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川上亜紀『三月兎の耳をつけてほんとの話を書くわたし』

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繁茂する物語


ちょっと待って
地震がくる前にほんとのことばかり書かなきゃいけない
ほんとのことばかり言っても誰も聞きたがらないんだ
(「三月兎の耳をつけてほんとの話を書くわたし*」)


父の入院と死、天国の梯子、青空に浮かぶトンデモナイ悲しみ。
五円玉のようなほんとの話がどんどん溜まっていく――
現実と空想、詩と散文のあわいを往還することばたち。
装画=橋本綱

著者の言葉
父が他界してから今年で6年になる。そのあいだに少しずつ書いてきた詩14篇を収めた。〈詩〉という文体に対してときおり抱いてしまう違和感はとりあえずそのままにして、なんでも詩に書いてしまえばいいのではないかと思いはじめた。現実に耐えて日常を生きていくしかないのだとしても、そのなかで時間と空間を押し拡げる試みを繰り返すことはほんの少し面白いのだ。詩でも散文でもほんとうに書きたいと思うことはなかなか書くことができない。その代わりに生まれたお話は、勝手に羽根を生やして飛んでいく。

本体2,200円+税
A5判上製・94頁
ISBN978-4-7837-3289-1
2012年5月刊 品切