詩の本の思潮社

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野沢啓『単独者鮎川信夫』


第20回日本詩人クラブ詩界賞受賞!


〈鮎川信夫とは誰か〉という問いを同時代性としてどう捉えるのかという問題である。/それは否応もなく、〈戦後詩〉の始まりを戦中期からの離脱を果たしながら意識的に始めることのできたひとりの詩人の歩みを問うことでもあったのであり、そこからの新たなる離脱を果たさなければならない現代の詩人たちに、鮎川という問いをどのように理解し、その問いをみずからへの問いとして受けとめなおすことを要請することでもあるからだ。この問いを回避して先へ進むことはできないのである。(「序 いま、なぜ鮎川信夫なのか」)

戦後詩の主導者としての鮎川信夫の実像と、その詩の類い稀なる奥行きと深さを、新しい資料も利用した独自の解析によってあらためてフォーカスし、鮎川像の神話をはがす。鮎川論の全面的な脱構築を通じて、現代詩の停滞にも檄を飛ばす、理論派の完全復活宣言!装幀=中島浩

本体2800円+税
四六判上製・256頁
ISBN978-4-7837-3821-3
2019年10月刊

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野沢啓『発熱装置』


融通無碍の新境地


ことばが放たれたがっている
誰のものでもないことばが場所をもとめている
だからこの空間は用意されるのだ
(「発熱装置」)

古今東西のテクストからの富を糧に、ことばがことばを誘発し、挑発する。自在なことばの装置が縦横に駆動する、著者26年ぶりの詩集の方法的発熱! 評論集『単独者鮎川信夫』と2冊同時刊行。装幀=中島浩

本体2500円+税
A5判変型上製・120頁
ISBN978-4-7837-3689-9
2019年10月刊

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水島英己『野の戦い、海の思い』


どんな灯りを


苦しみについて
どれだけ学んだろうか
ともだちが泣いているときに
きみは春の陽射しをあびて微笑む
犬と猫はそれぞれの生活に没頭する
でもそこからしか解けないのだ、苦しみの主題は
(「春のともだち」)

この国に生きる、痛みと怒り。思慮のぬくもり、あらがいの息を守って、歩きつづける。現実にかかわる詩の実践、30篇。装幀・装画=高專寺赫

本体2500円+税
A5判変型並製・144頁
ISBN978-4-7837-3686-8
2019年10月刊

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紺野とも『ひかりへ』


たわむれろ


いま塗らないと
その口紅はもう塗れない
その肩はもう出せない
(「たわむれろ」)

「東京を〈マーガリン色〉でぬりたくってる――これは、おんなのこが撮った言葉のフィルム」(山岡ミヤ)。ものいわぬ暗渠を包み匿し、都会の谷底の街はゴールなきアップロードをしつづける。その、あたらしいひかりのながれるほうへ。カバー写真=山本まりこ

本体2200円+税
四六判並製・104頁
ISBN978-4-7837-3688-2
2019年10月刊

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朝吹亮二『ホロウボディ』


荒ぶる季節の唄


誰もあなたに気づかなかったのだろうかわたしの見知らぬあなたでもただの気配だけでもなく蒸気だけでもなくラピスラズリの藍色と黄金の散乱だけでもなくとおいとおいきらきらまたたく散光星雲のイータカリーナ星雲だけでもなく触れることのできる

(「陽炎」)

幻の野の夢へ、果てなき雪原をさまよい、隘路から隘路へ、漆黒の迷宮をくだってゆく——。冥府の臍にほとばしる、熱い吐息を聞け! 『まばゆいばかりの』から9年、待望の最新詩集。装幀=佐野裕哉

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3683-7
2019年10月刊

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白井知子『旅を編む』


歴史と国境を往還する


歌がきこえてくる
イラン高原へやってきたアーリア民族末裔 イラン人
たちこめるペルシャ語 人々の気息とともに歩いていく
(「アーリア民族へ 回廊バザールから」)

イランへの6000キロの旅の機会を得た詩人は、かつて経験したことのないほどの厳しい行程を経ていくなかで、数千年の時空を縦横に往還し、かの国の歴史、民族、風俗などあらゆる事象と、それらを背負った多くの人たちの運命的な出会いを詩語へと昇華させる。かつてない壮大なスケールのもと、旅する詩人が自らのすべての知覚を多角的に用いて幾層にも編みあげた渾身の紀行詩集。

本体2400円+税
A5判変型上製・106頁
ISBN978-4-7837-3687-5
2019年9月刊

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江代充『切抜帳』


第50回高見順賞受賞!


垣の葉むらのすき間が所所で膨らみを呼び起こし
左右から全体に纏まった川のように光りながら動いていて
ちかくの道のなかに
一つ一つ茎のかたちで生い立つものも
他から吹かれたその通りのことばを
くり返すように揺れ始めている
(「語調のために」)

言葉を通じて、この場所へかならず戻ってくる。遥かなる道をたずねる14年ぶりの新詩集。装幀=清岡秀哉

本体2400円+税
四六判上製・120頁
ISBN978-4-7837-3684-4
2019年9月刊 品切



 

高市順一郎『エリオットの薔薇窓』


長編 伝記・説論詩集


かつて最初の結婚の時 変調した妻ヴィヴィアンの優美な愛の荒治療に
手を貸した親友バートランド・ラッセル卿は 今度は何の出番も頼まれず
送られて来た『老オポッサムの猫遊び本』を見て 一言ぼやいたという
「エリオットは二度目の結婚でやっと幸せをつかんだ
が、その結果――今や奇妙につまらん詩人になり下った」と(「『四つの四重奏』――『バラの物語』のロマンス的寓意」)

前世紀の前半、世界は荒れ地、パラダイス喪失、亡国愛の時代記号に病んでいた。21世紀の今、第二のオルフェが闇黒の幕をきり開き、反失楽と逆アポカリプスの歌を謳いだす。パウンド、エリオット、オーデンの英米3大詩人に「伝記説論詩」という新たな解読を試みる。

本体3000円+税
菊判上製・192頁
ISBN978-4-7837-3679-0
2019年9月刊

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