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現代詩文庫『有働薫詩集』

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永遠の切片をもとめて


落ちていた埃を
手のひらに拾うと
鼠のかたちの影になった

夕闇の部屋で

このあたりでは
ついぞ見かけなくなった
害獣を
殺すことにも慣れたと言っていた

首都の谷間に住む妹の
息子に子は生れただろうか
(「まぼろし」)


その詩句は、彼女の熱愛するモーツァルトの楽曲のように軽やかで透明なひびきをもってぼくの耳朶を快く打つ。ぼくはしばし眼で、この詩女神がかなでる曲に身を浸す、あたかも音楽家が楽譜の上に未だ音を発せざる曲を聴くかのように。「眼で読む音楽」というものがあるとすれば、それは彼女の詩であろう。――沓掛良彦

感性と知性が響きあい、レアルとヴィジョンがせめぎあう。個から共苦の深みへ、〈事後の詩人〉の一途なる軌跡。現代詩花椿賞受賞『幻影の足』全篇をふくむ一巻選集。
解説=鈴木志郎康、阿部日奈子、中本道代、野村喜和夫、竹内敏喜

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-1029-5
2024年3月刊

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