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四元康祐『言語ジャック』

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詩のない荒野へ


数えきれぬ名詩動詞形容詞形容動詞助詞助動詞間投詞句読点括弧疑問符その他の記号が鬱蒼たる密林をなして立ちはだかり幾重にも重なったその枝葉の隙間の薄暗がりから何者かの目玉が(一個だけ)こっちを見ている。

(「言語の密林」)
 
言語の裏側はあらゆるものが詩だ
言葉に覆われた現代になおも言葉で挑む
鬼才の揮身作!
不意うちのようにジグザグに
四方に飛び散る43の詩篇が
表層言語の時代に風穴をあける!!
 
ここ数年は田口犬男氏らとの対詩や翻訳などが話題を呼んできたが、単行詩集としては4年ぶりの新作となる。ずばり言語をテーマに、ひさびさに氏ならではの発想力を全開にした作品群だ。誰でも入りこめる豊かさは氏の変わらぬ特性だが、その根底には、詩と言葉と主体の三つ巴に対する深い考察がある。詩は言葉なき世界にその根をおろしているが、それを感受するための意識は言葉なしでは成り立たない。とすれば? 四元流の揮身の回答がこの詩集といえるだろう。装幀=井原靖章
 
四元康祐(よつもと・やすひろ)
1959年大阪府寝屋川市に生まれる。中学・高校を広島学院の寮で過ごす。82年上智大学英文学科卒業。83年結婚。86年米国移住。90年ペンシルバニア大学にて経営学修士号取得。91年詩集『笑うバグ』(花神社)。94年ドイツ移住。2002年詩集『世界中年会議』(山本健吉文学賞)。2003年詩集『噤みの午後』(萩原朔太郎賞・以上思潮社)。2004年詩集『ゴールデンアワー』(新潮社)。2005年対詩集『対詩 詩と生活』(小池昌代と共著・思潮社)。2006年詩集『妻の右舷』(集英社)。2008年対詩集『対詩 泥の暦』(田口犬男と共著)。訳詩集サイモン・アーミテージ『キッド』(栩木伸明と共訳・以上思潮社)

本体2,400円+税
A5判変型159頁
ISBN978-4-7837-3172-6
2010年3月刊 品切



四元康祐の書籍
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『噤みの午後』
問いかけと答とが見つめあったまま口を噤む謎の前で
 
シガニー・ウィーバーはエイリアンとたたかい、中原中也はパリの街をあるく…
猥雑きわまりない散文の海に網を投じて、捜しだす、詩。
どこでもない場所にたつ詩人の自在な作品群。
時代や言語を超えた魂の領域をもとめて―
 

本体2,400円+税
A5判変型143頁
ISBN 978-4-7837-1367-8
2003年7月刊

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『世界中年会議』
もう書くことがない、と詩人たちは思ってきた。すべては書かれたのだ、と詩人たちはいってきた。新しいことはなにもない、と。四元康祐を読んでいると、それはみんな、書けない詩人たちの言い訳ではないかと思えてくる。四元は、こういっているのである。書くことなんていくらでもあるじゃないか、と。
…………………………高橋源一郎

 
「こういう詩が出現することを私たちは待ち望んでいた」と谷川俊太郎氏に絶賛された『笑うバグ』から11年。生の只中にひそむ詩を見つけだし、個人を含む世界全体をとらえる、現代詩のあらたな冒険。
 

本体2,200円+税
A5判120頁
ISBN 978-4-7837-1324-1
2002年9月刊

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『現代詩文庫179巻 四元康祐詩集』
 
収録詩集…『笑うバグ』『世界中年会議』『噤みの午後』『ゴールデンアワー』
作品論・詩人論…栩木伸明、谷川俊太郎、小池昌代、穂村弘、大岡信
 

本体1,165円+税
四六判変型160頁
ISBN 978-4-7837-0954-1
2005年7月刊

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『対詩 泥の暦』(田口犬男と共著)
頭のなかに
詰め込まれた言葉を
藁みたいに干せたらいいな

 
柔らかな詩のからだに明晰なポエジーが煌めく。
現実よりディープな現実へ。
ことばのタイトロープを伝ってゆく、その先は?
「眠る男」と「夢を見れない男」の、
ユーウツと希望の一千日。
 

本体2,000円+税
四六判109頁
ISBN 978-4-7837-3057-6
2008年5月刊

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『対詩 詩と生活』(小池昌代と共著)
響きあう孤心
 
ボーニフッテモ カマワナイ

 
詩意識と生活意識の豊かな拮抗のうちに言葉を紡ぎ出す名手が、その亀裂と融和そのものを手探りする。交錯する2つのいま・ここ。現代詩のフロントラインに立つ注目の詩人が、矛盾と逆説をもって「私」をひらく鮮烈な試み。
 

本体2,000円+税
A5判140頁
ISBN 978-4-7837-2110-9
2005年10月刊

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陳黎・上田哲二編訳『華麗島の辺縁』

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4月17日放送予定NHK週刊ブックレビューで蜂飼耳さんに紹介されました。
 
我々の島は
黄色いひずんだ釦


私を飲め
私の血を飲め
私のミルクを飲め
私の唾液を飲め
私の肉汁を飲め
私の愛液を飲め
私の痙攣を飲め
私の不貞を飲め
賞味期限のうちに

 

台湾を代表する詩人の
はじめてのアンソロジー

台湾東岸の植民都市花蓮に自らを定め、クレオール的状況のただなかで、漢字による詩の可能性の極限に挑む。怒涛のごとく読者の胸元に撃ち込まれる連呼する言葉の塊。
新国誠一の影響を受けたという視覚詩、台湾の先住民族アミの言語から音をひろって詩のなかに織り込む作品、俳句の影響を受けた三行詩の連作、多様な作品群はアジアの詩の歴史そのものを体現している。日本語で詩を書く意味を考えるときにこそ向きあうべき1冊。
 
陳黎(チェン・リー)
台湾東海岸の小都市花蓮で1954年に生まれる。1976年に台湾師範大学英語系を卒業し、故郷の花蓮に戻り中学教師となる。近年は国立東華大学の創作コースなどで教え、花蓮で毎年行われる太平洋詩歌祭の運営責任者。70年代よりモダニズムに影響を受けて創作を始め、80年代には社会的政治的なテーマが濃厚な作品が多い。90年代からは主題もスタイルも多様化し、本土文化への関心とともに言語、様式の実験的な作品による新しい台湾意識の創出を試みている。これまで10冊以上の詩集を刊行。西洋からの「横の移植」を主張した紀弦(1913-)などの世代と比べると、陳黎の世代では西洋や東洋(日本)の両方の詩から学び、更に中国詩の遺産を活かして台湾文化の再定義を行っている。散文家、翻訳者としても知られ、多くの著書がある。妻、張芬齢との共訳でプラス、ヒーニー、ネルーダ、パス、ザックス、シンボルスカなどの詩を中国語に訳し『ラテンアメリカ現代詩選』、『世界情詩名作100首』など15冊以上の訳書がある。
 
上田哲二(うえだ・てつじ)
1954年大阪市生まれ。大阪大学博士(言語文化学)、米国ワシントン大学修士。台湾文学、日本近代詩歌専攻。台湾中央研究院中国文哲研究所博士後研究を経て、現在、慈済大学東方語文学系専任教員。著訳に『台湾モダニズム詩の光芒』(三恵社)『遙望の歌―張錯詩集』『カッコウアザミの歌―楊牧詩集』『奇莱前書―ある台湾詩人の回想』(以上、思潮社)『台湾現代詩集』『シリーズ台湾現代詩』(以上共訳、国書刊行会)等がある。

本体3,200円+税
四六判301頁
ISBN978-4-7837-2886-3
2010年2月刊

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上田哲二の訳書
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楊牧『奇萊前書』
詩はどこからくるのだろう?
詩は大きな悲しみかあらくるのだろうか?
 
日本による統治、国民党政府の弾圧、原住民アミ族との出会い……歴史に翻弄されながら、かつての植民地都市花蓮で少年は詩の端緒を見出す。台湾における詩人散文の傑作、完全邦訳。
 
楊牧(よう・ぼく/ヤン・ムー)
1940年、台湾花蓮に生まれる。台中の東海大学卒業、兵役ののち渡米、アイオワ大学大学院を経てカリフォルニア大学バークリー校にて博士号を取得、現在シアトルのワシントン大学教授。15歳で詩人としてデビュー、これまで12冊の詩集がある。またW・B・イェイツ、ガルシア・ロルカ、シェークスピアなどの中国語翻訳でも知られている。台湾本土出身の戦後世代を代表する詩人。

本体3,200円+税
四六判368頁
ISBN 978-4-7837-2876-4
2007年12月刊

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張錯『遙望の歌』
きみの終夜の話はいつまでも潮気となって
満城の百花の錦繍をしめらせ
早朝の渓の水辺は錦をさらした図案となった
私のしずみがちな旅の心は依然として
ひっそりと遠くの岸辺の漁火にもどっていく。
 
マカオに生まれ、香港に育ち、台湾で学び、現在はアメリカに住む“浪遊”の詩人、張錯。はるか唐代の陶人形たちに命を吹きこみ、時空を超えて自らのアイデンティティをめぐる旅にでる。最新の2冊の詩集を中心に、万華鏡のように展開する新しい言葉の世界。
 
張錯(チャン・ツオ)
1943年、マカオに生まれる。台湾の国立政治大学を経て1967年に渡米、現在南カリフォルニア大学教授。台湾詩の英訳による紹介や、アメリカ現代詩の中国語への翻訳など、研究者としても活躍している。

本体2,300円+税
四六判173頁
ISBN 978-4-7837-2870-4
2006年12月刊

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楊牧『カッコウアザミの歌』
巨砲には錆 硝煙は
散逸した史書のなかを飛んでいく
俺は苦悩しながらお前の腰を愛撫する
一群の緑のつややかな広葉樹は再び
横たわった俺に名前をつけられるのをゆっくりと待つ
 
万物の豊饒なる響きに耳を澄まし、歴史に翻弄される人間の記憶の深層に静かに踏み入る。失われたパラダイス――イラ・フォルモサ(麗しき島)への哀切なる讃歌。台湾の戦後世代を代表する詩人楊牧の初の邦訳選詩集。
 
楊牧(よう・ぼく/ヤン・ムー)
1940年、台湾花蓮に生まれる。台中の東海大学卒業、兵役ののち渡米、アイオワ大学大学院を経てカリフォルニア大学バークリー校にて博士号を取得、現在シアトルのワシントン大学教授。15歳で詩人としてデビュー、これまで12冊の詩集がある。またW・B・イェイツ、ガルシア・ロルカ、シェークスピアなどの中国語翻訳でも知られている。台湾本土出身の戦後世代を代表する詩人。

本体2,500円+税
四六判254頁
ISBN 978-4-7837-2865-8
2006年3月刊

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駱英・松浦恆雄訳『小さなウサギ』

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現代中国の先端
日中対訳詩集


私はもう自分以上の恥知らずからの反撃や警官のお出ましに心を煩わせる必要がなくなったからである。さらに殺された美女の霊前で狂った裸踊りを披露して、生者こそ強者なんだという理念を顕彰しなければならない。   (「最後の人」)

 
「現在すでに私たちは黙示録的終末にある。詩人はそのことを現在形でなまなましく私たちに示しているのだ」(高橋睦郎・跋)。
人間の生存の行き着く先を都市文化の先に見出し、その根源を問いただす。読み手へと真直ぐに書かれながら、同時に内側に向けられた目を煌々と感じさせる、激越な文体そのものが、スケールの大きい文明批評を支えている。そのまぎれもない詩心を松浦恆雄氏の硬質な訳語が鮮やかに伝える。逆開きでは中国語原版を収録。眼に飛び込む、横書きの漢字のみで構成された紙面が新鮮な表情を湛えている。
 
駱英(ルオ・イン)
1956年、中国甘粛省蘭州生まれ。本名黄怒波。幼少期は寧夏回族自治区銀川に育つ。北京大学中文系卒業。中欧国際工商学院EMBA取得。現在、中坤グループ会長を務める。76年に詩を書き始め、92年、第1詩集『もう私を愛さないで』刊行。以後、詩集に『都市流浪集』(思潮社)。アメリカ、フランスなどでも翻訳が刊行されている。
 
松浦恆雄(まつうら・つねお)
1957年、大阪府生まれ。神戸大学大学院修士課程修了。現在、大阪市立大学大学院文学研究科教授。共著に『中国のプロパガンダ芸術』(岩波書店)、共編著に、『中国二〇世紀文学を学ぶ人のために』(世界思想社)『越境するテクスト』(研文出版)『文明戯研究の現在』(東方書店)、訳書に『客家の女たち』(監訳・国書刊行会)『シリーズ台湾現代詩Ⅱ』(共訳・国書刊行会)瘂弦『深淵』(編訳・思潮社)など。

本体2,400円+税
四六判函入日本語版92頁+原版63頁
ISBN978-4-7837-2887-0
2010年3月刊

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駱英の詩集
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『都市流浪集』

「この詩集が現代中国の恐ろしいほどの経済的、文化的精気から生まれた新鮮な果実のひとつであることは疑い得ない」(谷川俊太郎)
実業家・黄怒波として中国の経済発展を担い、同時に激しい文化潮流の先端に立つ詩人、駱英。調和しがたい矛盾の裂け目から生み出される流浪のうた。

本体2,500円+税
四六判191頁
ISBN 978-4-7837-2873-3
2007年8月刊

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松浦恆雄の訳書

『深淵』
ハレルヤ! 僕はまだ生きている。両肩で頭を担ぎ
存在と不存在を担ぎ
ズボンをはいた顔を担いでいる
 
シュルレアリスムを駆使した高度な技法によって、台湾現代詩の詩的言語を切り開き、大きな衝撃を与えた詩人瘂弦。切実な歴史認識を詩語として昇華し、存在の深淵にまで光を投げかける珠玉の作品集。
 
瘂弦(ヤー・シエン)
1932年、中国河南省南陽に生まれる。国共内戦時、国民党軍に参加して台湾に渡る。1954年から65年までの12年間に百余篇の詩を発表するが、詩集は87篇に絞った自選集の決定版『瘂弦詩集』のみ。しかし、この87篇をもて台湾現代詩の開拓者として、台湾で文学に関心を寄せる人ならば誰知らぬ人のない詩人となった。

本体2,200円+税
四六判159頁
ISBN 978-4-7837-2867-4
2006年3月刊