詩の本の思潮社

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大木潤子『私の知らない歌』       


光/闇 迷路/隘路 


さあおいで
私の知らない歌
陰惨な爪を忘れて
私たちは書くことを覚える
(「Ⅰ」)


これらの詩群を読む者は、線的時間の潰走した“散乱”のなかで、絶えず生であり死であり現前であり不在であり光であり闇でもある迷路あるいは隘路を辿りつつ、死んだものたちの息づく鏡の空間に他ならない“歌”であり、詩であるような未知の場所へと導かれるだろう。『石の花』に次ぐ待望の最新詩集。

本体3600円+税
A5判並製・484頁
ISBN978-4-7837-3612-7
2018年6月刊

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池上貞子『もうひとつの時の流れのなかで』


巡り めぐって


いる いない?
ひとり ふたり?
見える 見える まぼろし
(「序詩 もうひとつの時の流れのなかで」)


「「カイロス」と呼ばれる一瞬のチャンスを池上さんは逃さなかった。春の一日は、ここに書きとめられた光景によって、時の流れのうえに詩の一行のように屹立することとなった。ふくよかにかろやかにかおりたつ言葉たちの輪舞だ」(北澤憲昭)
中国、台湾、香港、アメリカ――中国文学者でもある詩人は時の旅人となって、詩の雨滴をやわらかに掬い上げる。27年ぶり、滋味ゆたかな第4詩集。

本体2400円+税
四六判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3608-0
2018年7月刊

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高橋睦郎『つい昨日のことーー私のギリシア』


詩業六十余年の結実


気がつくと 私という島はギリシアになっていた
そのことを認めた日から私はギリシア人
私はギリシアを呼吸した すなわち自由を
何処にも存在しない 真空のような自由を
(「94 ギリシアとは」)

「高橋睦郎のところに詩の神がやってきた。ギリシャから、神一人ではなく神々がぞろぞろと、引きも切らず、昼夜の別なく、英雄やら美女やら美少年やらを引き連れて」(池澤夏樹)
「多島海のような詩集。日本語の潮騒が、高橋睦郎の抱える多層的なギリシアを伝える。移り変わる詩の夢の中、はじめての風景がゆっくりと目を醒ます」(蜂飼耳)
「自由、それこそジャンルの垣根を越え国境も性差も越え、奔放に運動しつづけてやまない高橋睦郎の詩精神の核心に位置する徳=能力(ヴァーチュ)ではなかろうか」(松浦寿輝)
150余篇を収める、畢生の新詩集。装幀=原研哉+梶原恵。 重版出来!

本体3600円+税
菊判変型上製・192頁
ISBN978-4-7837-3604-2
2018年6月刊 2019年3月第2刷

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田口哲也『ロンドン日記ーー突然ときれた記憶』 


旅の恥は書き捨て


スチュアートたちとも別れを告げて、ベンとエスターと私の三人は足早にオールド・ストリートを北上し、地下鉄の駅へ向かう。水溜りを巧みにサイドステップでかわすエスターのブーツを見ながら、ベンと日本のロックについて話をする。地下鉄の入り口が見え始めたあたりからエスターのブーツの動きはさらに速くなり、ついに私たちは走り始めた。しかも中途半端な速度ではなく、かなり全力疾走に近い。パンクはなぜいつもこう走るのか。/私たちは切符も買わずに開きっぱなしの改札から構内に飛び込み、停止したエスカレーターを転げるように駆け下りる。風が下から吹き上げてくる。長い、長いエスカレーターを一気に駆け下りると、吸い込まれるように発車寸前の電車に次々に飛び込む。やったとばかり、ようやく振り向いたエスターの笑顔が見える。ベンが蝙蝠のようにコートを羽ばたかせて水を切ったところで電車はガクンと動き出した。電車の窓ガラスから見える、壁に並んだ広告が走馬灯のように動き出し、床から伝わるモーターの音に引っ張られるようにして私たちはロンドンの地下を歴史のように走る。この街はなんだかいつまでたっても十九世紀のようだ。
(「8 ニコラス・ホークスモアの奇怪な教会建築の脇を抜けてスチュアート・ホームとゲイ・パブで会う」)


「私たちの意識は現在にあるので、記憶は現在の刺激や経験がきっかけになって立ち現われる。要はトワイライトゾーンだ」(あとがき)。ネオ・パンク的20世紀末ロンドンへ。海馬を鞭打ち、女神を呼び出す、12のスケッチーズ。「gui」好評連載を収める散文集。装幀=中島浩

本体2200円+税
四六判変型上製・174頁
ISBN978-4-7837-3902-9
2018年7月刊

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森水陽一郎『月影という名の』

森水陽一郎『月影という名の』


待望の第2詩集


僕たちは夜に閉じることなく、これからの日々を朝へと綴じひらき
結び合わされた二つの指先で、黎明の赤いしおりひもを編んでいく
(「苦土」)

「男はその一生を、誰にも知られぬまま終えるだろうと/覚悟とあきらめの笑みで、自分の影だけを伴侶に/日々生きていたが、呼び鈴の震えには気づいていた/ぴたりと重なる、双子の影がいることに気づいていた」(「月影という名の」)。小野十三郎賞作家が描く、海辺のフォークロア。書き下ろし27篇。カバー作品=佐野藍

本体2600円+税
A5判上製・114頁
ISBN978-4-7837-3605-9
2018年6月刊

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鎌田東二『常世の時軸』


無限遠点の彼方へ


超越の波動が悲の受精卵を苦の岬から突き落とす。満月に向かって悲しく聳え立つ母之理主よ応答せよ応答せよ応答せよ!
(「悲の岬」)


星海を孤独に光りながら渡る常世舟。宇宙に切り立つ岬から永遠へと堕ちていく時の欠片。還る場所はあるのか――壮大な神話詩をうたう、極北の第1詩集。

本体2000円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3606-6
2018年7月刊

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岡島弘子『洋裁師の恋』


詩を編む


これをまとえば世界がかわる
あなたは世界を着がえる
世界はあなたを着がえる
(「ドレスができるまで」)


かつて洋裁師であった詩人は、服を一針一針仕上げていくように、詩を一語一語仕上げていく。自らの詩作の原点に立ち戻りながら紡がれた5年ぶりの最新詩集。

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3607-3
2018年7月刊

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平岡敏夫『在りし日々の証に』


あの初夏


なぜいつまでも忘れられんのだろう
(「別れの電話」)

「軍隊・戦争がいつの間にか廊下に立っている。(…)死を前にして書くことのできないことはいくつも存在する。だれでもそうだろう、表現できぬものがあるのは当然である」(あとがき)。“あの”非日常の日々こそが日常であり、代えがたい青春だった。消え去りゆく、書き尽くせない時間の重みをなお、刻みつづける――最後の詩集。カバー写真=佐中由紀枝

本体2400円+税
A5判変型上製・88頁
ISBN978-4-7837-3611‐0
2018年6月刊

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倉石信乃『使い』


第一詩集


語る言葉を持たないのに口を押しつけられている
語る口を持たないのに言葉を押しつけられている
わたしは持たない
(「使いⅡ」)

ものと人が行き交うこの世界に、その日がやってくる――。意識と身体の閾に切り立つ未聞の声。骨の言語で刻まれる8つの詩篇。装幀=須山悠里

本体2400円+税
A5判変型上製・112頁
ISBN978-4-7837-3603‐5
2018年6月刊

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麻生直子『端境の海』


第52回北海道新聞文学賞受賞!


真綿でくるんだ貝殻骨の小箱を
小走りで手渡してくれた人のやわらかな笑み

唄の島の哀歌の棘のような
多島海の白いほね
(「やわらかなセンサー」)


故郷・奥尻島の波のうねりに身をゆだね、アイヌへ、インドへ、心は旅を続ける。「辺境」に在ることを志向する詩人が紡ぐ、「わたしたちとあなたたち」の終わりない物語。カバー作品=チカップ美恵子、撮影=植村佳弘

本体2600円+税
A5判上製・124頁
ISBN978-4-7837-3610-3
2018年6月刊

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現代詩文庫『たかとう匡子詩集』


書くことへのたたかい


巨大なユンボの爪が
赤く爛れた空の深さをかきまぜている
空は土になり
土は
戦禍の時を越えた人の胸になり
(「根」)


「けっして夢幻ではない現実の時間の中の現象事象が、今の空気を吸って生きている私の脳裡でずきずき傷んだり、みずみずしい蘇生の雫になったりする」(宇多喜代子)。神戸空襲、阪神・淡路大震災――苛酷な体験と、受難をめぐる書くことの葛藤。カタストロフがはらむ時間の深みへ、ひたむきな模索と達成をあかす。
解説=倉橋健一、新井豊美、山本忠勝、時里二郎

本体1300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1017-2
2018年6月刊

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境節『空へ』


おもいだけは はるか彼方に


生きるということは
生卵の中空に
穴をあけることでは ないだろうか
(「さがして」)


「いつまでも幼年時代や、一九四五年八月十五日の敗戦を十三さいで現ソウルで迎えたこと。引き揚げの記憶が消えず、生きて来ました」(あとがき)。足元の危うさ、未来への不安を抱えながら、変わらぬ問いと思いを抱いて、戦後を歩いてきた著者の最新詩集。

本体2400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3602-8
2018年5月刊

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