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駱英・松浦恆雄訳『小さなウサギ』

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現代中国の先端
日中対訳詩集


私はもう自分以上の恥知らずからの反撃や警官のお出ましに心を煩わせる必要がなくなったからである。さらに殺された美女の霊前で狂った裸踊りを披露して、生者こそ強者なんだという理念を顕彰しなければならない。   (「最後の人」)

 
「現在すでに私たちは黙示録的終末にある。詩人はそのことを現在形でなまなましく私たちに示しているのだ」(高橋睦郎・跋)。
人間の生存の行き着く先を都市文化の先に見出し、その根源を問いただす。読み手へと真直ぐに書かれながら、同時に内側に向けられた目を煌々と感じさせる、激越な文体そのものが、スケールの大きい文明批評を支えている。そのまぎれもない詩心を松浦恆雄氏の硬質な訳語が鮮やかに伝える。逆開きでは中国語原版を収録。眼に飛び込む、横書きの漢字のみで構成された紙面が新鮮な表情を湛えている。
 
駱英(ルオ・イン)
1956年、中国甘粛省蘭州生まれ。本名黄怒波。幼少期は寧夏回族自治区銀川に育つ。北京大学中文系卒業。中欧国際工商学院EMBA取得。現在、中坤グループ会長を務める。76年に詩を書き始め、92年、第1詩集『もう私を愛さないで』刊行。以後、詩集に『都市流浪集』(思潮社)。アメリカ、フランスなどでも翻訳が刊行されている。
 
松浦恆雄(まつうら・つねお)
1957年、大阪府生まれ。神戸大学大学院修士課程修了。現在、大阪市立大学大学院文学研究科教授。共著に『中国のプロパガンダ芸術』(岩波書店)、共編著に、『中国二〇世紀文学を学ぶ人のために』(世界思想社)『越境するテクスト』(研文出版)『文明戯研究の現在』(東方書店)、訳書に『客家の女たち』(監訳・国書刊行会)『シリーズ台湾現代詩Ⅱ』(共訳・国書刊行会)瘂弦『深淵』(編訳・思潮社)など。

本体2,400円+税
四六判函入日本語版92頁+原版63頁
ISBN978-4-7837-2887-0
2010年3月刊

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駱英の詩集
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『都市流浪集』

「この詩集が現代中国の恐ろしいほどの経済的、文化的精気から生まれた新鮮な果実のひとつであることは疑い得ない」(谷川俊太郎)
実業家・黄怒波として中国の経済発展を担い、同時に激しい文化潮流の先端に立つ詩人、駱英。調和しがたい矛盾の裂け目から生み出される流浪のうた。

本体2,500円+税
四六判191頁
ISBN 978-4-7837-2873-3
2007年8月刊

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松浦恆雄の訳書

『深淵』
ハレルヤ! 僕はまだ生きている。両肩で頭を担ぎ
存在と不存在を担ぎ
ズボンをはいた顔を担いでいる
 
シュルレアリスムを駆使した高度な技法によって、台湾現代詩の詩的言語を切り開き、大きな衝撃を与えた詩人瘂弦。切実な歴史認識を詩語として昇華し、存在の深淵にまで光を投げかける珠玉の作品集。
 
瘂弦(ヤー・シエン)
1932年、中国河南省南陽に生まれる。国共内戦時、国民党軍に参加して台湾に渡る。1954年から65年までの12年間に百余篇の詩を発表するが、詩集は87篇に絞った自選集の決定版『瘂弦詩集』のみ。しかし、この87篇をもて台湾現代詩の開拓者として、台湾で文学に関心を寄せる人ならば誰知らぬ人のない詩人となった。

本体2,200円+税
四六判159頁
ISBN 978-4-7837-2867-4
2006年3月刊