高塚謙太郎『ハポン絹莢』

さらに、さらに、先へ!
さらに、さらに、先へ!
帆かげもうすずみを妊んでひるがえればいい
すすめばうすれゆきわが島は巻きあげられる
あたまからみどりを靡かせながらむかってくるもの
Fのしじまをしたがえて呼吸をくりかえすそれら
戦線を引きはじめたころ編まれた髪をつかんだ
名の思い出がFののぞむままのかたちでながれる
Fという名の少女を崇め奉れ崇め奉る少女の名で
ふるい相聞の耳にのこる美しい呼ばれ方だった
乳房の真夏にあるいている母になるだろういのち
ぼんやりと敗れていく花ざかりのしめったうた声はされ
(「慰霊」)
この詩集のあとに、現代詩は可能なのだろうか――詩集ごとに形式とテーマを進化させてきた詩人が、その果てで見つけてきた言葉の官能。 充溢する博覧と、迸る狂気、100年後の詩のかたちを見よ!
本体1,500円+税
120頁
ISBN978-4-7837-3429-1
2014年7月刊