詩の本の思潮社

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新刊情報

柿沼徹『もんしろちょうの道順』

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私である、私でない……


それは立ち止まることとはちがう
考えることとはちがう
語りかけることとはちがう
それは流れることですらない

切って落とされたような
白い今が
ひらひらと宙に浮いている
(「もんしろちょう」)

もんしろちょうにはもんしろちょうの、テントウムシにはテントウムシの、蟻には蟻のやり方があるように、私たちには私たちのやり方がある。ゆきつ戻りつ、たどたどしく問いつづける思念のその先――。

本体2,200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3299-0
2012年6月刊

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松岡政則『口福台灣食堂紀行』

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ひかりの素顔


知る、とは生まれるということだろう
からだの中まで触れにくる
ひかりのことをいうのだろう
(「口福台灣食堂紀行」)

眼の喜び、喰う喜び。笑い、怒り、哀しみ……。裸の、肉声の、生のままの。『ちかしい喉』から3年、台灣を見つめる詩人の眼差しは、人間の生きるままのすがたをうつし出す。歩くと食べるを繰り返しながら、あいさつだけの身体となって、ひとのかたちに還ってゆくまで――。装幀=森本良成

本体2,400円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3298-3
2012年6月刊

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木村大刀子『ゆでたまごの木』

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第13回中四国詩人賞受賞!


夢の中でおにぎりを差し出している初老の女
差し出しても差し出しても
どうしてもあの少年たちに手渡せない
川沿いに建つ高層ホテルの一室
小さくうなされてひとり目覚めたその人の窓に
たんぽぽ色の滲んだ月が懸かっていて
(「川の町で」)

「大刀子さんの類稀れな誠実は日常の姿に尽されている。その大刀子さんのこれは虚実の岸に立つうたである。なぜ私達は実を越えようとするのだろう。彼女は大刀子の詩、になろうとしている。暖かなはらわたとこころとあしを持ちながらなお。現実確かなひとのうたは。圧倒の重みとして私を打つ。衝撃する」(三井葉子)。約30年ぶりにまとめられた渾身の新詩集。装画=ヨシダコウブン

本体2,600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3293-8
2012年6月刊

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三井喬子『岩根し枕ける』

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人麿がスパーク!


夕陽は到来と呼んでもいいか
輝く金色の猿の出現
キキと降りてくる湧いてくる
(「金色の猿が」)

「鴨山の岩根し枕けるわれをかも知らにと妹が待ちつつあらむ」という辞世の歌を残し、水死による刑死を遂げたとの大胆な説が語られる柿本人麿……。数々の異説をきっかけに、〈猿〉を呼び込み、ひとつの源はふたつの大きな濁流となって終末的なカタルシスを描き出す。

本体2,600円+税
A5判上製・118頁
ISBN978-4-7837-3295-2
2012年6月刊

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宮内洋子『さつまはおりむし』

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生死のたぎり


産声をあげつづけている
小きざみに
大地の声 海底の岩肌の感触
はおりむしの揺れ
(「噴火」)

「紀行の果てに、人生の紀行と縄文時代以前のいにしえの音を探る。それが現在の宮内洋子さんの一つの成熟であろう。「死」もまた厳粛なる紀行である」(長谷川龍生)。10年ぶり待望の第5詩集。

本体2,400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3285-3
2012年6月刊

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榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』

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文字地獄


世界の総体は悉く文字のみによってなりたっているので、《私》ですら例外なく、許多のまなざしに射貫かれ、夥しい文字をまえに失明することを免れえぬ恐怖にうち震える《我々》は、さもしい聴覚を頼りに痺れた光線を辿ろうと企てるが、ハビタブル・ゾーン観音、遍く眼球をたなびかせ、鱗粉に塗れた孔雀の羽根で覆われた土地の者よ、帷子に施された約しい刺繍の紋様を、撫でる節くれだった指先を捥がれる者よ、聞きなさい、…… 
(「増殖する眼球にまたがって」)

「とりわけ取り澄ました、あるいは無自覚な制度的身体に対する、もうひとつの、真にオルタナティヴな身体が発する底知れぬ怒りの情動」(野村喜和夫)。「絶えざる意味の生成と解体の過程としての詩、誕生と消滅の連続としての詩」(福田拓也)。第49回現代詩手帖賞受賞の話題の新人、そのヴェールを脱ぐ。罰当たりな書法のもと展開される、文字地獄。発狂せよ! 装幀=伊勢功治

本体2,600円+税
B5判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3301-0
2012年6月刊



 

境節『歩く』

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青さが 見えてくるまで


はっきりとしたものは
すでに遠のき
とてつもない色合いを
ひとは求めはじめたのか
(「光を」)

生きていることは、何と悲しみに満ちていることか――。引き揚げの体験から震災を経験した現在の日本まで、ひとつながりの痛みの記憶。傷はふかくふかく奥にひそんで、痛みを放ちつづける。「歩く」という言葉に願いを託し、ただひたすらに思い、見つめる言葉の軌跡。

本体2,400円+税
A5判上製・108頁
ISBN978-4-7837-3294-5
2012年6月刊

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岡本章編『大野一雄・舞踏と生命』

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大野一雄論集決定版


大野の舞踏世界は、狭く舞踊芸術だけに限定されるものではなく、言語、文化、宗教などわれわれ人間存在の根底の営みと密接に関係し、その深部の構造を照らし返してくれる射程を持つもので、……「舞踏と生命」、根源的な生命の場の働きといった大きな課題も浮かび上ってくる。(はじめに)

大野一雄101歳の年に行われた国際シンポジウムを、新たに再構成し完全収録。伝統演劇や宗教との関係、ヨーロッパでの受容の推移など、多角的な視点から検証し、大野一雄の舞踏の全貌に迫る。新たな資料も付し、大野一雄論集の決定版として待望の刊行!岡本章、笠井叡、木村覚、國吉和子、辻惟雄、細江英公、柳澤田実、山下裕二、四方田犬彦、渡辺保ほか。装幀=宗利淳一+田中奈緒子

本体3,200円+税
A5判変型上製・296頁
ISBN978-4-7837-1679-2
2012年3月刊

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