詩の本の思潮社

ホーム新刊情報月別リスト > アーカイブ
新刊情報

北川透『海の古文書』

null


語りえぬものを揺り動かす力篇


まだ まだ 渚の砂粒ほどには粉々にされてはいないよ
おれの汚い手は狂っているけど……止めない
(ルー・シュンは、「狂人日記」を死後も、エーエンに書き続けるだろう。)
トマトと小魚と愛すべき無用の文字と
空っぽの弾薬庫と古代の夕陽を射落とす断崖と
血に染まった古文書を齧るドブネズミとを
(「四章 トランスミッション」)


一つの時代によって遺棄された、精神の狂気の内景に降りてゆく、地獄巡りの長篇連作詩。不可触な経験をいかに書くか。犇めきあう無数の声がことばの触手に突起する13章。現代詩手帖好評連載。装幀=間村俊一

本体2,600円+税
A5判変型上製・146頁
ISBN978-4-7837-3238-9
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

天沢退二郎『アリス・アマテラス 螺旋と変奏』

null


詩と詩人のゆくえ


(それはまるで、こうして黙って
部屋から部屋へめぐりあるくうちに
私たちの影が、影そのものも、消え去って行くことを
予め知っているようにも思われた)
(「母の家」)


「私たちの詩はつねにカタストロフの彼方へ向かうであろう」(おぼえがき)。〈人間〉と〈詩作〉に運命をもたらすスパイラルとヴァリエーションを貫いて、詩人は進まずにはいない、夢魔の涯て、詩の涯ての涯てまでも。諧謔を超える諧謔。著者25冊目にあたる最新詩集! 装画=黒田アキ

本体2,800円+税
A5判変型上製・162頁
ISBN978-4-7837-3235-8
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

吉田ゆき子『鼓膜の内外』

null


生の潮騒のリズム


胡瓜切る愉快な笑いはどこにいった?
もう刻んである漬物が
ビニルからぬるり
舌だして皿にすべる
(「チン!」)


地球を覆う人間暮らしのハラワタ覗けば、妖怪化する日常の油染み。土地の名から呼び起こされる声を聞き、確かな生の潮騒のリズムをとりもどす31篇。

本体2,200円+税
A5判上製・100頁
ISBN978-4-7837-3230-3
2011年5月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『秋山基夫詩集』

null


何ひとつあきらめない


詩の自立だと?
ばかたれな!
詩が床の間のツボのように自立したことがあったか
詩をもって朗読会にいけえ
(「プロパガンダの詩のためのプロパガンダの詩」)


「声と文字の聖域と考えられている詩の織物には、俗世間の日々の現実の裏地が欠かせないことを秋山さんは知っている」(谷川俊太郎)。第一詩集『旅のオーオー』から近作『オカルト』まで、詩集10冊から収録。詩の可能性を突きつめる絶え間なき実践、その活動の全貌を見通す。解説=片桐ユズル、福間健二、添田馨。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0970-1
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

現代詩文庫『川上明日夫詩集』

null


たまゆらの魂揺らぐ旅の往還


雲の詩型の夏は ふいに
終っていた

越前 道守荘 社郷 狐川 私の景色
私の古里
(「雲、夏水仙」)


「どこから漏れてくるのだろう、儚く幽けく懐かしいこの声調は」(安水稔和)。『夕日魂』(富田砕花賞)、『雨師』全篇をはじめ、7冊の詩集を収録。此岸と彼岸を揺れうごく漂泊者の魂と、その遥かなる道行きを一望のもとに照らし出す。解説=広部英一、長谷川龍生、倉橋健一、福島泰樹、宮内憲夫。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0969-5
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

文屋順『仕舞い』

null


未来に鳴る鐘


まだ何も見ていない
未知の人間性の彼方に
埋れている貴重な原石を掘り起こして
輝き始めるまで丹念に磨いている
(「魂の歌は歌えない」)


環境破壊や社会不安。終末感に包まれながら、掌に握りしめた言葉で生を一歩一歩踏みしめる。運命の外側から立ち戻り、光を呼びかける21篇。

著者インタビュー

本体2,200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3242-6
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

関中子『愛する町』

null


ひとつの歌を


わたしは
あなたとあるきながら結ばない想いをおく
「町に生きる」


雨に白む町。空へ、空へと永遠を夢見る町。自然からの警告に揺れながら、愛はひかりを投げかける。装画=著者


【著者の言葉】
詩集『愛する町』を編みつつ、町を愛せたらいいな、愛する姿が浮かんでくるといいなと思った。そう思うまでにだいぶ時間がかかった。
ところで、人は、町が大きくなることをめざすのではなく、その町がどんな大切な物をはぐくんでくれるかのために移動し、世代を引き継ぎ、町を営んでいきたいのだと思う。
「農業都市」を夢見た人々にはあきらめもあるが、町を営む喜びもある。その人々は老いてすでに多くが去った。その「緑」にかけた思いの大きさに比べて、つたない言葉は残ることも少ない。けれど、思いが深ければ忘れられない町になるだろう。
今、やっと「愛する町」という言葉を使えるようになった。そこへこの大震災津波・原発。わたしたちが原発の電力にどんなに依存し、それに気がつかないふりでいたかを思い知らされた。また、安全性を信じたいあまりに危機を想定すべき努力にふたをしたことも。おかげで、町を生きたまま失うかもしれない。
東北ばかりでなく首都にも他の町や村にもそれからそれへと「愛する町」のよみがえりを願う。そして、わたしの「愛する町」もその姿をいっそう明らかにできることを。


本体2,200円+税
A5判並製・96頁
ISBN978-4-7837-3241-9
2011年6月刊

本のご購入はこちらから

 

河邉由紀恵『桃の湯』

null


第12回中四国詩人賞受賞!


桃の湯は
しずかに忘れさせてくれるところなのよ
外套の買えない詩人はどこかへ行き
赤道に現われる人魚はしずんでゆく
ざあざあざあ (「ながあめ」)


「「桃の湯」の羊水のようにぬるい湯に浸かり、すべてを忘れ去り、すべてを思い出す。束の間あらわれ、消えていく人間を描いたこの詩集を読むと、自然や神仏の御わざの深さに陶然となる」(井坂洋子)。「現代詩手帖」投稿欄をへて、このたびいよいよ第一詩集を刊行。
写真=大河内信雄

【著者の言葉】
桃の湯の表には誓願寺という観音寺があり裏にはドノヴァン7というホテルがある。 桃の湯はその間にある、ねっとりと空気がしずかな場所だ。 おばあさんはここに来るといつもあまいようないたいようなへんな気持ちになる。 おじいさんもあまいようなゆるんだようなへんな気持ちになる。 桃の湯の周りにはらくだ公園やかるでや文庫や水月ホテルやあざみ食堂がある。 あの世とこの世のあわいのようなエリアで少女や男や老人たちがつむぐ秘密めいた おこないの数々。

本体2,400円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3244-0
2011年5月刊

本のご購入はこちらから