詩の本の思潮社

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斎藤紘二『挽歌、海に流れて』

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世界からこぼれる悲しみ


此岸からかすかに流れてゆく旋律がある
それはあのとき失われた言の葉が
言霊となって海に浮かんでできた歌
生者が死者を悼む挽歌である
(「挽歌、海に流れて」)

東日本大震災、福島の原子力発電所事故から二年――。世界の片隅で記憶される前に、すでに忘却が始まってはいないか。『二都物語』『海の記憶』で原爆や戦禍に真向かった詩人が、再生と希望の祈りをのせ、失われた多くの言葉でうたいあげる。

本体2,400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3342-3
2013年3月刊

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山口洋子『魔法の液体』

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一瞬の静物画


逆さからかいま見える誇らしげな列列椿 月はいっそう青く 壁に留められた黒いサンチョ・パンサのかげ絵 あぶりだされつらつら考える
(「列列椿」)

「展開があってかげ絵のように幻視化されてくると、ぜんたいがあいまい色に染まり、ついにはそこが下意識の視界であることに気づかされる。でも夢の記述ではない。そこでよく乾いた上質の情念世界になる」(倉橋健一)。軽妙かつ新鮮に、シュールな世界が立ちのぼる。からっと明るい一瞬の静物画として結実した28篇。著者24年ぶりの新詩集。

本体2,200円+税
A5判変型上製・98頁
ISBN978-4-7837-3343-0
2013年2月刊

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『現代詩文庫・中森美方詩集』

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40余年の詩的営為の結実


夕暮れの入江まで私と歩いてほしい
目を閉じると村の灯りがともり幻に落ちつき
こうやって生きて在ることに馴れるまで
水鳥のそばで潜んでいたい
(「入江まで」)

「この文庫を手にした多くの読者は、主体的にも客観的にも荒ぶる時代を生きた詩人の特異な来歴、清冽な抒情と批評性にみちた詩作品に目を見はるだろう」(平林敏彦)。70年代の『暗域』『首のない神』『朝の水』など初期詩集から、故郷熊野を背景に、独自の民俗学的思考を反映させた叙事詩集の傑作『ある消息』『荒ぶれ鎮まれわが熊野』『仙蔵の海』、そして近作の『魂の日』『薄月の光』『たかはらの蝶』に至る、珠玉の作品群と奥深い詩的思考の変遷をたどる待望の選集。解説=北川透、神山睦美、寺田操。

本体1,165円+税
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0976-3
2012年12月刊

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