詩の本の思潮社

ホーム新刊情報月別リスト > アーカイブ
新刊情報

杉本徹『天体あるいは鐘坂』

null


風は、鍵


稀にしか出会わない、街景のうるんでゆく眺望――
この、地球の夜という水槽に
幾度も声にならないあいさつを、おくる
(「アクアリウム」)

「鐘坂、影坂、……いま急発進したバイクの後ろすがたはモノクロ、でも遠ざかるにつれ順々に、色彩をまとってゆく。」(「群青の」)。都市は黙示となって光と影が時間をつたう――。やがてこの惑星のはてにはるかな瞬間の眺望がひらく。5年ぶり、待望の第4詩集。カバー作品=村松桂

本体2400円+税
A5判並製・114頁
ISBN978-4-7837-3681-3
2019年9月刊

本のご購入はこちらから



 

今野和代『悪い兄さん』


第22回小野十三郎賞受賞!


私の
悪い兄さん
飢えを燃やして
地表の熱を吸って
夜を抜け出し この世の錯誤の
酩酊など ひるまず 踏んづけて
睨みながら まぶた 涼しく 徒手空拳で立っていた
(「悪い兄さん」)

「綯い交ざった慈しみと怒り。願いと悔い。一冊の詩集がかかえる容量をはるかに超えて生え出てくる、沼からの手のようなドラマの詩集だ。(…)今もってとどまることを知らない無辜の死に詩人の声は嗄れて、思いはいよいよ低くくぐもってゆく」(金時鐘)。この世の闇を視よ、声を轟かせよ。11年ぶり、渾身の新詩集。装幀=中島浩、装画=木村タカヒロ

本体2500円+税
A5判並製・130頁
ISBN978-4-7837-3685-1
2019年9月刊

本のご購入はこちらから



 

新保啓『朝の行方』


上越のあめ、ゆき


雪は天からの使者
どんな便りを運んできたか

考えてみたが分からない
私たちも 誰の使者で
ここにいるのか
分からないように
(「雪の朝」)

「最近は、(…)胸に抱く「面影の人」との交際が俄然多くを占めるようになった。/「面影の人」は微笑むだけで、返答はしない。一方通行である。この方々と詩でかかわるには、どうしたらよいか。最近の私の課題になっている」(あとがき)。海に近く、雪深い、この土地の季節のめぐり。日々のうつろいと、逝きし面影の人との対話。装画=魚家明子

本体2500円+税
A5判上製・112頁
ISBN978-4-7837-3682-0
2019年9月刊

本のご購入はこちらから



 

作田教子『胞衣』


第60回中日詩賞受賞!


ほんとうはかなしいっていう意味は知らない
泣くときはかなしいからじゃない
見えないところが 痛いから
(「子供の領分」)

もっとも閉ざされた世界の中に押し込められた、永遠に続いてゆくかのような子どもの時間。からみつく厚い膜から身をはがし、忘れられない痛みを携え「卒業」へと歩み出す、曲がりくねったぼくたちの道程、全19篇。写真=作田碧

本体2200円+税
四六判変型並製・88頁
ISBN978-4-7837-3678-3
2019年9月刊

本のご購入はこちらから



 

伊藤悠子『傘の眠り』


終わりの気配


ここ共同の坂道の先にあるのは
なんだろう
ひゅうひゅう
ひゅうひゅう
風か、息か、私ひとりの
それぞれたったひとりの
(「共同の坂道」)

『まだ空はじゅうぶん明るいのに』から3年、あれから8年、詩とともに時間を重ねていく。装画=森雅代

本体2400円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3680-6
2019年9月刊

本のご購入はこちらから



 

池井昌樹『遺品』


詩より楽しい


いつのひか
うしろから
わたしのなまえをよぶこえに
こんどこそ
はればれと
ほんとうに
ふりむくために
(「わたしの名前」)

私たちの詩が、常に、これからも、詩より楽しい、最も古くからある最も巨きな遊びであり続けるために。装幀=菊地信義

本体2600円+税
A5判上製・128頁
ISBN978-4-7837-3669-1
2019年9月刊

本のご購入はこちらから