大木潤子『私の知らない歌』
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光/闇 迷路/隘路
光/闇 迷路/隘路
さあおいで
私の知らない歌
陰惨な爪を忘れて
私たちは書くことを覚える
(「Ⅰ」)
本体3600円+税
A5判並製・484頁
ISBN978-4-7837-3612-7
2018年6月刊
さあおいで
私の知らない歌
陰惨な爪を忘れて
私たちは書くことを覚える
(「Ⅰ」)
本体3600円+税
A5判並製・484頁
ISBN978-4-7837-3612-7
2018年6月刊
いる いない?
ひとり ふたり?
見える 見える まぼろし
(「序詩 もうひとつの時の流れのなかで」)
本体2400円+税
四六判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3608-0
2018年7月刊
気がつくと 私という島はギリシアになっていた
そのことを認めた日から私はギリシア人
私はギリシアを呼吸した すなわち自由を
何処にも存在しない 真空のような自由を
(「94 ギリシアとは」)
本体3600円+税
菊判変型上製・192頁
ISBN978-4-7837-3604-2
2018年6月刊 2019年3月第2刷
スチュアートたちとも別れを告げて、ベンとエスターと私の三人は足早にオールド・ストリートを北上し、地下鉄の駅へ向かう。水溜りを巧みにサイドステップでかわすエスターのブーツを見ながら、ベンと日本のロックについて話をする。地下鉄の入り口が見え始めたあたりからエスターのブーツの動きはさらに速くなり、ついに私たちは走り始めた。しかも中途半端な速度ではなく、かなり全力疾走に近い。パンクはなぜいつもこう走るのか。/私たちは切符も買わずに開きっぱなしの改札から構内に飛び込み、停止したエスカレーターを転げるように駆け下りる。風が下から吹き上げてくる。長い、長いエスカレーターを一気に駆け下りると、吸い込まれるように発車寸前の電車に次々に飛び込む。やったとばかり、ようやく振り向いたエスターの笑顔が見える。ベンが蝙蝠のようにコートを羽ばたかせて水を切ったところで電車はガクンと動き出した。電車の窓ガラスから見える、壁に並んだ広告が走馬灯のように動き出し、床から伝わるモーターの音に引っ張られるようにして私たちはロンドンの地下を歴史のように走る。この街はなんだかいつまでたっても十九世紀のようだ。
(「8 ニコラス・ホークスモアの奇怪な教会建築の脇を抜けてスチュアート・ホームとゲイ・パブで会う」)
本体2200円+税
四六判変型上製・174頁
ISBN978-4-7837-3902-9
2018年7月刊
僕たちは夜に閉じることなく、これからの日々を朝へと綴じひらき
結び合わされた二つの指先で、黎明の赤いしおりひもを編んでいく
(「苦土」)
本体2600円+税
A5判上製・114頁
ISBN978-4-7837-3605-9
2018年6月刊
超越の波動が悲の受精卵を苦の岬から突き落とす。満月に向かって悲しく聳え立つ母之理主よ応答せよ応答せよ応答せよ!
(「悲の岬」)
本体2000円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3606-6
2018年7月刊
これをまとえば世界がかわる
あなたは世界を着がえる
世界はあなたを着がえる
(「ドレスができるまで」)
本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3607-3
2018年7月刊
なぜいつまでも忘れられんのだろう
(「別れの電話」)
本体2400円+税
A5判変型上製・88頁
ISBN978-4-7837-3611‐0
2018年6月刊
語る言葉を持たないのに口を押しつけられている
語る口を持たないのに言葉を押しつけられている
わたしは持たない
(「使いⅡ」)
本体2400円+税
A5判変型上製・112頁
ISBN978-4-7837-3603‐5
2018年6月刊
真綿でくるんだ貝殻骨の小箱を
小走りで手渡してくれた人のやわらかな笑み
唄の島の哀歌の棘のような
多島海の白いほね
(「やわらかなセンサー」)
本体2600円+税
A5判上製・124頁
ISBN978-4-7837-3610-3
2018年6月刊
巨大なユンボの爪が
赤く爛れた空の深さをかきまぜている
空は土になり
土は
戦禍の時を越えた人の胸になり
(「根」)
本体1300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1017-2
2018年6月刊
生きるということは
生卵の中空に
穴をあけることでは ないだろうか
(「さがして」)
本体2400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3602-8
2018年5月刊