詩の本の思潮社

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新刊情報

水田宗子『モダニズムと〈戦後女性詩〉の展開』

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女性詩人たちの表現の根源に迫る


詩と批評に関わってきた私は、現代女性詩の、一瞬にして読者の心を直撃する詩ならではの表現力と、同時に、詩人の感性と想像力、思考や意識をフルに動員しながらもお釈迦様の掌のような文化構造に捕われてもいる、個人的な表現であると同時に文化表象でもある、その魅力に触発されることが多かった。(あとがき)

「わたし語り」から自己表象へ、近代から現代にいたるまで女性詩人たちが辿ってきた、ジェンダーの外部への、孤独で果敢な旅路。〈「わたし」という個体〉をキータームに、左川ちか、石垣りん、茨木のり子をはじめ、吉原幸子、高良留美子、白石かずこらの作品を丹念に読み解く、渾身の評論エッセイ。装画=柳澤紀子

本体2,500円+税
四六判上製・220頁
ISBN978-4-7837-1676-1
2012年1月刊

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瀬崎祐『窓都市、水の在りか』

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蛇・境界・エロス


濃い水のなかにはなにかが隠れている 我が身を透かして見せないために あなたの顔を映している あなたの顔が映った水鏡の裏側には 向こうからあなたを凝視しているもう一つの顔が隠れている
(「水鏡についての断片」)

本当の嘘をつくために言葉に真向かえば、身体の奥から暗く湿った水の気配が応える。言葉は捩れる肉体から出発し、水跳ねに足を濡らしながら螺旋状に還っていく――。写真=高吉麟太郎。


著者の言葉

 やっとの思いで書きたいことを描いた作品、を集めて、この詩集を出すことができた。
 詩に描きたいことがあって詩を書く、それはとても自然なことだ。目標が自分でもはっきりと見定められている。そうではなくて、なにかを描きたいわけではないのにとにかく詩を書きたくなるときがある。とにかく詩を書きたい衝動。
 このときはいささか話がややこしくなる。なにを描けばよいのか、自分でもわからない。描きたい衝動そのものを書く、とは異なるし、描きたい衝動についての説明を書く、とも異なる。描く対象のようなものを仮初めにでも自分の中に創りあげ、とにかくそれについて描くふりをする。衝動が探しあてた対象。しかし、描いているのは実はその対象ではない。もっと未分化な時点で書いている。実際にはこれはかなり辛いことでもある。
 そんなとき、おそらく私は自分の内側にある何かを解き放ちたい欲望にかられて、仮初めの対象についての言葉を発しているのだろう。その時点では言葉が道具であるように、対象もまた道具であるだろう。そうして表現されたものが目指すものは、個人的なことがらから可能な限り遠くに離れたところにある。
 そのようにして書かれた私の作品が、読む人にとっても何かを解放する道具になればいいのだがと思う。私の発した言葉が、そんなことをおこなう力のあるものになっていればいいのだがと思う。

本体2,200円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3272-3
2012年1月刊

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現代詩手帖特集版『シモーヌ・ヴェイユ――詩をもつこと』

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〈いま、ここ〉を生き抜くために


[インタビュー]辻井喬「詩と哲学を結ぶために」
[対話]今福龍太+港千尋「戦間期――シモーヌ・ヴェイユ、愛、恩寵」
[シンポジウム]最首悟+川本隆史+生田武志+今村純子「シモーヌ・ヴェイユと〈いま、ここ〉」
[特別掲載]河野信子+十川治江「電子とマリア」
[論考]生田武志、今村純子、奥村大介、河津聖恵、栗田隆子、鳥居万由実、吉田文憲
[翻訳]シモーヌ・ヴェイユ詩選/『初期哲学論文集』(抄)
[資料]主要著作解題/年譜/主要文献一覧

労働者に必要なものは、パンでもバターでもなく美であり、詩である――一九〇九年に生まれ、戦間期の混乱を純粋性を結晶させて生き抜いた哲学者シモーヌ・ヴェイユ、その思想の核心を現在において生きなおすにはどうしたらいいのか。ヴェイユの言葉を血肉化し、それぞれの現場において開花させている執筆者たちによる実践的入門書。責任編集=今村純子

本体1,800円+税
A5判並製・216頁
ISBN978-4-7837-1868-0
2011年12月刊

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藤富保男『詩の窓』

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散文集成


ある日ぼくは動物の漢字をにらんでいた。一つの文字の中に別の動物がかくれている文字、例えば罵声の「罵」は馬が四頭いて騒ぐという意味だろうか、とかタコが章魚だったり、蛸だったりするスリル。そういったおかしさは日本語独特のハプニングである。(「コトバの奥をのぞく」)

詩という文学の一つの形態は、少しずつそれが〈詩〉という在来の概念から離れて、〈詩らしい何か〉という姿になりつつあることは、最も進んだ頭脳をもっていることをためらわずに、人に話しかける自負を持っている人々の間ではもはや普遍的になりつつある。著者30年の散文集成。装幀=山口信博

本体2,500円+税
四六判並製・238頁
ISBN978-4-7837-1673-0
2011年12月刊 品切

 

四元康祐『谷川俊太郎学 言葉vs沈黙』

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「詩論」の新しいかたち


私にとっての「詩」とは、谷川作品の総体に他ならなかった。……谷川作品を対象化することは、「詩」という概念そのものにメスを入れることであり、下手すれば自分で自分を殺すことになりかねない。(あとがき)

沈黙をわたりつづけ、なおも底しれない深さを湛えて流れやまない谷川俊太郎。その半世紀を超える詩業を劈き、「内なる父」としての詩人を解析、分断の彼方に蘇らせる。稠密なまなざし、闊達な言葉さばきで「詩」そのものへと書き進む、渾身の谷川下り。装幀=菊地信義

本体3,000円+税
四六判並製・338頁
ISBN978-4-7837-1672-3
2011年12月刊

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原満三寿『水の穴』

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かれらは還り かれらは往く


水の穴は悪食の口腔のようにかれらをのみこんだ
人はそれを死というのか
死者とともに墜ちてゆく水も死ぬのであろうか
父は時間の罠には はまるまいと
必死に身を引き締めて凝視しつづけたという
(「水の穴」)

詩の胎内からあふれだした水は、時空を超えて、古今東西の漂泊の詩人たち、画家たちの死に様を壮絶に映しだし、譚詩という穴に呑み込んでいく。譚詩集シリーズ、渾身の第三弾!

本体3,200円+税
菊判上製・160頁
ISBN978-4-7837-3282-2
2011年12月刊

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陳克華詩集/三木直大編訳『無明の涙』

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台湾現代詩人シリーズ⑬


ぼくは指を一本拾った。きっと
遠方で禁錮に耐えられない肉体が破裂し
胸圧がひたすら上昇して太陽内部の
水素爆発と同じレベルに達したのだ。指一本で
大地に何を書き残せるだろう?
ぼくはついそれを舐め、唇と指の間に存在する
永遠の快楽を感じた
(「ぼくは頭を一個拾った」)

きみは無性生殖技術の祭司なのか、それとも生贄なのか? しかしきみは公然と法を犯すようにぼくを愛している、まるでUFOのように――セクシャル・マイノリティとして挑発的な作品を発表する一方で、深く内省的に自己を見つめる。いま台湾でもっとも刺激的な詩人の衝撃の一巻選集。

本体2,500円+税
四六判並製・218頁
ISBN978-4-7837-2897-9
2011年12月刊



 

杜国清詩集/池上貞子編訳『ギリシャ神弦曲』

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台湾現代詩人シリーズ⑫


詩人の心 霊なる鐘の音が
幽玄な構想にこだまする
洗練された言語が 撃ち出す
ひと言ひと言は 鐘の音の詩
(「寒山寺」)

詩人の心は、人間世界に落ちた一粒の輝く真珠、俗世に光を放射して、万象をまるく照らす――詩論家として、アメリカに滞在し、台湾現代詩を積極的に海外に紹介してきた詩人が、ひとりの「美を尋ね求める旅人」として、官能的に謳いあげる詩的宇宙の全貌。詩と詩論の稀有なる融合。

本体2,500円+税
四六判並製・210頁
ISBN978-4-7837-2896-2
2011年12月刊



 

洛夫詩集/松浦恆雄編訳『禅の味』

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台湾現代詩人シリーズ⑪


大根を食べ
青いげっぷをした
ニガウリを食べて
空っぽのげっぷをした
語録を食べてすっぱいすっぱいげっぷをした
(「時間に致す」)

橋の上からひとり流水に花びらをまいていると、魚が踊り上がって、空中に3分の1秒とどまった。そのとき、あなたはどこにいたのだろうか――50年代から今日に至るまで、瘂弦と並び台湾モダニズム詩人の双璧として、台湾詩を牽引してきた詩人の、半世紀を越える詩業を一望する。

本体2,500円+税
四六判並製・228頁
ISBN978-4-7837-2895-5
2011年12月刊

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ジョン・ミルトン/佐野弘子訳『劇詩 闘士サムソン』

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英国詩の高峰、鏤骨の新訳!


シェイクスピアと英国二大詩人の栄誉を分けるミルトンを、私たちはあまりにも敬して遠ざけてはいないか。とくに後期の傑作『劇詩 闘士サムソン』は、ガザを舞台にイスラエル人指導者の自爆テロを描き、倒立した意味ですぐれて現在的といえる。佐野弘子さんの詳細な註釈を付した鏤骨の新訳を機会に、エリオット以下の英国現代詩の根を辿ることは、混迷を深める今日、緊急に必要なことではなかろうか。
―――高橋睦郎

旧約聖書「士師記」のサムソンとデリラの物語は、文学・美術・音楽・映画などで数多く取り上げられて有名だが、実は謎に満ちている。17世紀英国の叙事詩『失楽園』の詩人ミルトンは、この物語をギリシア悲劇の様式に倣った劇詩として創作した。そこにはかつて天下無双の怪力を誇った英雄の姿はなく、妖艶な女性の魅力に負けた結果、敵方に囚われ、視力を奪われ、労役を科せられながら過去を内省して苦闘する人間の姿が描かれている。サムソンと来訪者や合唱隊との緊迫した対話を経て最後の場面には、心の静けさを授け、激情をすべて鎮めるカタルシスがある。

本体2,200円+税
四六判並製・176頁
ISBN978-4-7837-2894-8
2011年12月刊



 

ゲーリー・スナイダー/重松宗育・原成吉訳『新版 野性の実践』

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ディープ・エコロジーの古典的名著!


文明のサバイバルなどといった次元ではなく、もっと本質的な、精神と魂の次元の話なのだ。人間は、自分たちの魂を失ってしまう危険に直面しているのだ。

ヒア、ナウ、マイセルフ――「場所」に生きるヴィジョンを鮮明にして、野性との創造的な共生を提起する21世紀の指針。ディープ・エコロジーの古典的名著に新たな序文を付す。ゲーリー・スナイダー・コレクション第2巻。装幀=奥定泰之

本体3,000円+税
四六判並製・386頁
ISBN978-4-7837-2891-7
2011年12月刊 品切

 

福島泰樹『血と雨の歌』

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死者もまた、思い出の器。


わたなかを漂流しゆくたましいのかなしみふかく哭きわたるべし
学生服に吊られて紫陽花の 窓のむこうに逝きしひとたち
遠いところに戦争が在り父が居りおいでおいでをしている真昼

「70年挽歌宣言」を発して以来、一貫して死者との交流を歌い続けてきた歌人が、60年安保の歳晩敗北死した岸上大作、関東大震災で被災・戦時26歳で逝った若き母、そして西井一夫、小笠原賢二、菱川善夫、立松和平、清水昶ら、時代を共に疾駆してきた死者たちに言問う。震災以後、記憶の再生は可能か。最新エッセー「追憶の震災記」を収録。装幀=間村俊一、写真=西村多美子

本体2,600円+税
A5判上製・168頁
ISBN978-4-7837-3279-2
2011年12月刊