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鈴木正樹『トーチカで歌う』

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過去の自分と未来で出会う


ひょっとして 僕は
幼かった時代を 歩いているのではないか
道ばたで 外国兵に
垢じみた手を 差し出したことがある
(「道ばたで」)


人は自分の時間を歩いている。そこでは国境も無く、過去も未来も混然と交差したり、よじれたり――過去の自分が未来から歩いてきたりする。

著者の言葉

 言葉に輪郭のある意味を載せることで、現代詩が忘れかけている角度から、命を見詰めた。抒情とは淡く、甘い感傷などではない。血液や精液や排泄物のような臭いに充ちている。平和ボケした僕らの周りには爆弾テロや人身売買や地雷が漂い、何度も書き直される国境。それに気づかない生活。人間にまとわりつく時間が一直線になど流れるはずもない。命が変色し霧散する一瞬を固定し、何時でも再生できるように抒情で捉え、詩集とした。

本体2,500円+税
A5判上製・154頁
ISBN978-4-7837-3284-6
2012年2月刊

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