詩の本の思潮社

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のもとしゅうへい『通知センター lux poetica⓺』

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日日の灯


身を守るほど簡単なことはないよと
下着のなかのインターネットが言う
(「通知センター」)


いま、目と耳をひらき、確かめ、移動することをふたたび覚え直すかのように。直感と論理のあいだを水や光のようにやわらかく行き来する言葉の新鮮な選択と接続。そして自由。ここでは見慣れたはずの日常は、まだ呼び名を持たない真新しい街へと変わる。そのかけがえのない瞬間に届く、詩という未知からの通知とともに。
――峯澤典子

日々の暮らしと、いくつかの街。記憶と身体はしずかに移動をつづけ、あらたな叙景に物語がやどる。待望の第1詩集。装画=まちだリな、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4591-4
2024年8月刊

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高安海翔『誰もいない夜 lux poetica⑤』

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痕跡のために


天涯花を髪に刺してつゆつゆとあるけば 誰もいない夜は
いくつもの恨みを通り過ぎて真夜中の画布になって湾を目の中へ踊らせている
(「祝福」)


黒曜石のような高安海翔の詩。ついさっき、火山から飛び出て急速に冷え、地上にごろごろと落下したのち、誰の手によってか、ここにかき集められた。静謐な諧調。破れの予兆を孕む対称性。まだどこにも友達がいない。
――小池昌代

きりつめられた詩語が夜を纏い、私の不在に私があらわれる。無数の喪失を悼む32篇。第1詩集。装画=當麻卓也、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4590-7
2024年8月刊

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現代詩文庫『清水恵子詩集』

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そうれ虚像 ほら実像


命などどこにでもある
舌にのせれば
叫ぶたびに砕けて増える

死の唇が粉を吹く
その混じり気が好きだった
もうキスはいらない
言い残したことは剝がれて浮き上がり
人肌の水面に散る
後を追う沈み込む寸前の指に
渦がそれを巻き付ける

骨まで届く指輪のサイズはだれも知らない
(「氷? imitation」)


あびてあびて、から、ぎざぎざ、まで、あっぷあっぷ、から、駄駄まで、にぎわしくも透明なシニフィアンが詰まっている。指先がダンスする相手としての、触れそうで触れない、官能という名のシニフィアンが。〈間〉をそのようなものとして捉え、表現したところに、彼女の、紛れもない詩人としての存在証明がある。――野村喜和夫

『あびてあびて』(日本詩人クラブ新人賞)から『駄駄』まで、詩人の達成を全篇収録。男と女。永遠のぎざぎざを攪拌させ、逆流させ、生み落とされる、痛苦とエロスの果実。
解説=佐々木洋一 瀬崎祐 相沢正一郎 大家正志 富永正志

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1033-2
2024年9月刊

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現代詩文庫『金井雄二詩集』

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生活の音が聞こえる


なかに潜んでいるもの
それは猫だね
猫はひとりで生きられない
きみにかかえられて息をする
猫の毛のなかにはきみの毛が生えている
猫はだれかにささえられて
怠惰の海を泳いでいる
ぼくが持っていてあげようか
おもそうな
きみがかかえているものを
(「それは猫だね」)


ぼくの最初の頃の歌の現場は小さな六畳一間だった。夜が深まるにつれてぼくの歌は夜の街へと広がっていった。金井雄二さんの詩もそのようにしてある日ぼくのところにやって来た。いつのまにかぼくは金井さんの詩の読者になっていて、金井さんの詩を書く鉛筆の音がすぐそばに聞こえるようになった。それは金井さんの生活の音だった。金井さんは詩を書くことをごまかさない人だから、ぼくはこれからも金井さんの詩の読者であり続ける。――友部正人

小さな自分を見つめて、たったひとつの小さな言葉が生まれる。新しい〈ぼく〉と出会うために。いまを生きる抒情詩を模索してきた、確かな道のりを一望する。
解説=清水昶 井川博年 矢野静明 草野信子 岩木誠一郎

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1032-5
2024年9月刊

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現代詩文庫『杉本真維子詩集』

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言葉なきものに 眼差しとして


「いいことばかりじゃなかったです、とてもとても
 あなた、かってなことばかり言って
 過去、なんて、その程度のものなのですよ」

わたしではない口が
不満気に、でも、きっぱりと、言い放った
まばらな拍手はぐねぐねと体内をめぐり
私語をやめ
硬い岩となって野原でめざめる

あなたのつごう、あなたのはんだん、
あなたの、滲む血のかたちは、

ぜんぶ、その身体に、とじこめてあると
博士は言った
きっと誰にも褒められなくてよい
そのちいさく何よりも華やかな拍手のために、
ひとはふっくらと一人である
(「拍手」)


一日は長いヒモだ。結ぼうにも端はなく、いつ昏れたのかわからないまま翌朝になっている。そこを割って入る杉本真維子の詩作は、デモーニッシュな力が働いているように見える。そうしなければ、楽に息ができないというこんとんの淵からの生還なのだ。――井坂洋子

『点火期』から『袖口の動物』『裾花』をへて『皆神山』まで、既刊4詩集全篇、及び未刊詩篇47篇を収録。底知れない視線、切りつめた発語で、2000年代以降の詩に鮮烈な実りをもたらした詩人の全貌。
解説=瀬尾育生 蜂飼耳 阿部嘉昭 文月悠光

〇同じ著者によって
『皆神山』
『裾花』
〇関連書籍
「現代詩手帖」2024年3月号「特集・杉本真維子、生を象る発語」
「現代詩手帖」2015年4月号「小特集・杉本真維子『裾花』を読む」

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1031-8
2024年9月刊

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岡田ユアン『囀る、光の粒』

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ようこそ


どこかで鳥の声がする、囀る、光の粒、これは祝祭、
待ち望んだ祝祭。捻られながら遠のいていく
祝祭の後の言い難い沈黙。
(「囀る、光の粒」)


ことばのかなた、生誕の朝へ。微細な粒子(わたしたち)が邂逅する詩の汀23篇。装幀=長澤昌彦

2420円(税込)
四六判並製・96頁
ISBN978-4-7837-4585-3
2024年8月刊

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髙野尭『誰のでもない/レリギオ』

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今を 待て!


足が出る戦きの水際で波立つ、何を詠うためにウィッチクラフトの未世に、リアリティを求めて墜落した天使がカプセル化した自分を呑み込みふらっと跳ぶ悲しむ散劇の跡地に取り残され、消され、薄ら笑う
(「レリギオ」)


偏在し跋扈する統べられたレリギオ……誰のでもない眼が見出す現実の裂け目、そこでは私の記憶と猥雑な現在、聖なる物語が入り乱れ、世界がバグを起こす。危機のさなか、混沌を彷徨う第3詩集。装幀=中島浩

2860円(税込)
A5判上製・144頁
ISBN978-4-7837-4582-2
2024年7月刊

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颯木あやこ『アウラの棘』

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いのちは好きでしょ?


いることも いないことも知っている
だから呼ぶのよ
(「汝」)


無垢な手と口があるばかりだ――死にたくて生きたいわたしたちに、未来へとリボンを架ける40篇。装幀=北澤眞人

2640円(税込)
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-4584-6
2024年8月刊

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