詩の本の思潮社

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大島静流『蔦の城 lux poetica④』

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不穏な声に


無限に増殖して根を張る相容れない生命の陰で
諦念に引き攣ってもう明くことのない眼の端を
いつか指先で書き捨てた
不注意な呼び名の残りが漂う
(「蔦の城」)


大島静流の詩の重心がひときわさがっている。安定ということではない。重心はくだって、薄暗く、不安定で、不確かな地点から視線が始まってゆく。薄暗いビオトープのミクロコスモスから少しずつゆるやかに紡ぎだされる言葉たち、この薄曇りの世界に紡ぎだされる言葉たちは、竦みながら、しかしやがてたぐい稀でたしかな手応えをもって、孤独のうちに燦然とした世界を創りあげる――朝吹亮二

思念と現実の亀裂を幻視し、堅固に構築される詩語の城。いっそうの深みへと降りてゆく第2詩集。好評重版! 装画=来田広大、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4564-8
2023年11月第1刷 2023年12月第2刷

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張文經『そらまでのすべての名前 lux poetica③』

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わたしのはじまりへ


あめが降らない冬の日は
いつでもかわりに
見えない 名前がふりそそぐ
(「ふらない日にも」)


生きていることに理由のわからない喪失感を抱き、溶けていなくなることを甘やかに望みながら、青空に失意とも安堵ともつかないすうっとしたものを感じた経験が、もしあなたにもあるなら。その時のあなたのために、この詩集に出会ってください。「空」は、その漢字の意味をいくつも重ねた、張さんの独特の詩語です。ことば以前のことば、わたし以前のわたし。そのまどろみへの憧れと、背いて書くしかない孤独が、頷きかけてくるような詩集です――暁方ミセイ

うまれたことの痛みとともに、言葉をしって、せかいに呼びかける。ふりそそぐ名前のなか、あふれる24の抒情。好評重版! 装画=髙木大地、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4563-1
2023年11月第1刷 2023年12月第2刷

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小川芙由『色えらび lux poetica②』

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リズムの精彩


身体を無視して眼の奥に心を探し当ててしまうから光。そこにねこを、子音のような傷を、隠してやる。しきりに在るばかりの孤独が現象が、ぐうぜんを、見つけたときの反応、3、2、1、
(「ひみつの丘があったこと」)


この凜々しさはなんだろう。よく観察された風景と実直な行為とが織りなす、光まみれの詩群。乱反射することばのファンタジアの中に、ひとりの開け放たれたひと、すっくと佇むひとがいて、こちらをまっすぐ見つめている――大崎清夏

わたしの、だれかの生きる、色とりどりの遠景。2023年度〈ユリイカの新人〉による、あざやかな出発。好評重版! 装画=木村彩子、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4562-4
2023年11月第1刷 2023年12月第2刷

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芦川和樹『犬、犬状のヨーグルトか机 lux poetica①』

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自在な仕草、かたち


集合、離散する、金魚と金魚鉢。雨粒だったら窓ガラスの上をいつまでも泳ぎ回るわ。馬鹿ね、あれは走っているのよ。蒟蒻(こんにゃく)はいまも蒟蒻畑で生まれている。
(「三つ葉のオセロ、日傘を持たない」)


干菓子が(言葉が?)散り散り、寄せ集められたり、寄せ集められなかったり。笑う笑わない笑う丸ゴシック体。自在に飛び回るハトたち(ハトたち?)。とげとげしい破壊にならない配慮。かたまった言葉や乱雑な言葉が多い現実にくたびれたら、新しい楽しさがたくさん舞う芦川詩集を読みましょう――小笠原鳥類

(非)生物として生きる文字たちがちらばり、つらなって、かたまりになる。今年の現代詩手帖賞詩人の、かわいいユートピア19篇。好評重版! 装画=横山麻衣、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製
ISBN978-4-7837-4561-7
2023年11月第1刷 2023年12月第2刷

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『岡崎純全詩集』

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北陸の生を蝸牛の如く見つめ築き上げた豊穣な詩風土


ぬりのはげかけた
黒い重箱の
その底から
こんのちの
文字にならない
いびきが漏れる
(「重箱」)


もっとも根源的な福井(北陸)人を語った詩人として、長く記憶されるべき詩人であろうと私には思えてならない。――倉橋健一

岡崎純が生地の民衆の記憶や伝承、世間話、俚諺を背景に、歌い語りの詩法を手堅く手中におさめた時、土地の口承は寓話性を帯びてくる。――金田久璋

岡崎純の詩の世界は娑婆苦に耐えて懸命に生きる人間の魂を慰藉し、深い安堵感をもたらしてくれる。得難い詩である。――広部英一

北陸の農村でくりかえされる寡黙な生と死に寄り添い、その習俗や自然を根に、滋味に溢れた独自の詩風土を築き上げた岡崎純。『重箱』から『寂光』にいたる単行詩集6冊と生前構想の未刊行詩集、単行詩集未収録詩篇361篇を収録。詳細な年譜と解題を付し、その全詩業を一望する。装画=安井美紀子
解説=倉橋健一、定道明、広部英一、笹本淙太郎、金田久璋/年譜・解題=安井杏子編

11000円(税込)
A5判上製函入・672頁
ISBN978-4-7837-2387-5
2023年11月刊

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佐藤文香『渡す手』

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第29回中原中也賞受賞!


我々は
書き下し文のように
ひらかれた気分をしていた
(「森と酢漿」)


まなざしに裏打ちされた小さな言葉ひとつひとつが、現在の暮らしをいつしか大きく抱きとめる。平熱というしずかな熱だけがさわることのできる言葉や感情の細やかさがある。――岡本啓

人と世界との境界にあるものは、間違いなく身体である。佐藤文香『渡す手』は、世界と接する身体、そして身体を通じて我々に感受されるもの、すなわち五感を極めて丁寧に扱った詩集だ。――石松佳

あなたの言葉は親密ではない。耳もとで囁きかけられるのが苦手なわたしには、紙からにらみつけられることが、隠し包丁が入れられているかのようにすぱすぱと切れていく言葉が心地いい。――平岡直子

ジャンル、形式、社会通念にとらわれない自由な歩行。俳句に軸足を置きながら、境界を自在にわたっていく。「現代詩手帖」連載の6篇を含む、詩的濃縮を実現する新詩集。装幀=佐野裕哉 カバー英訳=Corey Wakeling、小磯洋光 協力=京都文学レジデンシー

2200円(税込)
四六判並製・88頁
ISBN978-4-7837-4552-5
2023年11月刊

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和合亮一『such and such』

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明言できないもの


一頭でも良い
極限の角を生やし
明日へ
生まれるため
(「シカジカ然然」)


見よ、記憶の中で肋骨になったままの未来が、光の口唇から奔出する!オートマティズムの限界を超え、幾層もの次元をしなやかに飛翔する、言語の新世界。装画=ミロコマチコ、装幀=中島浩

2420円(税込)
菊判上製・104頁
ISBN978-4-7837-4549-5
2023年10月刊

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