熱く交わり、つかの間であれ豊かな時をつくりだした。その渦中にいた少年が、見たもの、感じたことを、ひとつひとつ丹念にひろい出し描き出した、ひと巻きの絵巻が『御田八幡絵巻』だ――この絵巻からは、その後「高度成長」であらためて根こそぎ亡ぼされ、今では「幻」となってしまった、豊かな町のざわめきが聞こえ、いきいきと活動する人びとの表情が見える。まるで、夢の未来社会なのである! カバー画=合田佐和子、装幀=間村俊一

本体2,600円+税
A5判変型並製・224頁
ISBN978-4-7837-3309-6
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『倉田比羽子詩集』

null


原初から現在に亙る《私》探しの旅


――塞がれた耳もとで野面は無情に羽ばたき
  閉じた瞼の下で緑木は成長する
  神のみわざの迷いを混淆する青空に追放して
  私は美しい文章の一行になる
  それから口をあけた自筆の名を破り捨て
  ヌルリ、と
  横っ飛びに一気に舞い降りた
(「「私」に先立つもののために」)

「倉田比羽子の詩的探究は、宇宙大の規模と「時」とを踏みしだいて、果敢に、着実に、遂行されて行くのだ」(入沢康夫)。『幻のRの接点』『群葉』『中間溝』『夏の地名』『カーニバル』『世界の優しい無関心』『種まく人の譬えのある風景』より代表作を収録。繊細かつ大胆果敢な表現の軌跡を浮き彫りにする。インタビュー=瀬尾育生、解説=北川透、佐藤雄一。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0975-6
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『中本道代詩集』

null


遠い時の奥から


水の中に浸された一本の足は
生きることと死ぬことを同時に為しながら
春へと開かれる音楽

透明な硝子にこびりつく苔の
微かな緑
そこにも残されている 生ける少女の瞳
(「蛹」)

「中本氏の詩はいま内生命の原初的な知覚の生み出される現場に立ち会おうとして、その言葉は未知のアナーキーなある豊饒さを孕みつつあるのではなかろうか」(吉田文憲)。『黄道と蛹』『花と死王』(第18回丸山豊現代詩賞)全篇、『春の空き家』『四月の第一日曜日』『ミルキーメイ』『春分』より代表作を厳選。解説=藤原定、北村太郎、吉田文憲、中川千春、岬多可子、鳥居万由美。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0974-9
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『川口晴美詩集』

null


不思議な明るさ 形のない舟


やがておなかの上にもひとつ
わたしは足元からやさしく毛布を被せるみたいに埋められてゆく
川原の石と同じ温度に冷える皮膚
境界はなくなりわけのわからない世界とまじりあうわたしはかたちをなくして
世界のひとかけらになってゆく
わけのわからないこわいものになってゆく
(「サイゴノ空」)

「一度その冷たさと表情の愛らしさの矛盾に触れてしまうと、現代に生きている限り、私たちは川口さんの世界を忘れることができなくなる」(辻井喬)。『水姫』『綺羅のバランス』『デルタ』『液晶区』『ガールフレンド』『ボーイハント』『lives』『EXIT.』『やわらかい檻』『半島の地図』(第10回山本健吉文学賞)、全10冊から今を見据えて編まれる選詩集。解説=鈴木志郎康、野村喜和夫、阿部日奈子、田野倉康一、高原英理。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0973-2
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『松尾真由美詩集』

null


無形の言葉の生誕と拡散


ゆらぐ重心にそなえた指先は
削除と挿入をくりかえし
こうして死者さえ裁断する
いわば無化への記録となって
とおく逸脱をしつらえ
白昼の彩度をみたす
(「あわい流露の野の行方」)

「言葉が言葉を、行が行を引き起し、それらが重層しつつ全体に及んでくる、言葉の純粋な自己運動」(岩成達也)。『密約』(第52回H氏賞)全篇をはじめ、『燭花』『揺濫期』『彩管譜』『睡濫』『不完全協和音』ほか全7冊からエッセンスとなる詩篇を網羅。驚くべき勢いで自身の表現を更新しつづける詩人の全貌。解説=岩成達也、笠井嗣夫、中村鐵太郎、小島きみ子、田野倉康一。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0972-5
2012年8月刊

本のご購入はこちらから

 

高岡修『季語生成』

null


季語とは何か


死者たちのみつづけた夢の虚ろにとまって
おびただしい数の空蝉が
点りつづけている
(「空蝉」)

「俳句の歴史はいくつかの秀れた季語を残した。いつの頃からか、それら一語一語の内包する世界を、俳句ではなく、詩空間として構築したいという強い思いに捉えられた」(あとがき)。自由詩と俳句のはざまで詩語の一閃に賭けてきた死と再生の詩人高岡修が、季語を自由詩のなかに蘇らせる! 装画=北郷萌祥

本体2,400円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3314-0
2012年8月刊

本のご購入はこちらから