現代詩文庫『中本道代詩集』

遠い時の奥から
遠い時の奥から
水の中に浸された一本の足は
生きることと死ぬことを同時に為しながら
春へと開かれる音楽
透明な硝子にこびりつく苔の
微かな緑
そこにも残されている 生ける少女の瞳
(「蛹」)
「中本氏の詩はいま内生命の原初的な知覚の生み出される現場に立ち会おうとして、その言葉は未知のアナーキーなある豊饒さを孕みつつあるのではなかろうか」(吉田文憲)。『黄道と蛹』『花と死王』(第18回丸山豊現代詩賞)全篇、『春の空き家』『四月の第一日曜日』『ミルキーメイ』『春分』より代表作を厳選。解説=藤原定、北村太郎、吉田文憲、中川千春、岬多可子、鳥居万由美。
本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0974-9
2012年8月刊