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ジョン・ミルトン/佐野弘子訳『劇詩 闘士サムソン』

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英国詩の高峰、鏤骨の新訳!


シェイクスピアと英国二大詩人の栄誉を分けるミルトンを、私たちはあまりにも敬して遠ざけてはいないか。とくに後期の傑作『劇詩 闘士サムソン』は、ガザを舞台にイスラエル人指導者の自爆テロを描き、倒立した意味ですぐれて現在的といえる。佐野弘子さんの詳細な註釈を付した鏤骨の新訳を機会に、エリオット以下の英国現代詩の根を辿ることは、混迷を深める今日、緊急に必要なことではなかろうか。
―――高橋睦郎

旧約聖書「士師記」のサムソンとデリラの物語は、文学・美術・音楽・映画などで数多く取り上げられて有名だが、実は謎に満ちている。17世紀英国の叙事詩『失楽園』の詩人ミルトンは、この物語をギリシア悲劇の様式に倣った劇詩として創作した。そこにはかつて天下無双の怪力を誇った英雄の姿はなく、妖艶な女性の魅力に負けた結果、敵方に囚われ、視力を奪われ、労役を科せられながら過去を内省して苦闘する人間の姿が描かれている。サムソンと来訪者や合唱隊との緊迫した対話を経て最後の場面には、心の静けさを授け、激情をすべて鎮めるカタルシスがある。

本体2,200円+税
四六判並製・176頁
ISBN978-4-7837-2894-8
2011年12月刊