詩の本の思潮社

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小笠原茂介『雪灯籠』


白き薄明の幻想歌


やがて朝子の体が燃えはじめる
大空の冷気が
透きとおる白衣に通っているのか
いつまでも白い冷たい蠟燭のように燃えている
(「白蠟燭」)


揺らめく炎が照らしだすのは、風がまじる雪か、不在のあわいに微笑む〈朝子〉の白い腕か――。生と死が融けあう冷たい火影が、夢幻の相聞の世界へと誘う第10詩集。

本体2,800円+税
A5判上製・134 頁
ISBN978-4-7837-3489-5
2015年8月刊

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南川隆雄『傾ぐ系統樹』


焦土に伸びた詩の根


空洞を孕んだいのちの系統樹は
逆らいようのない節理で
むなしく気負い 傾いていく
あすの午後にでも
(「かたむく樹」)


幼少年時が戦中戦後であった巡り合わせに詩想の根を這わせ、剥き出しの生死の境界に枝葉を伸ばす。ときに苦いユーモアと仄かな官能をまじえ、精妙な陰影で絡み合ううつし世を捉えた37篇。

本体2,400円+税
A5判上製・96 頁
ISBN978-4-7837-3488-8
2015年8月刊

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現代詩文庫『鈴木ユリイカ詩集』


時代を象徴する全3冊の詩集から


外では雪が降りしきっていた
私は目には見えない貝に心の中で
そっと触れてみた すると
もはや時の刻みが痛いほどついていた
(「生きている貝」)


「ユリイカさんの詩を読むと、母の表情から不安が消えた。とても柔らかな表情になった。そして、ふーっと深い息を吐いて、眠りに入っていった」(落合恵子)。『MOBILE・愛』(H氏賞)『海のヴァイオリンがきこえる』(詩歌文学館賞)『ビルディングを運ぶ女たち』から「生きている貝」ほか代表作をすべて収録。「ラ・メール新人賞」受賞後、80年代を鮮やかに駆け抜けた詩人の営為がいま目の前に。解説=清岡卓行、吉原幸子、新川和江、井坂洋子、中本道代、三角みづ紀

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0998-5
2015年8月刊

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現代詩文庫『境節詩集』


ひたむきに歩きつづける


こわれそうで
こわれなかったものを かかえて
今朝 立っている
(「歩く」)


「歩いてきた。求めてきた。まだあきらめていない。境節の詩は、そんな表情をして、読者に問いかける。生の意味について。世界の性質について」(福間健二)。終戦、そして朝鮮半島からの引き揚げ。魂の余白に刻まれた傷はひかりに透けて、詩の一行となって立つ。『道』(中四国詩人賞)『薔薇の はなびら』(富田砕花賞)全篇と、全10冊の詩集から代表作を精選。解説=永瀬清子、新井豊美、斎藤恵子

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0996-1
2015年8月刊

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現代詩文庫『森崎和江詩集』


全詩的営為を収める


ながれていく舌はほろびよ
しもやけの鋼を筋肉ふかく
巻きこむときに
(「シンボルとしての対話を拒絶する」)


「敗戦のとき、もうどんなできあいのことばにも寄りかからない、と決めて以来、いのちを絞るようにことばを産み出すのが森崎さんの闘いになった。そしてそのことばの、おもいがけず、平明で明るいこと!」(上野千鶴子)。朝鮮から日本へ、日本から朝鮮へ――戦争と引き揚げの経験のなかで、つねにすべての活動の中心に「詩」のこころを持ち、日本とは何か、女とは何か、私とは何かを問い続けた著者の単行詩集から全作品を収録。解説=鶴見俊輔、井上洋子、姜信子、岸田将幸

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0995-4
2015年8月刊

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現代詩文庫『平岡敏夫詩集』


私と史のはるかなる旅路


蒼空の一点を
凝っとみつめていると
蒼空は黒みを帯びてくる。
(「蒼空」


「わたしはかつて北村透谷や近代文学のすぐれた研究者だ、と思っていた平岡さんの魅力の源泉が、ふるさと瀬戸内海の〈塩飽島〉から湧き出る、天然の詩にあることを発見したときの興奮を忘れない」(北川透)。文学史家でもある詩人の、歴史の無惨と交差する生の歩み。代表作『浜辺のうた』『蒼空』全篇、高村光太郎論など円熟の評論も収録。戦後70年、長き沈潜をへて湧き出た詩の水鏡。解説=佐藤泰正、山本哲也、井川博年、陶原葵

本体1,300円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0994-7
2015年8月刊

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寳玉義彦『Picnic』


それは円い空の悲しみ


詩を書きたければ
逃げろ
詩は
逃げ足の速さだけが取り柄
海辺の家々を破壊して押し寄せる波よりも速く
おまえは辺境の銀河で鳴る口笛の中に飛ばなければならない
(「食傷」)


「暮らしはひどく傷つけられ、私も充分に傷を負ったが、詩を書いているときの私にとっては、震災もひとつの状況でしかない。そういう乾いた目線の中で詩歌、詩は生まれないと信じて歩いてきた」(寳玉義彦「栞」より)。詩人は大震災後の原発事故によって避難を余儀なくされ、故郷を追われた。逃げろ、逃げろと唸りながら――いつしか詩人は、己の行く手に詩の塔を建てる。それは隠喩の力、語のリズムで築く反撃の砦だった。躍動する言葉による、挑発の第1詩集。

本体2,500円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3480-2
2015年7月刊

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金井雄二『朝起きてぼくは』


第23回丸山薫賞受賞!


きみは毎日同じ場所に立ち
いつもの視線で
生活の一行を
見つける?
(「台所」)


朝起きてぼくは詩のことを考えない――会議のこと、ネクタイを締める苦痛、通勤電車の混雑……いつもの一日の始まりには、ほかに考えることがいっぱいある。でも、夜にはまた、詩の森へ分け入るのだ。中年詩人の平凡で単純な生活、でも大切な言葉が今日もここに生まれている。珠玉の41篇を収める、待望の第6詩集。装画=辻憲

本体2,500円+税
A5判変型上製・112頁
ISBN978-4-7837-3482-6
2015年7月刊

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北川朱実『三度のめしより』

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詩の縄のれんをくぐって


地べたに足をくっつけて町から町へと歩き、足の裏だけを信じて生きたはずが、ふとしたことがきっかけで、半生をグラリと傾ける。その一瞬にも詩は隠されている。
(「あしのうらがふと空に憧れた」)


井伏鱒二も永井荷風も、中原中也も辻征夫も歩いた人生の路地裏をあじわいつくす。光る塩のような詩を追って、大通りから裏通りへとつんのめっていく、日常をはみ出すための新しい詩のエッセイ集! 装画=浅川洋
〈本書に登場する人物〉
井伏鱒二、内田百閒、東海林さだお、高橋和巳、永井荷風、深沢七郎、天野忠、井川博年、池井昌樹、北川透、佐々木安美、高階杞一、辻征夫、中上哲夫、中原中也、福間健二、八木幹夫ほか

本体2,600円+税
四六判上製・242頁
ISBN978-4-7837-1699-0
2015年8月刊

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『粟津則雄著作集 第Ⅹ巻』美術論Ⅱ

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全身的な凝視が捉えた美の伽藍


そこはすでに視覚も聴覚も言葉も渾然となった、全身的と呼ぶほかない詩的体験の場である。彼は感覚を全開にしてその時空に浸っている。そこから文学の言葉が始まるかもしれない。絵画や音楽を語るきっかけが生まれるかもしれない。そうした未分化の濃密な虚空体験が、ジャンルの仕切りなど軽々と超える「仕切りのない感性」の持ち主を生んでいったことは、おそらく確かなことなのである。
(解説=芥川喜好)


古今東西の名作から現代文化まで、幅広い対象に全身で対峙して繰り広げられた豊穣な内面のドラマ。現代の虚ろや美術家の刻苦宿命がなまなましく浮かぶ批評的散文の精華を収める。『私の空想美術館』『日本洋画22人の闘い』『世紀末文化私観』全篇に加え、『近代芸術の意味』『孤立と共鳴』『幻視と造形』から特色ある論考を厳選。装幀=菊地信義

本体7,800円+税
菊判貼函入・624頁
ISBN978-4-7837-2369-1
2015年7月刊

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三角みづ紀『舵を弾く』

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奏でられるままに


もうすぐ聞こえるから
黙っておいて。
あたたかくたゆたったまま
ずっとずっと黙っておいて。
(「呼ばれる支度」)


屋根をたたくものはなに? 窓を鳴らすものはなに? わたしを揺らすものはなに? ほらここにも詩の庭ができる――最年少での萩原朔太郎賞受賞から2年、移動を日常としながらつねに新しい言葉を模索する。それは詩の場所をつくる試み。35篇からなるさらなる飛躍の新詩集。装画=植田志保

本体2,000円+税
四六判並製・110頁
ISBN978-4-7837-3483-3
2015年7月刊

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須藤洋平『真っ赤な傘突き刺して』

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わたしはいきたい


それでも、わたしのぺにすはうえをむく
さっぷうけいのなかかがりびのようだ
(「ちをこねるにおい」)


流された町の真ん中で、詩人は蹲り、詩人は呻く。搾り出すように、ひらすら呻く。言葉は裸になって投げだされ、祈りは天から転がり落ちる。第1詩集で中原中也賞、震災後に刊行した第2詩集で詩歌文学館賞を受賞した詩人が、その後の被災地での自らの生と性を見つめる待望の新詩集。装幀=中島浩

本体2,000円+税
四六判上製・80頁
ISBN978-4-7837-3481-9
2015年7月刊

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