詩の本の思潮社

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新刊情報

岩阪恵子『鳩の時間』


第57回歴程賞受賞!


そんな青い水のなかを人も車も動き、それらはすべてこの世のものではないように眺められてくる。とはいえ人工の明りに照らされた列車のなかがこの世のものであるとも言い切れないのだ。窓際にいて、わたしはずっくり濡れている気がする。
(「帰途」)

人の生に寄り添う手触りを、抑制された筆致で彫り込む、32篇。『その路地をぬけて』から3年、個人誌「山鳩」に書きついだ作品を中心に編む、透徹した散文詩集。装幀=清岡秀哉

本体2400円+税
A5判変型並製筒入・120頁
ISBN978-4-7837-3666-0
2019年7月刊

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仲田有里『植物考』

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行きたい場所へ


みかんの汁がしたたるように
一歩が雨になる
ここに花を飾る
(「頭」)

「よけいなものが心から消えていく。こんなに透明な愛し方もあるのだ」(東直子)。柔軟でみずみずしく、それでいて確かな日常の手触り。シンプルな言葉でつづる第1詩集。カバー作品=渡辺里紗

本体2200円+税
四六判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3668-4
2019年7月刊

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野村喜和夫『危機を生きる言葉――2010年代現代詩クロニクル』


現代詩のオデュッセイア


危機を生きる言葉? あるいは、言葉を生きる危機。言葉を使う、言葉とともに生きる、それが普通の人のステージなら、言葉を生きる、それが詩人のステージだ。たとえ危機の時代にあろうとも。(…)それは統覚的に秩序正しく言葉を運用することではない。そうではなく、むしろ、言葉の自律的な運動に翻弄され、他者の言葉にきりもなく横断されながら、そこでなお叫んでいる主体の声があるということである。(「結語に代えて」)

「詩は、私たちの手を使って、未来からの言語が書かせるものである」。2011年~2018年の詩的時評「Chronicle」に、石原吉郎から小笠原鳥類までを論じた詩人論「Poets」を交差させた、2010年代詩のオデュッセイア。カタストロフィー以後の詩の岸辺を泳ぎ、未知へと開く海をわたる渾身の時評集。装幀=中島浩

本体3200円+税
四六判並製・368頁
ISBN978-4-7837-3820-6
2019年8月刊

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現代詩文庫『新国誠一詩集』


文学と美術の境界領域


1.その詩は詩という「もの」である。
2.その詩は「詩」に強勢をおく。
3.その詩は「構想」を強調する。
(「ASA宣言書:1973」)


「彼が東京でぼくに会ったのが四十歳近かった。彼ほど《はじめにことばありき》を強く主張する人を知らなかったので、大いに興味をひきつけられたのは事実であった。彼は真面目を通り越し、ムキになってことばを論じ、ことばを形にすることに熱をあげていた。《ことばをものとして考える》という信念が彼の創造性に拍車をかけた」(藤富保男)
ことばの構造、ことばが置かれる空間、流れる時間。官能的光をはなつ詩の生成点に向けた目差しが芸術の領域を横断する、驚異の〈視覚詩〉集成。
解説=建畠晢、向井周太郎、砂田千磨、金澤一志

本体1500円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1021-9
2019年8月刊

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鈴江栄治『陽の額』


新詩集


透明を きらめき 顕わす 水は
陽の額を ほとばしり 流下する
(「陽の額」)

『視線論』から5年、ひそやかに差し出される。「なお、私は詩と造形にまとわる、かすかな呼吸の促しを受ける。この生息は明らめられ、また記されるだろうか」(「後記」)。装幀=著者

本体2400円+税
A5判並製・98頁
ISBN978-4-7837-3671-4
2019年7月刊

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坂多瑩子『さんぽさんぽ』


ああ、楽しかった


恋愛なんて
うしろの座席から聞こえた
だからあたしはいってやった
恋愛なんてへのかっぱ
へいすけをあたしは好きだった
(「へいすけ」)

「坂多さんは詩を遊んでいる//詩のはじっこを持ち上げて/小さな子どものように/トンネルトンネルと言いながら/頭から潜り込んでゆく//ああ 楽しかった//それでも読んでいると/一行一行の隙間から/時の流れや/生きていることの震えが伝わってくる//こんな詩/見たことない//遠くの空と/もうここにはいない人たちと/たくさんの感情の切れ端//坂多さんにしか書けない詩が/めくってもめくっても/出てくる」(松下育男)
3年ぶりの新詩集。装幀=高橋千尋

本体2200円+税
B6判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3672-1
2019年7月刊

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瀬尾育生『吉本隆明からはじまる』


30年にわたる吉本隆明論集成


なぜ長い時間、同じ中心を周回するようにして書き続けてきたのかと問われれば、日本の、あるいは外国の、他の思想家を追跡することによっては決して可能にならない、吉本隆明について書くことによってしか可能にならない思考の道筋が、この世界にはたしかに存在するからだ、と答えるのがよいと思う。(あとがき)

単独で〈世界〉と戦う、その言葉をめぐって考え続けた長く濃密な時間を凝集。吉本隆明の存在を切実に尖鋭に問う、著者畢生の力作評論。装幀=稲川方人

本体3600円+税
四六判上製・376頁
ISBN978-4-7837-3815-2
2019年7月刊 品切



 

房内はるみ『窓辺にいて』


時の花びら


今は不在のうえで光だけがゆれて
その静寂にそっとふれてみる
やわらかくてつかみきれない感情は
舞いおちる一枚の葉のよう
(「窓辺にいて」)

めぐる季節の光と影のうつろいのなか、静寂にゆらめき輝くいのち。生と死をいだき窓辺から遠くへ詩をしたためる。12年ぶりの新詩集。装画=中林三恵

本体2400円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3662-2
2019年7月刊

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佐々木幹郎『鏡の上を走りながら』


第1回大岡信賞受賞!


こころは 聴こえないもののなかで
ひそかに爪弾かれ
見えない糸となって 揺れている
(「急停車するまで」)


「わたしたちは忘れていた危機のなかへ飛ぶ/生まれ落ちたことの危機のなかへ/人間の形をして」(「母浜回帰」)。やわらかく立ち上がる詩の空間へ――。鏡の上に映るもの、走り過ぎるもの、過ぎ去る影と音楽と、その谺を、果敢に描く。〈いまここ〉を拓く、最新詩集! 装幀=間村俊一、カバー写真=東松照明

本体3200円+税
A5判上製・158頁
ISBN978-4-7837-3660-8
2019年7月刊

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