詩の本の思潮社

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永島卓『水に囲まれたまちへの反歌』

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もう一人のわたしに


樹葉から落ちる透明な雫を掌に包み
寂しさで震える川の物語を
遠い昔のように知っておりました

わたしの水の筋肉をあなたに買ってください
あなたの空の野菜をわたしに売ってください
(「きょうはきのうのあしたです」)


「長年碧南市長を篤実に務めた永島卓氏の中に、絢爛たる言葉で魚になり、鳥になり、草になり、水になる超現実的な変身の詩を作る詩人が隠れていたのである。私は、市長の作品とは思えない不思議な光を放つすぐれた詩集『水に囲まれたまちへの反歌』を推奨したい」(梅原猛)。『碧南偏執的複合的私言』から45年、なおも固執してやまないモティーフを接着と離反のせめぎ合いのなかで昇華する。装画=杉浦イッコウ

本体3,200円+税
B5判変型上製・106頁
ISBN978-4-7837-3232-7
2011年4月刊

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中森美方『たかはらの蝶』

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たましいの風景へ


もう夢のきれぎれを語るな
沈みゆくものを惜しむな
秋の光をわがものとせよ
(「たかはらの蝶」)


さまざまな風景のなかにたたずみながら、失われた時間とみずからの存在を問う。知性と感性の鮮やかな融合。「春の魂」「夏の光」「秋の命」「冬の原」の4章39篇から成る、評論集『詩語のフォークロア』につづく詩的実践。

本体2,200円+税
四六判並製・98頁
ISBN978-4-7837-3228-0
2011年3月刊

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也斯詩集/池上貞子編訳『アジアの味』

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境界線を越えて


親愛なる友よ
僕もそれは不思議だと思う
緑色のカンランがどうして漬けると黒色になるのか
野菜は漬けるとどうして様々な味を醸し出すのか
ひと碗の白がゆをうまい具合に
大千世界の滋味に染めあげる (「潮州のカンラン」)


「美食と観光。日本人が香港に対して抱いているステレオタイプの認識を、也斯はみごとに転位させてみせる。料理は失郷の記号であり、人の移動とは追い立てられ、難民となることである。詩を書くことはその証言者となることだ」(四方田犬彦)。越境し、越境される香港の地図に色とりどりの食材を載せて、新しい詩の世界を運んでくる。香港を代表する詩人、待望の邦訳選詩集。

本体2,500円+税
四六判並製・186頁
ISBN978-4-7837-2758-3
2011年4月刊

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高塚かず子『水の旅』

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あふれだす詩


はるかな時間 天空で待っている
これから生まれるこどもにも届く
深いしずかな声が流れる
(「水の子守唄」)


水は、過去、現在、未来、長い時間を流れつづける。他者に出会って生命が吹き込まれる言葉たち。組曲「水の旅」ほか未来に向けて呼びかける32篇。『生きる水』(第44回H氏賞)、『天の水』につづく、12年ぶりに編まれた、待望の新詩集。


【著者のことば】1960年6月、樺美智子が死んだ日に詩を書きはじめました。 衝撃を今でも覚えています。14歳でした。「水の旅」の最終確認がすんで、しばらくして、大地震、津波が起こりました。原子力発電所が壊れ、今なお予断を許さない状況です。この衝撃のさなか、自分自身に問い続けています。私にとって、詩とは何かと。答はまだみつかりません。ただ、詩がなければ、読まねば書かねば今まで生きられなかったことだけは確かです。

本体2,500円+税

A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3231-0
2011年3月刊

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