まだ暮れませんか
声がとだえれば すでに季節は芒だった 耳たぶを擦られた日のあったことが 風の動きでかなたへ伝えられていく そして片耳のなかに閉じこめられていた闇が解きはなたれていく
(「片耳の、芒」)
「意識を少しずらせるだけで、実と虚は容易に役割を入れ替えるのだった」(あとがき)。分断された虚実が結びつくとき、二重写しの彼方から捻れた風が囁きだす。欠けた風景に名は消え、言葉はいつまでも肉体を裏切る。異貌の物語に誘う第6詩集。
本体2200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3538-0
2016年10月刊
