詩の本の思潮社

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渡辺武信『移動祝祭日――『凶区』へ、そして『凶区』から』

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60年代の詩的青春


“50年代詩人”は〈まだ見るべきものがたくさんあった〉ゆえに感官の全面的肯定から出発したのだが、私たちはそれらに憧れを抱きつつ詩を書きはじめたものの、60年6月と遭遇することで何かを〈見てしまった〉のだ。これは荒地の詩人たちが〈見てしまった〉ものとは違うが、世代的・宿命的なものである点で共通性もあろう。それは “詩の不可能性”でもあり、左翼神話の崩壊でもあり、戦後民主主義の限界の自覚でもあるという意味で政治性と文学性が絡み合った何かである。(「第9章 60年6月とは何であったか」)


1960年から68年へ、反安保闘争から大学闘争へと続く時代、文化の尖端を担ったのは詩誌『凶区』だった。天沢退二郎、菅谷規矩雄、鈴木志郎康らが切り拓く60年代詩というラディカル。当事者である著者が、前史の「暴走」「×(バッテン)」をふくめ、逸楽と苦痛の季節を生きる若い詩人たちを描く。豊富な資料と共に可能性を問い直す画期的労作!

本体3,800円+税
A5判上製・382頁
ISBN978-4-7837-1658-7
2010年11月刊

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李承淳『そのように静かに蹲っている』

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新たな夜明けのために


言葉が 言葉が
奥へと 奥へと
飲み込まれ
はじけ出ずに
消え
そうして
醸し出される沈黙
(「愛は」)


詩人として、音楽家として、日本と韓国の文化の懸け橋となってきた著者が、深い祈りをこめて紡ぎだす29篇の調べ。韓国でも高い評価を受けてきた詩人の4冊目の日本語詩集。

本体2,500円+税
A5判上製・130頁
ISBN978-4-7837-3219-8
2010年10月刊

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ジョン・ソルト/田口哲也監訳『北園克衛の詩と詩学――意味のタペストリーを細断する』

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アメリカ人文学者の渾身のライフワーク


本書は、はなばなしい「問題児」、日本のアヴァンギャルド(前衛)の指導者であった北園克衛の生涯、詩、詩論についての検証である。北園の活動の時期はちょうど二十世紀の真中で、国際的な表現で書かれた詩の世界に消しがたい跡を残している。(「序」より)


時制を超えて煌めきを放つ北園克衛――。「VOU」に拠り、アヴァンギャルドの突端にあり続けたその営為に、厳密なテキスト検証と関係者への夥しいインタビューを通して接近する。戦前戦後そして戦中をもつぶさに探究した、精緻な詩人論にして空前の日本文化論でもある、畢生の大冊。カバーデザイン=高橋昭八郎。好評重版出来!

本体6,500円+税
A5判上製・520頁
ISBN978-4-7837-1659-4
2010年11月刊

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三角みづ紀『はこいり』

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家出します。


またあたらしいことばを考えている
詩ではないことばを考えている
(「フレットレス」)


三角みづ紀、29歳。詩だけが、残った。どこにも存在できない魂を抱えて、存在しない街を歩き、存在の幻と冷たい接合をくりかえす。「詩人にしかなれない」と思い定めて、新しいコトバの扉が開かれる。

本体2,000円+税
四六判並製・106頁
ISBN978-4-7837-3222-8
2010年10月刊

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高貝弘也『露地の花』

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縫い合わせるように


あるかないかの、あの川原道で。
忘れられない古謡を口遊んだ。子石のうえ
胡坐をくみ………(「生りもの」)


弱さへの、いま考えられるだけの繊細さで、『子葉声韻』(第39回高見順賞)、『露光』(第48回藤村記念歴程賞)と精力的に詩作を続ける詩人の最新詩集。「現代詩手帖」掲載の「かたかげ」「一滴」を収録。装幀=戸谷成雄

本体2,500円+税
A5判上製・88頁
ISBN978-4-7837-3224-2
2010年10月刊



 

井坂洋子『嵐の前』

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死んでいく人よ。


死んでいったひとりの友が半身を無間に転写されながら 振り子で水脈を探しあてている それでこのうねり波うつ道に 新しい水道管が縦横に走っている訳がわかった(「溝」)


井坂洋子の言葉はぬくい。肉体が腐敗する瞬間の発熱のようにぬくい。飲み込むと食道がちりちりと痛む。下腹部が静かに疼く。身体の経験としての言葉の新次元。現代詩はとうとうここまできた――。装画=森育子

本体2,400円+税
A5判上製・138頁
ISBN978-4-7837-3223-5
2010年10月刊

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粕谷栄市『遠い川』

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畏るべき詩心


彼らは、全て、遠い昔の婚礼の日の身支度をしている。自分もその一人だ。固く唇を結んで、私は思う。あの木の舟のところまで、自分も早く行か なければ、と。(「遠い川」)


その日がきて、数多くの老人が、それぞれの道を、遠い川にむかって歩いている。独り、あの舟に乗っていくために――。途方もない、生の淵にのぞむ、反世界 の詩学。孤高の詩人が満を持して放つ、緊密にして馥郁たる、魂の40篇。装幀=奥定泰之

本体2,800円+税
B5判上製・94頁
ISBN978-4-7837-3218-1
2010年10月刊

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広瀬弓『水を撒くティルル』

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「と」「の」「な」、トーノ名?


わたしのまわりを世界は流動している。世界は自由に通過していく。
石も草も起きだした。森のティルルが聞こえている。


イザイホーの朝、わたしは生まれる
(「イザイホーの朝 カベール岬に呼ばれてⅡ」)


「「火」と「水」の出会い。私たちはこの詩集のいたるところに岩の割れ目から水を汲みそして水を撒く「水の女」の所作を目撃するだろう。「水」はあのヒロシマの閃光、燃えあがる「火」を鎮めるために撒かれるのだろうか。そしてまた未知のいのちを蘇らせるために撒かれるのだろうか」(吉田文憲)。装画=辻憲

本体2,400円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3221-1
2010年10月刊

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和田まさ子『わたしの好きな日』

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跳びたいときに跳ぶ


一本のコナラの木の葉がふるえている
森の中のここ
この小さな世界を知っている
それだけで生きている意味はあるだろう
(「この小さな世界」)


「「どこにも着地できない者のために地面はある」という和田さんの言葉を、私は自分のことのように噛みしめている」(新井豊美)。「一面では消極的なものが、確かな欲望の実現へとひっくりかえされる瞬間に、わたしは痛快さをおぼえる」(福間健二)。現実の地上からほんの十センチ浮き上がってみよう。不思議なユーモアを手に、走り続ける第一詩集。装画=フィリップ・ジョルダーノ

本体2,000円+税
四六判並製・98頁
ISBN978-4-7837-3217-4
2010年10月刊

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