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陳黎・上田哲二編訳『華麗島の辺縁』

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4月17日放送予定NHK週刊ブックレビューで蜂飼耳さんに紹介されました。
 
我々の島は
黄色いひずんだ釦


私を飲め
私の血を飲め
私のミルクを飲め
私の唾液を飲め
私の肉汁を飲め
私の愛液を飲め
私の痙攣を飲め
私の不貞を飲め
賞味期限のうちに

 

台湾を代表する詩人の
はじめてのアンソロジー

台湾東岸の植民都市花蓮に自らを定め、クレオール的状況のただなかで、漢字による詩の可能性の極限に挑む。怒涛のごとく読者の胸元に撃ち込まれる連呼する言葉の塊。
新国誠一の影響を受けたという視覚詩、台湾の先住民族アミの言語から音をひろって詩のなかに織り込む作品、俳句の影響を受けた三行詩の連作、多様な作品群はアジアの詩の歴史そのものを体現している。日本語で詩を書く意味を考えるときにこそ向きあうべき1冊。
 
陳黎(チェン・リー)
台湾東海岸の小都市花蓮で1954年に生まれる。1976年に台湾師範大学英語系を卒業し、故郷の花蓮に戻り中学教師となる。近年は国立東華大学の創作コースなどで教え、花蓮で毎年行われる太平洋詩歌祭の運営責任者。70年代よりモダニズムに影響を受けて創作を始め、80年代には社会的政治的なテーマが濃厚な作品が多い。90年代からは主題もスタイルも多様化し、本土文化への関心とともに言語、様式の実験的な作品による新しい台湾意識の創出を試みている。これまで10冊以上の詩集を刊行。西洋からの「横の移植」を主張した紀弦(1913-)などの世代と比べると、陳黎の世代では西洋や東洋(日本)の両方の詩から学び、更に中国詩の遺産を活かして台湾文化の再定義を行っている。散文家、翻訳者としても知られ、多くの著書がある。妻、張芬齢との共訳でプラス、ヒーニー、ネルーダ、パス、ザックス、シンボルスカなどの詩を中国語に訳し『ラテンアメリカ現代詩選』、『世界情詩名作100首』など15冊以上の訳書がある。
 
上田哲二(うえだ・てつじ)
1954年大阪市生まれ。大阪大学博士(言語文化学)、米国ワシントン大学修士。台湾文学、日本近代詩歌専攻。台湾中央研究院中国文哲研究所博士後研究を経て、現在、慈済大学東方語文学系専任教員。著訳に『台湾モダニズム詩の光芒』(三恵社)『遙望の歌―張錯詩集』『カッコウアザミの歌―楊牧詩集』『奇莱前書―ある台湾詩人の回想』(以上、思潮社)『台湾現代詩集』『シリーズ台湾現代詩』(以上共訳、国書刊行会)等がある。

本体3,200円+税
四六判301頁
ISBN978-4-7837-2886-3
2010年2月刊

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上田哲二の訳書
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楊牧『奇萊前書』
詩はどこからくるのだろう?
詩は大きな悲しみかあらくるのだろうか?
 
日本による統治、国民党政府の弾圧、原住民アミ族との出会い……歴史に翻弄されながら、かつての植民地都市花蓮で少年は詩の端緒を見出す。台湾における詩人散文の傑作、完全邦訳。
 
楊牧(よう・ぼく/ヤン・ムー)
1940年、台湾花蓮に生まれる。台中の東海大学卒業、兵役ののち渡米、アイオワ大学大学院を経てカリフォルニア大学バークリー校にて博士号を取得、現在シアトルのワシントン大学教授。15歳で詩人としてデビュー、これまで12冊の詩集がある。またW・B・イェイツ、ガルシア・ロルカ、シェークスピアなどの中国語翻訳でも知られている。台湾本土出身の戦後世代を代表する詩人。

本体3,200円+税
四六判368頁
ISBN 978-4-7837-2876-4
2007年12月刊

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張錯『遙望の歌』
きみの終夜の話はいつまでも潮気となって
満城の百花の錦繍をしめらせ
早朝の渓の水辺は錦をさらした図案となった
私のしずみがちな旅の心は依然として
ひっそりと遠くの岸辺の漁火にもどっていく。
 
マカオに生まれ、香港に育ち、台湾で学び、現在はアメリカに住む“浪遊”の詩人、張錯。はるか唐代の陶人形たちに命を吹きこみ、時空を超えて自らのアイデンティティをめぐる旅にでる。最新の2冊の詩集を中心に、万華鏡のように展開する新しい言葉の世界。
 
張錯(チャン・ツオ)
1943年、マカオに生まれる。台湾の国立政治大学を経て1967年に渡米、現在南カリフォルニア大学教授。台湾詩の英訳による紹介や、アメリカ現代詩の中国語への翻訳など、研究者としても活躍している。

本体2,300円+税
四六判173頁
ISBN 978-4-7837-2870-4
2006年12月刊

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楊牧『カッコウアザミの歌』
巨砲には錆 硝煙は
散逸した史書のなかを飛んでいく
俺は苦悩しながらお前の腰を愛撫する
一群の緑のつややかな広葉樹は再び
横たわった俺に名前をつけられるのをゆっくりと待つ
 
万物の豊饒なる響きに耳を澄まし、歴史に翻弄される人間の記憶の深層に静かに踏み入る。失われたパラダイス――イラ・フォルモサ(麗しき島)への哀切なる讃歌。台湾の戦後世代を代表する詩人楊牧の初の邦訳選詩集。
 
楊牧(よう・ぼく/ヤン・ムー)
1940年、台湾花蓮に生まれる。台中の東海大学卒業、兵役ののち渡米、アイオワ大学大学院を経てカリフォルニア大学バークリー校にて博士号を取得、現在シアトルのワシントン大学教授。15歳で詩人としてデビュー、これまで12冊の詩集がある。またW・B・イェイツ、ガルシア・ロルカ、シェークスピアなどの中国語翻訳でも知られている。台湾本土出身の戦後世代を代表する詩人。

本体2,500円+税
四六判254頁
ISBN 978-4-7837-2865-8
2006年3月刊

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