詩の本の思潮社

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新刊情報

池井昌樹『母家』

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とこしえに


このまちでうまれそだって
このまちでいきてきました
わたしはまちのほんやです
みよりたよりはありません (「町の本屋」)


焦がれ、求めつづけてやまない竜の玉――詩。日々の生活のなかに、詩は、いつも息づいている。誰にでも触れられるまで、つるつるに磨かれ、選び抜かれた言の葉、珠玉の42篇。装幀=高林昭太

本体2,400円+税
A5判上製・110頁
ISBN978-4-7837-3203-7
2010年9月刊

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瀬木慎一『リルケと孤独の逆説』

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「純粋」の内実、新しいリルケ像


21世紀となった今も、それに大きな矛盾を感じながらも強く引きつけられる人々が絶えないとしたら、「孤独」を一種の思想として受けとめて、その最大の実例を極力論じることに何らかの意味はあるにちがいない。 (「はじめに」)


夢想と慰めを求める読者をいまも惹きつけてやまない詩人リルケ。隠遁生活に終始しながらも、さまざまな同時代人と深く交友し、20世紀初頭の芸術と思想の核心に位置しつづけた、全き詩人の生涯とは――。『マルテの手記』『ドゥイノの悲歌』の読解から、日本のリルケ受容までを射程におさめた力作評論。

本体2,800円+税
四六判上製・270頁
ISBN978-4-7837-1664-8
2010年9月刊

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小川三郎『コールドスリープ』

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それでも世界の内側にいた


ぼくたちはもうほんとに
死ぬために生まれてきて
乳房のことなんかを考えている
生まれつきの木乃伊である心は
しっとりと濡れた異変を常に求めている。(「老人」)


切ないほどに突きぬけて、あなたと不器用に闘いをいどむ。いまを生きるためのプラスティックな銃器、18篇。

本体2,000円+税
四六判並製・110頁
ISBN978-4-7837-3208-2
2010年9月刊

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倉橋健一『詩が円熟するとき――詩的60年代環流』

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「現代詩手帖」連載、炯眼の批評集


「歌の円寂する時」を折口信夫が書いたとき、折口の目もまた、批評を失った現実の歌壇に向けられていた。そして歌はこのうえ伸びようがないといい、すでに滅びかけているともいった。そして短詩型のもつ主題に迫った。


なぜ口語自由律なのか。現代詩の詩型としての主題を直視せよ――。なお底光りを放ち続ける黒田喜夫、石原吉郎らを表現論として現在に読み解き、詩が「凄味」をもった時代への環流を試みる。証言から提起へ、日本語の詩に根柢の問いをせり上げる、卓抜した批評集。装画=新井九紀子

本体2,800円+税
四六判上製・272頁
ISBN978-4-7837-1661-7
2010年9月刊

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陶原葵『明石、時、』

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リミットをさまよう声


縫い込まれた声だけが
いま
語ることをゆるされて
(「明石、時、」)


「「証し時」の根底にある、この証すことのできない謎めいた空白。この詩集はたえずその証言不可能な空白のリミットをさまよっているのだ」(吉田文憲・栞)。この詩集に日常を刻む時の均質な流れはどこにもない。急速に凍りつき、逆回転をはじめる、時。深く黙したものの不条理なおののきの場所でかすかな呟きにも似た詩が刻まれる。装幀=稲川方人

本体2,600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3196-2
2010年9月刊

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八潮れん『ウーサ』

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うるさい身体


とうてい行きつけない堕落と
わたくし正常な欲望のあいだに見る
似たもの同士の胎児排出力
(「バロン・ド・エス」)


「元気な、とは、もちろん言葉がいきいきしていて躍動的であり、あるいは遊動的であり、いつでも他の言葉とくっつきそうな、いうなればエロスの態勢にあるということで、(…)言葉のエロスとエロス的身体とがじつに分かちがたく働き合って、ひとつの「ウーサ」、「在る」を生み成している」(野村喜和夫・栞)。言葉で解放するエロス。待望の第2詩集。装画=神彌佐子


著者の言葉
一六歳。はるか昔であり、「今この時」でもある。粟津則雄氏訳のランボウがなぜカトリックの女子高に通う長野の少女にそれほどショックを与えたのか、今でもわからないし、詩の出発点、経歴もこの瞬間に作られるという感覚だから、それを対象化するのにいつも苦労する。今自分が詩でやりたいことを考えると、私はつくづく自分の官能性を抑圧してきたのだと思う。いくぞ、いったるぞ、もう我慢なんかしない、と言うのですね、誰かが。私たちは快楽原則だけでは生きられないから、そうしたくなくても「我」に返らないではいられない。しかし社会的な自我は私のほしい快楽からなんと遠ざかってしまうことか。詩誌「スーハ!」同人、やっと第二詩集。これからは朗読などもやっていきたいと思っている。エロスを立ち上げるのにいとまがない、これがきょうびの詩の私といえます。


本体2,000円+税
A5判変型並製・88頁
ISBN978-4-7837-3204-4
2010年8月刊

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伊勢功治=詩/柳智之=画『天空の結晶』

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夢見られてきた詩画集



鏡の中に私がいなかった
写っているのは蒼穹に浮かぶ飛沫の雲……
(「朝」)


「夢見られてきた詩画集がここにある。形象と言葉と、「未来の記憶へと続く堤防を」一体になってすすむ、そのシンプルな姿がうつくしい」(野村喜和夫)。ブックデザイナーとしての経験と、戦前のモダニズム詩への造詣の深さを生かし、はじめて詩と絵による一冊を上梓する。

本体2,200円+税
B5判上製・48頁
ISBN978-4-7837-3190-0
2010年8月刊

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朝吹亮二『まばゆいばかりの』

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16年の沈黙、新たな詩語の解放


ねえ、さん
あなたの空隙はそのまま私
の触れることのできるすべてなのです
(「日録(終わらない世界の終わりのための)」)


郊外の古ぼけたお屋敷の、少し荒れた庭の小道の端に咲く、小さな白い花の記憶をみつけたら、この詩集を開けばいい。――かけがえのない時の静止、あまりにも幸福な言葉の蒸散。装幀=中島浩

本体2,600円+税
A5判上製・144頁
ISBN978-4-7837-3206-8
2010年8月刊 品切

 

友部正人『退屈は素敵』

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しなやかな思いがけない視線


歌は街に追い抜かれ
街に住む人になるだろう
詩は景色に追い抜かれ
山に住む鳥になるだろう
ぼくは歌や詩に追い抜かれ
十二時の鐘になるだろう
(「十二時の鐘」)


「わからない言葉で歌ってください/ぼくもわからない言葉で歌うから」。聞き合おう、お互いを――。上がったり下がったりの毎日から自在に詩をつかむ。大きな川が流れるように、いつも新しく、どこか懐かしい言葉たち。歌う詩人の60歳の新詩集。著者自身の挿画も収録。装画=寺田一行

本体1,800円+税
A5判変型並製・160頁
ISBN978-4-7837-3195-5
2010年8月刊

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