とあるさびれた庭前で 薔薇を燃やす老人を見た 秋の陽はとっくに傾いて 煙りの向こうは血のような夕焼け 気がつけば老人は もうどこにもいなかった (「バラ男」) 男、妻、自転車、馬、壁のシミ、……あらゆる事物が影絵のごとく揺らめき、日々の行方を物語る。自在な展開で、夢と現実の境をみごとに描き出す、22篇。
本体2,400円+税 A5判並製・132頁 ISBN978-4-7837-3390-4 2013年10月刊