詩の本の思潮社

ホーム新刊情報 > 榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』
新刊情報

榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』

null


文字地獄


世界の総体は悉く文字のみによってなりたっているので、《私》ですら例外なく、許多のまなざしに射貫かれ、夥しい文字をまえに失明することを免れえぬ恐怖にうち震える《我々》は、さもしい聴覚を頼りに痺れた光線を辿ろうと企てるが、ハビタブル・ゾーン観音、遍く眼球をたなびかせ、鱗粉に塗れた孔雀の羽根で覆われた土地の者よ、帷子に施された約しい刺繍の紋様を、撫でる節くれだった指先を捥がれる者よ、聞きなさい、…… 
(「増殖する眼球にまたがって」)

「とりわけ取り澄ました、あるいは無自覚な制度的身体に対する、もうひとつの、真にオルタナティヴな身体が発する底知れぬ怒りの情動」(野村喜和夫)。「絶えざる意味の生成と解体の過程としての詩、誕生と消滅の連続としての詩」(福田拓也)。第49回現代詩手帖賞受賞の話題の新人、そのヴェールを脱ぐ。罰当たりな書法のもと展開される、文字地獄。発狂せよ! 装幀=伊勢功治

本体2,600円+税
B5判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3301-0
2012年6月刊