詩の本の思潮社

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新刊情報

中塚鞠子『水族館はこわいところ』

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いないって どんなこと


山鳩が近くでほっほうほっほうと鳴く
ムササビが訪ねてくることもある
いつでも椅子のひとつは空席のまま
陽が昇ったり沈んだりする
(「椅子」)


「ランボーなら十年、私たちは百年かけようという盟約組のひとりとして、中塚鞠子は長年に亘って、少女期から妻、母から祖母へとつづく〈女〉性をかいくぐりながらひたすら生活を凝視、低処(ひくみ)に徹したきびしい詩を書き続けた。近代文学者を生んだ母たちを捉えた『「我を生まし足乳根の母」物語』の著者にふさわしい八年ぶりの新詩集」(倉橋健一)。日々の生活を送りながら、いつも詩とともに在り続けてきた。詩人のいまを伝える40篇。装画=あまのしげ

2860円(税込)
A5判変型上製・128頁
ISBN978-4-7837-4531-0
2023年9月刊

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水田宗子『吉原幸子 秘密の文学ーー戦後女性表現の原点』

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世代を超えたフェミニズム


戦後批評は、女性の内面を捉える思想を無視してきただけでなく、世界的に共通する性差別と戦争の暴力が女性に残したトラウマに焦点を当ててこなかった。一九三〇年代に生まれ、五〇年代に書き始めた戦後第一世代の女性詩人に関する批評の欠落は、日本の戦後批評のみならず、二十一世紀の批評に偏りを生じさせている。(「はじめに」)


性規範の外部への逸脱と解放を志向する吉原幸子の表現は、シルヴィア・プラス、大庭みな子といった、20世紀の作家たちが共通して引き受けた差別とトラウマの痕跡であり、表象であった。

日本の戦後批評における女性の不在を鋭く喝破する問題提起の書。

装画=柳澤紀子、装幀=伊勢功治

2640円(税込)
四六判上製・160頁
ISBN978-4-7837-3829-9
2023年8月刊

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宮部修『父、高祖保の声を探して』

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昭和前期の抒情詩 いま ここに


蛾は
あのやうに狂ほしく
とびこんでゆくではないか
みづからを灼く 火むらのただなかに
わたしは
みづからを灼く たたかひの
火むらのただなかへ とびこんでゆく
あゝ 一匹の蛾だ
(「征旅」)

「わたしは「征旅」の中に父の唯一の声を聞き出すことが出来た。これが本書の執筆動機なのだ。わたしはあえて「征旅」を父の辞世の詩と判定した。」(「おわりに」)


堀口大學に『雪』の詩人と評され、ビルマに戦没した高祖保。その抒情詩の世界を元新聞記者の85歳の息子が精緻に辿る。出征直前の詩「征旅」に響く声とは――肉親ならではの渾身の評伝。


目次

はじめに
第一章 詩人、高祖保の肖像
幼年時代の苦悩/ゆるぎない人間関係/編集者魂/詩の限界はどこまで広がるか
第二章 父の声
第一詩集『希臘十字』 モダニズムにとりつかれて/第二詩集『禽のゐる五分間写生』 詩に俳味をとりこむ/第三詩集『雪』 「礼儀正しさ」/第四詩集『夜のひきあけ』 戦火のもと誕生した生命/追悼全詩集『高祖保詩集』収録の未刊詩集『独楽』 父の詩の新展開/辞世の詩 達観の八行、強烈なリズム
おわりに
年譜

1980円(税込)
四六判並製・200頁
ISBN978-4-7837-3830-5
2023年8月刊

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山本育夫『こきゅうのように 月録詩集2020.04-2022.01』

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2冊同時刊行


ことばは あなたの くちをかりて
この世に 出現 したんだね
(「こきゅうのように」)


不安定な時代のただなか、かわらずひとり書きつづける。かろやかに切実に、くりかえし、詩のはじまりに立つ91篇。『ことばの薄日』と同時刊行!装幀=甘利弘樹

3300円(税込)
四六判並製・232頁
ISBN978-4-7837-4542-6
2023年8月刊

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山本育夫『ことばの薄日 月録詩集2019.09-2020.02』

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2冊同時刊行


意味に追いつかれないように
振り切る
それが生きるということだ
(「鈍足」)


毎日、毎日、詩に向かい、ことばを探して。詩誌「博物誌」に書き継いだ、生きる現在の75篇。『こきゅうのように』と同時刊行!装幀=甘利弘樹

2640円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-4541-9
2023年8月刊

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田中眞由美『コピー用紙がめくれるので』

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歴史が蛇行する地球


机の上に白いジャングルが育ちはじめると
南の島の森は 声をひそめる
ヴィリジャンからバーントアンバーまで
(「コピー用紙がめくれるので」)


世界を覆う非日常、際限のない人間の欲望を鋭く眼差し、「生きる」ことに真向かう新詩集。装画=著者

2750円(税込)
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-4537-2
2023年8月刊

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藤本哲明『attoiumani_nizi』

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ピリオドを臓腑にうつ


中途半端に一行に 託していくそういう話法で続くものが
続くように繫いでいく その仕草でひとつ余らせ
余ってしまった 長く続く、間違ったリリイフのことを思った
(「ヒア&ゼア、ここを離れて他のどこかに来た」)


「その/海辺沿いの白い光、/陽を浴びて自由落下するような/ギリギリの生、/そういうもの、に/慣れすぎていた」(「旧二号、あるいは傷ついても陽を浴びた要約がある」)。最も後方から、詩は遅れてやってくる。その器に体を預け、いっしんに記された25の抒情。6年ぶり、待望の第2詩集。装画・挿画=小穴琴恵

2640円(税込)
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-4535-8
2023年7月刊

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松岡政則『ぢべたくちべた』

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第39回詩歌文学館賞受賞!
第57回日本詩人クラブ賞受賞!


ぢべた
くちべた
ぱらぱらと落ちてきた
(「くぬぎあべまきうばめがし」)


「どこまでがわたしのもので/どこからがおやおやのびねつなのか/るいがおよばぬようにかいた聲にならない聲をかいた」。あるくを通して、艸に出会い、台灣に出会い、著者にしか触れえない強度で視るもの聴くものに触れていく。現代詩文庫『松岡政則詩集』から2年ぶり、9冊目の単行詩集。造本=二月空

2530円(税込)
A5判並製・104頁
ISBN978-4-7837-4539-6
2023年7月刊

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