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伊藤悠子『ろうそく町』

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第44回横浜詩人会賞受賞!


そうしてある日
唐突に
姿を見かけなくなって久しいものが
遠く影を傾け
なつかしさとさびしさの飛沫を浴びせるのだろう
(「暗い夜のうちを」より)


ろうそく町は静けさだけがたよりの町です――。勁く、澄みわたる言葉の一語一語は、生きるそのひとのすがたを思わせる。目の前の何気ない風景から、ずっと遠く、視線をたしかに届かせる26篇。装幀=森本良成

【著者の言葉】

心を捉えられたり、揺さぶられたりしながら、その日一日を、或いは遠い昔をひっそりと思い返して、生きている。この世は荒野であると思うこともある。社会の歪みに加担しているのではないかとわが身のあり方も思う。遠い日から受け継がれてきた罪科におののきながら、眠りの階段を落ちていく夜もある。それでもなお、そこはかとない人懐かしさ、この世(そこには亡くなった懐かしい人もいるようでもあり)への慕わしさはあって、その気持ちが、このわずかな乏しい詩を、そっと詩集にしてみたいと思わせたのではないか。もしもいつかどなたかが読んでくださったら、うれしい。

本体2,200円+税
A5判上製・96頁
ISBN978-4-7837-3258-7
2011年9月刊 品切