詩の本の思潮社

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新刊情報

瀬崎祐『片耳の、芒』


まだ暮れませんか


声がとだえれば すでに季節は芒だった 耳たぶを擦られた日のあったことが 風の動きでかなたへ伝えられていく そして片耳のなかに閉じこめられていた闇が解きはなたれていく
(「片耳の、芒」)

「意識を少しずらせるだけで、実と虚は容易に役割を入れ替えるのだった」(あとがき)。分断された虚実が結びつくとき、二重写しの彼方から捻れた風が囁きだす。欠けた風景に名は消え、言葉はいつまでも肉体を裏切る。異貌の物語に誘う第6詩集。

本体2200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3538-0
2016年10月刊

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浜江順子『密室の惑星へ』


第8回更科源蔵文学賞受賞!


極く小さなバッタと青色の朝顔に隠れても
脳はさわさわ発芽しない
(ガラスを食うという舌は、植物と話をしているらしい)
(「発芽しない」)

「浜江順子の詩作品をかたちづくっているもの=詩の言葉が、すでに詩人から独立し、読者によって読まれるときに、決然とした、〈批評〉という特質をそなえ、それをきびしくつよく発散しているという、厳然たる事実」(天沢退二郎)。常に他者から眼差されるアイデンティティの内奥の襞を激しく衝く、新詩集。カバー作品=建畠覚造

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3537-3
2016年9月刊

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萩野なつみ『遠葬』


第28回歴程新鋭賞受賞!


在ることのかなしみを
くるぶしに溜めて
わたしの舌を待ついのちの
遠い水を辿る
(「水脈」)

「事後のようでもあり、事前のことのようでもある、不思議な静けさのなか……言葉は繊細に紡がれていく。書物はめくられていく」(高貝弘也)。「ここに在るということからもっとも近く、かつもっとも遠い外界に、対峙し相互滲透しあう地点をたえず求め、そこに鮮烈にさらされている」(杉本徹)。待望の第1詩集。2刷出来!装幀=カニエ・ナハ

本体2000円+税
四六判並製・114頁
ISBN978-4-7837-3536-6
2016年9月刊

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和田まさ子『かつて孤独だったかは知らない』


ロンドン詩篇


ここで迷路に入ったと
もっともらしくいうのはたやすいが
おそらくちがう
懐かしい夢をまだ見ているのだ
(「ブエノスアイレス」)

ここでもまた出口から始まって入口に至る旅をする。ロンドンの街を彷徨し、生の手触りを紡いだ27篇。あらたな展開を示す、出色のオケージョナル・ポエムズ。2年ぶりの第3詩集。写真=著者

本体2200円+税
A5判変型並製・112頁
ISBN978-4-7837-3533-5
2016年9月刊

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近藤洋太『辻井喬と堤清二』


戦後を生き抜いた詩人の宿命と謎


辻井喬と肩を並べる経営者はいるだろう。彼より優れた詩人はいるだろう。けれども辻井喬のように宿命的に経営者であり、かつ詩人であったような人物は、空前にして絶後なのだ。
(第10章「辻井喬の遺業」)

〈堤清二〉と〈辻井喬〉、二つの貌が生まれた思想的端緒とは何か。最晩年のインタビューや証言、作品の精緻な読解をもとに、辻井喬が生き抜いた戦後に伴走し、人間存在の不条理に切り結ぶ詩精神を問い直す。渾身の長編評論。装幀=佐々木陽介

本体2300円+税
四六判上製・236頁
ISBN978-4-7837-3806-0
2016年10月刊

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