詩の本の思潮社

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新刊情報

伊藤浩子『数千の暁と数万の宵闇と』

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未生の生へ


少年は樹上から降り、もう半刻もすれば遅れながらもたどり着くだろう、妹の前に伸びたこの道の粗雑さと、丸く白いやわらかな右手を思った。
(「(無題一)」)


昏い記憶をつたって異質なものが語りはじめる。丹念な書記が映す、無言の深みに孕まれた予感、詩28篇。『未知への逸脱のために』(鮎川信夫賞)、『たましずめ/夕波』に続く、待望の新詩集。装幀=中島浩

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3707-0
2020年10月刊

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柿沼徹『某日の境』

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いつから?


すでにだれかが黙っているので
とても大きな群れになって
鳥が移動していく
見えなくなるまで
(「鳥獣の境」)

昨日は人のためにあるのではない。海が船舶のためにあるのではないように。昨日が「昨日」でなくなり、人の記憶の外に立つとき、はじめて昨日はそれ自体として存在する。水平線の先に必ずあるのに、見えないもの。昨日への眼差しは、不可視的なものへの視線にほかならない。『もんしろちょうの道順』以降、8年ぶりの新詩集。装画=森雅代

本体2300円+税
A5判変型並製・96頁
ISBN978-4-7837-3728-5
2020年10月刊

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岩佐なを『ゆめみる手控』

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短詩をどうぞ


暑さ寒さにとらわれず
久しぶりのだらだら坂を上っていく
左手を伸ばせば先に海だ
海風と港の倉庫や遠い橋
詩人は港の人でもあったと想いかえし
左の景色を鷲づかみで
大きく右へめくって昭和にする
(「暑さ」)

「この先のいのちを掬いあげるために/見おとさずデッサンを重ねよ/ひかりあれ 手に恃む」。『海町』(第24回富田砕花賞)、『パンと、』(第54回歴程賞)に続く、4年ぶりの新詩集。今こそ短詩を書こう、読もう。素描詩70篇、書き下ろし。装画・題字=著者

本体2300円+税
四六判変型並製・96頁
ISBN978-4-7837-3732-2
2020年10月刊

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水田宗子詩論集『詩の魅力/詩の領域』

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詩と批評のスリリングな関係


詩の領域も詩の魅力も、詩でなければ表現できないもの、という一言に尽きるだろうが、詩表現は、詩人という個人の、生の実在の領域でもあり、究極的に不可視ではあっても、他者の実在が、他者の存在意識が確かに立ち上がる一瞬を与えてくれる。(「はじめに」)


清岡卓行、石垣りん、茨木のり子、白石かずこ、谷川俊太郎、高橋睦郎、井坂洋子、正津勉……。「食べる」「剝ぐ」「戻る」といった行為、あるいは、「記憶」「場所」「痛み」といったキータームから、現代詩を従来にない切り口で読み解く。カバー写真=エヴァ・ヴァリエ、装幀=伊勢功治

本体2400円+税
四六判上製・160頁
ISBN978-4-7837-3823-7
2020年10月刊

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水田宗子詩集『音波』

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詩を道連れに


この漆黒の目の中に
二〇〇〇年先の光が差しているから
後戻りはできやしない
帰路は暗闇の中に消えている
(「道連れ」)

世界に散らばる家族たち、友人たち、女性詩人たち。彼女たちとのシスターフッドを信じて、遠い未来へ。日本のジェンダー研究を牽引してきた著者の最新詩集。詩論集『詩の魅力/詩の領域』との同時刊行。
カバー写真=エヴァ・ヴァリエ、装幀=伊勢功治

本体3400円+税
A5判変型上製・160頁
ISBN978-4-7837-3728-5
2020年10月刊

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