詩の本の思潮社

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河津聖恵『夏の花』


極小の祈りのすがた


無数の黒い穴は問いもだえる
死ぬことも生きることも滅んだのに
宇宙の一点をいま花の気配が叛乱する
(「月下美人(一)」)

「ここに花は咲くのか、なぜ咲くのか――いまも闇を落ちながら咲きつつ裂く声に耳を澄ませながら、新たな詩の力を考え感じていきたいと思っています」(あとがき)。原発事故後に書き継がれた、花をモチーフとする、魂の17篇。装画=玉川麻衣、装幀=毛利一枝

本体2300円+税
四六判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3567-0
2017年5月刊

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甘里君香『ロンリーアマテラス』


生命の設計図が引かれる


空から一粒の真珠がすべりこんだ瞬間からやり直す
匂いと温もりと目を合わせて会話する女の世界に
比較競争数字組織立ち入り厳禁の札を立てる
(「数字組織立ち入り禁止」)

「〈子どもを抱いているのに苦しいのは罪ですか〉。延々と引き継がれてきたおかあさん。しきたりも社会通念もない、原初の、のびやかに解放された縄文への憧れを秘めて、甘里さんは疼く心でまるごと時代を抱え込もうとしている」(中塚鞠子)。
現代の灰色の覆いの下、母と子の生活に点滅するエラーボタン。小さな魂が全身で発する痛みにヒリヒリと共鳴し、空の故郷と対話する、渾身の第1詩集。

本体2200円+税
A5判並製・112頁
ISBN978-4-7837-3569-4
2017年4月刊

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陶原葵『帰、去来』


注目の第3詩集


あれが誰だか知らないはずはなかろう

知らないはずはないのですが実をいうと
それは誰だって かまやしないのです
(「帰、去来」)

陶淵明の隠遁に思いを寄せ、自らの来し方行く末をなぞらえるように身を添わせていく。中原中也、高村光太郎、萩原朔太郎……と近代詩を逍遙しながら、自身の言葉を小石のように置いていく。『明石、時、』から7年、注目の第3詩集。装画=津田貴司、装幀・組版=川本要

本体2500円+税
菊判上製・104頁
ISBN978-4-7837-3559-5
2017年4月刊

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竹内新編訳『楊克詩選』


「民間」の詩人


大豆・コーリャンと土地を争い
住み慣れた家に住む老若男女と土地を争っている
今はビルディングが都市の作物だ
(「いま都市の作物ビルディング」)

「民間の運命とは、永遠に権力を消し去り、放棄することを意味する」(楊克)。「朦朧詩」以後、1980 年代末から90年代に登場した「第三代」の実力派詩人、楊克。平明な表現で隠れた社会現実を浮かび上がらせたその代表作を網羅し、エッセイやインタヴューなど豊富な資料を収載。個人の真に独自の経験をあらわす「民間」の詩学を凝縮する。

◎楊克(ヤン・クー)
1957年江西省生まれ。中国「第三代」の実力派で、「民間」の立場から詩作する代表的詩人の一人。主な詩集に『見知らぬ交差点』『不器用な指』『関係と無関係』『柘榴の炎』『楊克の詩』など。『中国新詩年鑑』主編。国内外の詩人と幅広い交流があり、受賞多数。現在、広東省作家協会副主席、国家一級作家。

本体2400円+税
四六判並製・226頁
ISBN978-4-7837-2773-6
2017年4月刊

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古賀大助『汽水』


人が経つ 時が交じる


――まちんしゃい
もういないひとの声が降る
消えたトランクを胸に抱いていた
東へ いざ
おわりがはじまるようだ
(「夏のおわり」)

水のように形をかえる時間の汽水域に佇み、なつかしい人や風景、日常に滴るかすかな音をきく。23年ぶり、待望の第3詩集。

本体2400円+税
A5判変型上製・114頁
ISBN978-4-7837-3563-2
2017年4月刊

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