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粟津則雄『畏怖について など』

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内的な日記


この志賀評にしても花田評にしてもまことに小林さんらしいのだが、そこには、おのれの判断の独自性を誇示しているようなところはいささかもない。おのれを空しうしてただひたすら対象に見入り、その凝視の純度と強さとが、おのずから対象を照らし出すのである。中途半端な個性など捨て去ることによって、はじめて真の個性が現れ出るのである。(……)それで思い出すのだが、六十年まえのあの夜、小林さんは「おれの批評なんざ、おめえたちのための踏み石みたいなものさ」とも語っていた。あのことばが、改めて心に沁みるのである。(「個性について」)

古今東西の文学、美術、音楽その他、あらゆる領域に鋭利繊細な批評の営為を推し進めてきた著者が、日々の生活から汲みあげた主題を、自身のもっとも奥深いものと結びつけて語る。4年にわたり書き継がれた、生の示唆に満ちた50篇。本質を問うてやまない精神の運動が心音を響かせる、珠玉の随想集。装幀=菊地信義

本体2,200円+税
四六判上製・216頁
ISBN978-4-7837-1677-8
2012年2月刊

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