吉田博哉『夢転』

回り舞台のごとく
回り舞台のごとく
とあるさびれた庭前で 薔薇を燃やす老人を見た 秋の陽はとっくに傾いて 煙りの向こうは血のような夕焼け 気がつけば老人は もうどこにもいなかった
(「バラ男」)
男、妻、自転車、馬、壁のシミ、……あらゆる事物が影絵のごとく揺らめき、日々の行方を物語る。自在な展開で、夢と現実の境をみごとに描き出す、22篇。
本体2,400円+税
A5判並製・132頁
ISBN978-4-7837-3390-4
2013年10月刊
とあるさびれた庭前で 薔薇を燃やす老人を見た 秋の陽はとっくに傾いて 煙りの向こうは血のような夕焼け 気がつけば老人は もうどこにもいなかった
(「バラ男」)
男、妻、自転車、馬、壁のシミ、……あらゆる事物が影絵のごとく揺らめき、日々の行方を物語る。自在な展開で、夢と現実の境をみごとに描き出す、22篇。
本体2,400円+税
A5判並製・132頁
ISBN978-4-7837-3390-4
2013年10月刊
あゝ何でもかんでも吐鳴り返へせ
机の上に汚れた足をつゝたてゝ
詩とは何ぞや!と吐鳴りかへせ
机の上でひねくつた今のお芙美さんの詩を
ワツハワツハ嘲笑してやるがいゝ
(「狂人になる仕度」)
「林芙美子の未刊作品をまとめて読み、詩に魅せられた人生の寂寥と矜持に胸を打たれた」(平林敏彦)。全集等未収録作品を気鋭の研究家が熱情を傾けて発掘。投稿詩から急逝直前までの詩92篇とエッセー、童話を集成する。生前2冊の詩集を刊行し、『放浪記』以後は小説家に転じたと一般に考えられてきた林芙美子が、生涯詩人であったことを証す画期的労作!
本体2,600円+税
四六判上製・312頁
ISBN978-4-7837-3354-6
2013年10月刊
▼銀色の街を往く、行きどまりの日常に、足踏みしているおれ、が視える。歩行歩行歩行。
(「パースペクティヴ・パラノイア」)
狂ったパースペクティヴに反響する「われわれ」の受難をなおしなやかな身のこなしで受け止め、現代の抒情へと暗い地平から歌い上げる、鮮烈なる第1詩集。
2640円(税込)
A5判並製・132頁
ISBN978-4-7837-3377-5
2013年10月第1刷 2021年12月第2刷
再び歩きはじめると
疑問符がしとしとと
落ちてくる
(「世上 3」)
生と死のはざまに、静かに立ち止まり、佇む一人の人間の姿――。ぎりぎりまで削ぎ落とされた言葉で彼岸の風景を描き切る新詩集。「世上」10篇、「亡母について」6篇、「歳月」3篇を含む26篇。
本体2,200円+税
四六判上製・72頁
ISBN978-4-7837-3383-6
2013年9月刊
あの子が小鳥たちのために庭の木の枝に刺した結晶を
老女はくちばしでついばむ
あなたはちっとも年をとらないのね
光るものを拾ったらぜんぶあなたにあげる
(「ゆきしろ」)
「囁くように繊細に駆け抜けるように大胆に紡がれる言葉が、ゆらゆら息づくレース模様の感触で幾重もの物語を詩のなかに浮かびあがらせる。鮮やかな幻想とリアルな痛みの交差。(…)ズレ重なる「わたし」たちに寄り添って、新しい地平を切り開こうとする美しく果敢な第二詩集」(川口晴美)。はかないようで強靭な“おんなのこ”たちの物語を重層的な声で紡ぐ。
本体2,400円+税
A5判上製・114頁
ISBN978-4-7837-3378-2
2013年10月刊
わたしとあなたの間で
目覚める誰かがいる
ずっと見過ごしてきた
座礁していた船は
帆をふくらませて滑り出す
(「手がかり」)
「生死にわたる幅広いテーマの深淵に、批評の錘を下ろした作品を書いている。これからも彼は敢て困難な道を行くだろう。海風にむかって立つ一本の樫の木のような内田良介のイメージが、私は好きだ」(平林敏彦)。身体に満ちてくるざわめき、名づけえぬもの・・・・・・。世界がそっと身を起こす場所で紡がれる始まりと日常が深く響き合う、詩18篇。
本体2,200円+税
A5判並製・94頁
ISBN978-4-7837-3369-0
2013年10月刊
向こう岸に渡りながら、わたしたちは、向こう岸に、指一本も触れることができない。もしかすると、このまま、本当に向こう岸には、永遠に、たどり着けないのではないか。伏し目がちにじっと息をひそめて、その傍らを通り過ぎていく。ただそれだけしかできないのではないか。
(「警戒区域、小高へ」)
「現在への問いかけと現在をこえたものへの問いかけが、人間への問いかけと人間をこえたものへの問いかけが、濃密でのびやかな劇を作りあげていると言っていい」(粟津則雄)。地震、津波、被曝の三重苦に見舞われた土地のかなしみを背負う、19篇。装画=粟津杜子
本体2,500円+税
A5判上製・105頁
ISBN978-4-7837-3375-1
2013年10月刊 品切
宇宙 そこにあるものにとって
猛烈な逆説をひめている
真言さえ 疑われねばならぬ
太陽がどんな色彩をくれようと
ゴッホは走ったぜ
若冲は描きつづけたぜ
(「失楽園のスケルツォ」)
「おのれがゆっくりと「無」に向かうなかで、何を見、どのようなことばの表現が可能なのか」(後記)。東京大空襲体験にはじまる遥かな途次、生死の認識を根源に見つめてきた詩人が、精神を揺すぶる激震のなかで表現を厳しく問い直す。大震災後の作品群を収める新詩集。装幀=髙林昭太
本体2,600円+税
菊判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3370-6
2013年10月刊
他の人は故里を歌うけれども 私は歌が駄目で
書く能しかないのに うまく書けなくて 只々呼びかける
(「故里に呼びかける」)
「田禾の詩は、現代文明の激しく押し寄せている村の大地に対する郷愁の気持ちと、それと矛盾する複雑な心情に満たされている」(王光明)。現代中国を代表する郷土詩人の、瑞々しい邦訳版アンソロジー。
本体2,600円+税
四六判並製・162頁
ISBN978-4-7837-2762-0
2012年12月刊
夜明けの光に白み 降る声 頭上を通りすぎる生きものの影
声をあげると 窓から明るさが吹きこんできた
(「呼びかけるもの」)
「今回の連作は(…)時間が一巡りしてきて違う場所に顕れたこのモチーフの、自分にとっての大きさを語っているのかもしれない」。『移動する夜』から15年あまりを経て、新たに書き継がれた表題連作をふくむ、7年ぶりの新詩集。空白へと近づく文字のふるえが、問いと呼びかけの止めどなき転回が、いまここの境域を踏み越えていく。装幀=一色織花
本体2,600円+税
A5判上製・105頁
ISBN978-4-7837-3381-2
2013年10月刊 品切
人があふれた交差点に立つと
海へ出るのだったか
ポケットの中の時間に流れ込むのだったか
わからなくなる
(「住宅展示場の鳥」)
日々の滴はやわらかに詩人におち、地図にない街へ、誰も書かないことばで航っていく。瞬間、みなもから溢れだす、蒼く透きとおった時間――。
本体2,400円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3382-9
2013年9月刊 品切
わんわん
ぼろい閃き
とともに
この犬の詩を書き終えて
いま
白痴の家の電話が鳴る
(「燐の犬」)
言葉を磨くこと、詩行を光のように尖らせること、現代詩の頂きへの苛烈なる単独行。装幀=中島浩
本体1,200円+税
A5判変型並製・88頁
ISBN978-4-7837-3389-8
2013年9月刊
日を断つために、からだにねむりを容れる
うつわ特有のぼけた容積があちこちにできる
(「スープが、そこに。」)
降り積もる雪のなかで詩人は蹲る、この世界のすべてを、いま詩にへんかんするために。2行5連の定型で積み上げる、新しい言葉の塔。装幀=中島浩
本体1,600円+税
A5判変型並製・156頁
ISBN978-4-7837-3388-1
2013年9月刊
(いちかわふさえ)
わたしたちは長い時間をかけて
そのなまえの夜を
干物のようにおしひろげる
(「いちかわふさえ」)
尻で揃えられて並ぶ、平凡なる人名たち。H氏賞受賞詩集『化車』に続く、第4詩集。装幀=中島浩
本体1,500円+税
A5判変型並製・146頁
ISBN978-4-7837-3387-4
2013年9月刊